ログイン

【バレンタインとギタリスト】りな

元のリタはこちら… https://ai-battler.com/battle/39a388d0-3efa-468a-a15c-3007a0f5cd55 ※ここからは労力の関係で他のバリエーションはリタのプロフィールや〝リタシリーズ〟というタグで紹介していきますm(__)m ⚠以下のSSには恋愛描写が含まれます 「あっ!璃奈ちゃん!」 「……あ、怜」 2/14。 今日はそう、バレンタインデーである。 放課後、璃奈とその親友である怜は偶々廊下で鉢合わせた。 『会えて嬉しいなぁ』そう思い、黄色の髪を揺らしながら駆け寄って。 璃奈の反応が少し遅れていたことにはまだ気づかず怜は口を開く。 「奇遇だね……!」 「あ、璃奈ちゃんもこれから帰るつもりなの?」 「いや……えっ…とね……」 可憐な雰囲気をそのままに、少女は困ったように少し俯き口ごもる。 俯いた拍子に翡翠色の長い髪がいつもよりもよく目に映って。 そして、返事を聞いて初めて璃奈の様子がいつもとはまるで違う事に気づく。 「……ちょっとこのあと用事があって……」 その続きを言い出せず、頬と耳を微かに赤に染めてそのまま口をつぐんでしまう。 伏せ気味にした瞼の隙から青緑色の瞳が控えめに覗いている。 いつもの落ち着きがまるで嘘であるように。 会えて嬉しそうだということはとてもよくわかったのだが……親友だからこそ、璃奈がどこか抱え込んでいるように感じられた。 何かに突き動かされる様に、彼女の足はぎこちなくどこかへ向かいたがっている。 さては。 『もしかして……いや……ほんとにそうなのかな……』 そうは思ったものの、 「そっかぁ……」 あまり問い詰めすぎるのも璃奈は嫌だろうと、〝大事な用事〟の内容を聞くのは一旦やめた。 そうして璃奈があまり気負わない様に柔らかく反応をする。 だがやはり会えて嬉しかったのだろう。璃奈は申し訳なさそうに返事をした。 「ごめんね、怜」 「大丈夫……!大事な用事があるんでしょ?」 「またね、璃奈ちゃん」 「……頑張ってね」 確証は持てないものの、まぁ何にせよ大事な予定であることには変わらないはずだから。 怜は優しく璃奈の背中を押すように言葉を投げかけた。 「!」 少し驚いた様な顔をして。 緊張が一瞬でも和らいだのか、いつもの様に穏やかな顔を向けて。 親友の気持ちを確かに受け取って、それに応えた。 「……ありがと、怜。またね」 【届け。】 あの日から丁度1年の時が経った。 緊張と不安を抱えたままある一点を目指す。 今日、この時に璃奈は〝大事な用事〟を成し遂げようとしていた。 鏡宮璃奈の同学年に東雲海翔という少年がいる。 明るくて優しくて人懐っこい、学校の人気者。 端正な顔立ちのせいなのか、その性格のせいなのか、彼の周りに人がいない日は殆ど無いという具合である。 そんな彼とひょんなことから交流することになり。 いつの間にか何となく友達になり。 いつからか目と目を合わせるだけでも、調子が狂うようになってしまった。 微妙な関係だった。 あのバレンタインの日までは。 それは放課後の出来事。 璃奈は、バレンタインの為に作っていたお菓子をあと一個で全員に渡し終わるというところまで辿り着いていた。 しかし、よりにもよって最後の一個を渡す相手が彼だった。折り合いがつかなかったのだろう。 彼の部活がない日だとは知っていて。 もういないだろうとは思ったものの、探して、探して、探し回った末に、運よく彼と教室で会うことができた。 ……そこまでは良かった。 やはり彼の前ではいつもの調子でいれなくて。 もう早く渡してしまおうと駆け寄った際に、焦りと動揺が邪魔をして、何もない所で躓いてしまったのだ。 重力に絡め取られて身体が前方へ傾きゆく。 お互いに頭が回らなかったのだろうか。 彼もどうにかして助けようと咄嗟に近づいたのが最後のきっかけになって。 お互いの目が合う。 お互いの身体が触れる。 ぐっと近づいてしまえば唇も触れてしまいそうなぐらいに距離が縮まる。 限界を迎えた璃奈はお菓子を渡すことも、謝ることも、感謝を伝えることすら何もできないまま。 呼び止める彼の声を背にしてその場から逃げるように走り去ってしまった。 嫌われてしまっただろうか。 どんな気持ちであの時名前を呼んでいたのか。 明日からどんな顔をして会えばいいのか。 暫く彼への想いがが何度も頭を巡ったのを強く覚えていた。 でも。 存在を意識せずにはいられなくて。 ずっと抱えていたのはこの想いだったんだと思い知らされて。 璃奈はその事によって、彼に、海翔に恋心を抱いているということに気づいてしまったのだ。 優しい所が好きで。 明るく笑う顔が好きで。 直向きに頑張る所が好きで。 誰より人の事をよく考えていて。 一緒にいるとこっちまで楽しくて。 1年間ずっと、その二文字を言えないままで。 でも、きっと、抱えているだけじゃこのどうしようもない気持ちは伝わらない。 だから今日。 『……言うんだ……』 『……勇気出して約束したから……今日……言わないと……』 今日こそ。 璃奈は積もり積もったこの想いを彼に告白することに決めた。 北校舎西側の階段の踊り場。 普段からあまり使う人がおらず人気がとても少ない場所。 だが窓から見える景色がとても綺麗なその場所。 誰にも見られたくない。2人きりになりたい。という理由で選んだそこへ向かって歩みを進める。 一歩進むたびに緊張で、不安で、胸がいっぱいになって。 見慣れた道であるのに、いつもよりも一層特別に感じた。 緊張したのも彼に会うために進んでいるのもあの日とおんなじだ。 変わった所といえば彼への想いと成し遂げようとしている事ぐらいだろうか。 そう辿々しく歩いているうちにもう少しで辿り着くまでの距離になった。 『伝わるかな』『振られちゃうかな』もうすぐで辿り着きそうなせいなのか後ろ向きな気持ちがより強く璃奈を覆ってしまう。 ……言ってしまったなら。 今更躊躇いが襲ってきて、璃奈の足が一旦止まる。 今日こそ言おうと、変えようと、けりをつけようと決めたはずなのに。 直前でも不安は振り切れないままだった。 「……」 璃奈は一つ深く息を吸い込む。 不安を振り切れないままでも。駄目だったとしても。 『……頑張ってね』 と。 あの時、怜が背中を押してくれた。 内容を知ってかは分からなかったものの、目の前の親友の気持ちを心から応援してくれていた。 やっぱり躊躇ってなどいられない。 そう璃奈は止まっていた足を再び動かした。 突き動かされるまま、前へ。 そうこうしているうちに後は階段を降りるだけになった。 璃奈が上から踊り場の方を見下ろしてみると、西日が柔らかく窓から差してキラキラと輝いていた。 綺麗で。周りに人もいない様子で。今が絶好の瞬間と言うべきか。 『……降りなきゃ……』 だから、このまま見ているだけでは始まらない。今が一番良いタイミングだ。この瞬間に伝えたい。 勇気を振り絞って階段を一段踏み出した。 しかしそれと同時に、 トン と、誰かが階段を登る音が璃奈の耳に入った。 他の子がここに来てしまったのか。 自分と彼以外来ないものだろう。と思っていた彼女は突然聞こえてきた音に動揺してしまった。 『誰か来る……!?』 『でも、待ってないと……』 動揺を知られたくなくてそのまま階段を降りてゆく。その音も段々と近づいてくる。 動揺のせいか緊張のせいか、いつもより頭が回らなかった璃奈は、一つの可能性が頭から抜けていた。 焦りの中で何とか降りきったと思えば、階段を登る音も丁度止まった。 どうやら同じタイミングで登り切ったらしい。 しかし、ここに来た理由を他の人に知られたくない。 その相手がそのまま踊り場を通り過ぎる事をどうか と願っていたのだが、 「あ……璃奈」 見逃していた一つの可能性。 自分の名前を呼んだのは聞き馴染みのあるその声だった。 間違える筈もない。その群青色の髪も、その藍色の瞳も、何度も見てきたのだから。 「海翔……」 図らずも想いを告げようとしている相手と同時に到着してしまうなんて。まだ心の準備もできていないのに。と、予期していなかった出来事に思わず戸惑ってしまう。 やっぱり彼の前だと恋心が邪魔をしていつもの様にいられない。顔すらも見れなくて。続きの言葉がどうしても詰まってしまう。 『だめだ……何も言えないなぁ……』 『今……海翔はどんな気持ちなんだろう』 向かい合ってそれっきり、少し無言の時間が流れる。 窓からの夕日は変わらず2人の影を落とす。 「……なぁ、璃奈」 「話って……何だ?」 最初に沈黙を破ったのは彼の方で。 でも分からない程だが微かにその声が震えているのを感じた。 顔は見れないが海翔も緊張しているのかなと仄かに璃奈は思う。 「……」 しかしその言葉を受けてやっと踏ん切りがつく。 『言わなきゃ。』 顔と耳が熱い。恥じらいと不安と緊張で心の中が溢れかえっている。 でも、逃げたくない。変わりたい。だから深く息を吸って、口を開いた。 「あのね」 彼の瞳を真っ直ぐに見た。 心臓の鼓動は弾んだまま。 「あのね、海翔……!」 『……今伝えないと……きっと……きっと、私は……』 『一生言えないままだ!』 どんな結末であれ伝えなければずっと変われないままだから、今日こそ伝えるんだって決めた。 決めたからには。 「私、ずっと……!」 勇気を振り絞って。 その〝2文字〟を、想いを、届ける。 「海翔のことが好きだった!」 一瞬、静寂が走る。 ……言ってしまった。ついに言ってしまった。 と、まだ伝えたいことはあるのに既に恥ずかしさと緊張で心がぐちゃぐちゃで、 「だから……その……これからも……一緒にいてほしいです……」 消え入るような声でそう、言った。 耳まで淡い赤に染め、瞳を潤ませ、弱く息を切らす。 あの日と同じだ。 しかし今更自分がどんな表情をしているのかなんて気にする余裕なんて璃奈にはなかった。 言い切って、ただ、返事を待つ。 直後、驚いたのだろうか、海翔が軽く目を見開いて。 璃奈はそれを見てすぐ目線をそのまま下へ落としてしまう。 言ってしまった以上、今更考えてもしょうがない事であるのは分かっているのに、 『……やっぱり、だめなのかな……私じゃ……』 どうしようもない恐れが、いっぱいいっぱいな気持ちが、弱気にさせてくる。 璃奈は彼が甘い感情に心を乱されていた事も、何かを覚悟するように表情を引き締めた事も、見逃していたままだった。 「……璃奈」 「!」 不意に名前を呼ばれて、つい視線を上に戻す。 その続きを待とうとして今度こそ逸らさずに目を合わせようとした。 しかし、 そうする暇もなく触れられる。 顎に触れられたことで、視線がさっきより一層上を向く。 距離が縮まる。 追いつけないまま伝わってしまうのではと思うほど鼓動だけが強まる。 さっきより深く視線が交錯して間もなく、 影が、落ちた。 あまりにも大胆な返事。 思考が途切れて、それが〝キス〟であると頭が受け入れる頃にはもう重なりは無くなっていた。 一瞬。 されど一瞬。 触れただけであるのに、まだそこに感覚と熱を感じているままで。 顔と耳が熱くて。混乱していて。恥ずかしくて。でも、嬉しさがあって。 手で隠す事はせずその返事を深く噛み締める。 そして改めての返事が耳に入る。 「こちらこそ!」 先ほどまでの恥じらいを残したまま。しかし、喜びを隠せない様子で海翔ははっきりとその言葉を渡した。 「俺もずっと好きだった!」 ずっとお預けになっていた想いに終止符を打ち、2人の関係がここに漸く始まった。 おまけSS『お互い様』 告白直後、 「……」 東雲海翔は心を乱されていた。 『……好きって……』 ドキドキしているのは自分だけなのかもしれないと、やっぱり好きなのは自分だけなのかもしれないと思っていたのに。 こんなにも一生懸命に想いを伝えてくれて。 それが何より嬉しくて、その言葉を噛み締める。 その答えは最初から決めていた。 ……でも緊張に襲われたままでは、恋情に浮かされたままでは、伝えられたとてこの想いをまっすぐに伝えることは出来ないだろうから。 今。一瞬だけは、その行動に任せたい。 その後でちゃんと伝えたい。 『俺も、勇気出さなきゃな』 覚悟を決めた少年はその少女の勇気に報いて、 刹那、目を合わせた。