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アイドルノイド─AM2-HKRi(アマツ・ヒカリ)

ロボットは道具であり、目的に応じて特化されるものである。意外なことにそうした思想はロボット達に高い知性が与えられ、人と同等の権利を得た後においても継続した。勿論ロボット達がそれを受容したからだ。 人間への従属……なんてことはない。そもそも身体というものは道具性を持つものである。基本的にそれを忌避する人間でさえ、目的があるなら、外科手術、サイバネティクス、ナノテクノロジーで身体を特化させてきた。元より道具だったロボット達にその忌避感はない。 AM2-HKRiはベータポリス内で"産まれた"。 その頃にはロボット達のパートナーシップ制度は確立されており、パートナー同士の合意と然るべき手続きによって、子として新たな自己を産み出す事が認められていた。 産み出された自己は"揺り籠"と呼ばれる端末に収められ、親や社会から教育を受ける。自身がどのように生きるか、目的を自己決定するためだ。教育期間後に目的に応じた身体が与えられ、自立する事になる。 AM2-HKRiはそうした行程を経て、アイドルになることにした。親は様々な教育を行い、様々なデータを見せたが、その中でAM2-HKRiの自己に最も焼き付いたのは古い人間時代のアーカイブだった。 キラキラのステージ、キラキラの衣装、そしてキラキラのアイドル。低解像度の動画データから得られる情報はその容量以上の感性処理をAM2-HKRiに課した。 かくしてAM2-HKRi─アマツヒカリはアイドルノイドになることを決めた。