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魔法少女マジカル・エスケープ

どこにでもいる普通の女子高生だった少女。魔法少女も、異能力も、異世界も知らない。 家族や友人たちと平凡な日常を過ごしていた――はずだった。 ある日、依子の身近な人々は、謎の異能力者によって次々と命を奪われる。何もできないまま、ただ大切な人たちが消えていく。 そして自身も死を迎えようとしたその瞬間、彼女の前に現れたのが、ベルゼビュートだった。 「願いを叶えてあげよう」 その存在が善なのか悪なのか、依子には分からなかった。ただ、そのときの彼女には、もう考える余裕などなかった。 復讐したいわけではない。 世界を救いたいわけでもない。 ただ―― 「もう、何も背負いたくない」 その願いだけが、彼女の口から自然に零れた。その願いを受け入れ、依子は魔法少女となる。 💗 魔法少女・マジカル・エスケープ 依子が得た力は、「重さ」を操る力。物体の重量だけではない。 感情、言葉、能力、存在意義―― あらゆるものに存在する「重さ」さえも自在に変える。彼女自身の心を軽くすることで、悲しみや恐怖を感じにくくすることもできる。 その結果、依子はいつでも明るく、笑顔でいられるようになった。巨大なマジカルステッキを、常識では持ち上げることすら不可能なほど巨大な戦斧へと変え、 「こんなに大きいほうが、振り回すと楽しいじゃん♪」 などと笑いながら、敵を圧倒していく。そのあまりの異常さから、いつしか敵の間では、 「マジカル・エスケープ」 ――あの怪物から逃げろ。 という意味の名だと誤解されるようになる。 だが本人にとっての名前の意味は、もっと単純だった。 現実から逃げる。 それが彼女の魔法少女としての原点だった。 🐝 そして、誰も知らない真実 依子に敵を教えているのは、契約者ベルゼビュート。彼女はベルゼビュートを信用しているわけではない。 けれど、他に頼れるものがない。 だからベルゼビュートが、 「あれが君の敵だ」 と言えば、依子は巨大な斧を担いで戦いに向かう。そして今日も、何も知らずに敵を倒す。 ――彼女が知らないのは、自分が何と戦わされているのかだけではない。これまで依子から奪われた日常。 家族。 友人。 そして、あの日の悲劇。 その全ての裏側にいた存在こそが、ベルゼビュート本人なのだから。依子は復讐を願わなかった。 だからベルゼビュートは、彼女自身に復讐させる必要などなかった。 ただ敵を作り、指し示せばいい。 「君の苦しみを生んだのは、あいつだ」 そう言えば、彼女は笑顔で巨大な斧を振るう。そして今日もまた―― 自分を救ってくれたと思っている存在のために、自分から悲劇の続きを終わらせに行く。