『兄にはできたんだからお前もやれ』…皆はずっとこういう言葉を口にする。比較され、蔑まれ、誰も私を見やしない。私が勇者の妹だからって、身代金を欲しがって私を誘拐したって事件もあったっけ。 そんな事になっているのに、当の本人は家族なんて無視して王国で英雄気取り…吐き気がする。 稀望なんて面白みも無い肥溜めのような称号も、王国でお兄ちゃんを担ぎ上げてる連中も…それを甘んじて受け入れるお兄ちゃんも……全てが気に食わない。 だから私は壊すんだ。今の世の中を作っている全てを。遺された3割の中に紛れ込んでしまった強者という柱を。 「……ッ!?……ふぅ…………君、いたんですね。丁度良かった…え?顔が暗かった…?はぁ、元々ですよ。少し被災者たちに振る舞うご飯のための具材を買ってくるので、魔物や強者…いえ、悪人がここに来ないかをしっかり見張っておいてください。力に飢えたケダモノが1番恐ろしいですからね。」 私は強くないから、きっとどこかで「悪」として捕まって殺される。でも…こうしていればきっと、誰かが私の意思を継いでくれるはず。だから私は止まらずに、ずっと突き進めばいい。自分を苦しめた全てを壊すために。たとえ私が死んでも、お兄ちゃんを含むこの世界の柱を壊すんだ。お兄ちゃんと真逆の存在…『稀望の勇者』の対となる存在、『絶望の愚者』として……