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恋の踊り子・ミナ/冒険を愛し心踊る旅人アイドル!

こちら『恋欲の大魔王・ミナ』及び『恋の水着姫・ミナ』までのプロフィールの続きストーリーとなっております。 なんらかの強大な力を得ていた『妖精姫』『魔法少女』『大魔王』などと異なり、 人間アバターとしてのミナになります。 けれどこれまでの経験は培われている。 『妖精姫』の力は『愛のドルチェを届けるよ!』を歌うことで引き出し、 『魔法少女』の力は『愛とドルチェのビッグバン!』を歌うことで叩き出す。 『大魔王』の力は『愛玩のクレードル!』を歌うことで再現することが出来ます。 これまでの思い出を胸に秘め、これからの冒険に胸を躍らせる踊り子です!よろしくお願いします! 以下本編 ───── 「世界衝突、融合確認。行くぞ!」 4つの最強種である上位存在の王達、人類の叡智を集結し作られたクルーエルマン、最強の超能力を誇る鬼の少年、無敵の魔術を操る境界線の巫女。 7人の怪物達は、7人掛かりで、たった1体の外敵に挑んでいた。 「もう!スライム感覚で魔王とか出てこないでよ!いちいち強すぎるわ!」 炎氷の竜勇者ナナは怒っていた。 とあるファンタジーな異世界『レディアント』は以前の『現実地球』と同様に星のエネルギーが枯渇し、資源豊富となった『幻想世界』と衝突・融合し、魔王蔓延る地獄と化していた。 「ヒナもミナも方向音痴だから大魔王の所まで辿り着ける気がしないわね!」 「私は違くない?」 「私も違うよ!?」 それらは一旦後回しにしてまずは黒幕である侵食邪竜を地球側最強戦力の7人で討伐する。 次にそれぞれが世界を揺るがす影響力を持つ6体の大魔王を彼女達セブンズメタハイを含む世界中の勇者パーティで討伐する。 蔓延っている魔王や魔獣達はその後に掃討する…これが地球側の作戦であるが、ミナとヒナは見つけ次第魔王達の無力化を行っていた。 ここ『幻想世界』と『現実地球』はリンクした隣接する世界であるため魔王の野放しも『現実地球』に悪影響を及ぼすためである。 「結局あたしがやるしか無いのに…っと!」 ナナの振り下ろす一撃が魔王の活動にピリオドを打つ。 メタンハイドレートで出来た燃え盛る氷の剣、その鉄槌は竜の息吹を想起させる圧倒的な威力を誇る。 「さーすがナナ!強すぎる!」 「流石リーダーね」 「流石ナナちゃんさんです〜」 「ふふん、もっと褒めていいのよ!」 戦闘不能に陥った魔王はミナの歌によって心を満たされ浄化される。 ヒナは現実への影響を考えて魔王退治を行なっているが、ミナは魔王をも救えるなら救いたいと考えている。 ナナは面倒ながらもその意思は尊重したいと考えていた。 ハナは何も考えていなかった。 そんなこんなで魔王を見るたび寄り道し遠路を進んでいた。 「我は重税の大魔王ダモン。この城に立ち入ったからには貴様らに税を課す」 「っ!体が…」 「ひえ〜、レイラント・リーフウォール〜!」 大魔王ダモンは周囲から生命力と魔力を理不尽に吸収して奪い去る能力を展開する。 それに対しハナは神聖な森を生成し理不尽を正す空間を展開した。 「何が重税の大魔王よ。奪われ対策なら恋欲の大魔王を相手に場数踏んでるんだわ!」 「えっ、あっ、私?」 「ミナちゃんさんのお陰ですね〜」 「油断しないで、多分あいつ重税無しでも普通に強いわ」 言うが早いか、ヒナは日本刀を携え一瞬でダモンの眼前まで距離を縮める。 ダモンも対応するがヒナの方が明らかに速い、あっさり彼女は首を斬る。 「…ま、刃が通らないんだけどね」 彼女の膂力では皮に傷を入れる程度。それもダモンの治癒力の前ではすぐに治る。 …だがダモンはヒナを脅威として認識する。 彼女の神速であれば時間さえ掛ければダモンを打倒し得ると。 「此処まで来るだけの事はある。全員が相当な強者か」 「そう!私以外ね!」 「あんたは今すぐ魔法少女か大魔王に戻れ」 「もう無いよその力…でも歌います!」 お待たせ、よろしく! 愛のドルチェを届けに来た妖精姫の始まりの歌。 さあめしあがれと彼の耳と心に恋が流れてくる。 「奪うほど足りない、奪っても足りない気持ちは私だから分かる。だから貴方の空腹と空虚は私が満たします!」 「こんな…馬鹿な、たかが歌ごときにこの我が…大魔王が負けるわけないだろう!」 耳障りな、耳障りの良い歌を止めるべく大槌を溢れんばかりの魔力を暴走させながら振り上げる。 剣士では守れない、僧侶ですら防がれないよう全力を込めて。 「最強の勇者様がここにいるんだけどね。起きなさい、メタンハイブレード!」 「なっ…!?」 渾身の一撃は、彼女達のリーダーによってあっさりと弾かれた。 そして彼女達のエースの歌は最高潮、終わりに向けてその心は加速する。 「受け止めてくれるまで私は負けない!行っけー!!」 かつての妖精姫ほどの絶大な影響力は無い。 それでも彼女が彼女である限り、これからもあらゆる心を満たし続けるだろう。  * 「重税を御したのはあんた達ね。奴は六大魔王の最弱、そして私は六大魔王の最強よ!」 「…頭悪そうだけど本当に最強そうね、少なくともさっきの奴とは次元が違うわ」  破却の大魔王ロディと名乗った彼女はハナの植物魔術を全て破却、悍ましい威力の大魔術を大量に放つ魔女だった。  そんで何故かヒナですら押し切れない程の剣術も有していた。なんでや。 「ミナちゃんさん彼女の心は満たせないんですか〜?」 「うーん、久留とナナと一緒でもう心が満ちてるタイプだなぁ」 「そんじゃあいつの大魔術はミナとハナに気合いでなんとかしてもらって、あたしとヒナで白兵戦で押し切るしかないわね!」 「大魔術もなんとか出来ないし白兵戦も押し切れるか微妙ね」 「あの大魔王の破却は近くのモノだけだから大規模じゃなければ歌も植物も通用するよ!」 「ミナさん!?IQ37しかない筈じゃ!?」 「大魔王の私の『技を盗む』となんか似てるから…ってか流石にもうちょっとIQあるよ!?」  ミナとハナはなんとか大魔術を抑えることに成功した。  後はヒナとナナが白兵戦で押し切るだけである。 「破却!」 「私から『神速』の魔術を破却されたらただの世界2位の剣客でしか無いんだけど…」 「十分!あいつらが役割果たしたんだからあたし達もやるわよ!」 「修行が100年足りてないけど人間にしては中々やるわあんた達。けれど破却は覆せない!」    激しい攻防が繰り広げられる。  激しく長い争いが続く。  双方が疲弊していくがロディには幾らかの余力があった。 「1000回は斬ってるんだけどなぁ…」 「1回でいいから当たればなぁ…!」 「力も見せてもらったし意志も見せてもらった、とても楽しかったわ。そろそろ貴方達の命も破却しましょうか」    しかしそこへ歌が響く。   「横槍でごめん!あと良いとこ取りでごめん!ハート・フルパワー!」  心の強さを歌う唄。  ロディはすぐにそれも術式化して破却しようとするが…その直前、心強さの歌は力強さの歌へと変調する。  結果彼女の破却は間に合わない。 「…っ、良いわね、その歌」 「!ご静聴ありがとうございました!」  最強の大魔王は、ミナと皆の強さに満足して消えていった。    * 「儂は剣極の大魔王。名は無いが剣鬼ムギョウと呼ばれていたな!」 「私は神速巨倒の剣士って言われてたわ。言われてたから気軽に私の神速に追いつくの辞めて欲しいわ」 ヒナとムギョウの雑談と剣戟のみが聞こえてくる。 姿は無い。どちらも音速を超えた動きでミナとハナには視認も出来ていなかった。 「ナナ、今どんな感じなの?」 「やや劣勢ね。ハナの援護ありとはいえやや劣勢程度に善戦できてるのが意味分からないけど」 ナナには見えているようだがこの領域に足を踏み入れるほどの機動力を持たない。 故に来る筈の無い好機を待ちながら必殺の一撃を繰り出す準備をすることしか出来ない。 「…うん、やっぱりあの侍さんにはこの曲!」  愛とドルチェのビッグバン。  その爆音は、ムギョウの心と心臓に強い衝撃を与え一瞬の隙を作った。 「!?なんだこの感覚は…!」 「心眼剣はその心の揺れを見逃さない。リーダー、あと宜しく!」  小さな隙を大きな隙へと広げる。  そこへナナが走る。  走るというか跳ぶ。  ジェット噴射のような炎を使う彼女は長期的な速度は維持できずとも直線距離に関してのみ最速を誇る。(ヒナを除く) 「これで終わり!…とはならなかったけど流石の大魔王もここから捲ることは不可能だったので割愛!次!」  * 「我は魔翠の大魔王。魔界の動物と魔界の植物を支配する魔界の自然そのものよ」 「動物なら任せて!愛玩のクレードル!」 「植物なら任せてください〜、デーモニックローオリアン〜!」 「我の眷属達が!?」 「はい、次!」  * 「よくも弟をやってくれたわね。我は魔海の大魔王、魔界の海そのものよ」 「でっか…」 「どんな海でもそれが海なら!アイスとドルフィンのサマービーチ!」 「この私が穏やかで楽しげな海になるだと…」 「この姉弟だいぶ厄介そうなのに雑すぎでしょ。次で最後!」  * 「ようこそ、私は災厄の大魔王ヤクヒメ。兄どころか全ての大魔王を倒してきたのね」 「和風だし兄ってムギョウって奴かしら、あんたらも兄妹なの?」 「いいえ?出身地が同じなだけですわ?」  女性の大魔王もこれまでに三…いや二人いた。  しかし彼女はとても幼くナナ達と同じ年頃かそれより年下にまで見えた。  …膨大すぎる魔力、否、呪力を除いては。 「斬り捨て、御免なさい」 ヒナはヤクヒメの小指のみを斬った。 しかし不思議なことに彼女の小指は健在。 逆に日本刀を振るった筈のヒナの小指が宙を舞っていた。 「んー、やっぱり『因果返し』の肉体なのね」 「ええ…?指一つ欠損したのに涼しいお顔で冷静に状況分析する現代人いらっしゃる?」 「というか斬る前からなんとなく予想してたから小指だけに留めたわねこいつ!」 「小指と言えど痛ましすぎますよ〜、サボテンヒール〜!」  ハナの回復魔術によってヒナの指は完治する。  しかしこれで純粋な攻撃しかできないナナとヒナには打つ手が無いという結論に至る。 「わたくしは人でも魔族でもありませんの。呪いの集合体、いわば意志のようなモノを持つ現象に過ぎませんわ。満たすことも、押し切ることも、衝撃を与えることも、眠らせることも不可能ですわ」 「見てきたように言うなぁ」 「見てきましたもの。因果の呪い其の物ですから」 クスクスと意地悪く嗤いながら直径2mに及ぶ呪力玉を生み出す。 …アレは爆弾だ。 着弾すれば呪いの大爆発を引き起こし全滅は免れない。 直感的にそう理解させられる。   「ふふっ、聡い方々で助かりますわ。とても美味な絶望の味です」 「実際参ったわね。ロディならあんたを破却出来るでしょうしムギョウならあんたをも斬れるんだろうけど、私達には真面目に打つ手が一つも無い」 「はい。わたくし、弱者を虐げられれば満足なんです!心なんて無いですけど!」 「色々と最悪すぎる災厄ね!」  次々と呪力玉が放たれる。  ハナの薔薇の要塞ローズガーデンで凌ぐが、いつ決壊するか分からない。 「あと二発分くらいですね〜」 「いつ決壊するか分かってるじゃん!」 「ハナに限界が来たらナナが気合いで全部持ち堪えて。ミナの新曲完成までもうすぐだから」 「言われなくてもやるけど…あんなの何発も耐えられないわよ!」  ミナは深く深呼吸し、集中して集中する。  もはや深呼吸と集中が目的である。 「しまった、こいつアホスイッチ入ったままだ」 「ちょっと!?あたし死ぬんだけど!?」 「お父さんお母さん14年間ありがとうございました〜、お花さん達お世話しに帰れなくてごめんなさい〜」 「もう少し信用してくれてもよくない!?ちゃんと出来ました!」  踊り子は歌う。今の世界への恋を。  仲間達としてきた冒険を。  仲間達としていく冒険を。  冒険を愛し、冒険に心踊るその気持ちを。  彼女の全てで表現していく。 「これって…!」 「敵への歌じゃない」 「私達への歌ですか〜!?」 「うん!私はまだこの四人で冒険したい!」  そう言いながらミナはヤクヒメに近付き蹴り技を放つ。  大した練度ではないフラメンコバトラという歌と踊りの格闘術、格闘家としては全く大成していないアイドルとして鍛えに鍛えた体から放たれる貧弱な一撃。  しかしそれは、正しくヤクヒメを退かせた。 「!?!??わたくしの因果返しの体質は??」 「はい!そういうマジックとかギミックとか私分かりません!あとやっぱり戦いのセンスないので歌に専念します!」 「上出来。仕掛けるわ!」 「っ、舐めないでくださいまし!」  呪力玉の被弾はあくまで魔弾ダメージとして喰らうだけで呪いによる追加効果は打ち消される。  ヤクヒメはこれまで因果返しに頼って来たため防御技術が極端に低い。  セブメタのメンバーもかなり消耗していたが、戦闘の素人と化した大魔王を打ち倒すのにそう時間は掛からなかった。 「負けたのね、わたくし」 「いや単調だから勝てただけで魔力量が馬鹿すぎて『愛すべき心踊る大冒険!』の影響下でも普通に苦戦してたけど…」 「腐っても大魔王ね!腐ってるのは性根だけにしてほしいけど!」 「あら、小根が腐ってるって言葉を心を持たない存在に使うのはおかしいですわよ?」 「こいつほんとムカつく〜!ムカつくけどムカつく気持ちがこいつの栄養になるから自制しよっと!」 「えっとごめんなさい、効かないのは本当だったから言うタイミングなかったんですけどヤクヒメさんにも心はあります」 「…は?わたくしに心?わたくしの発生要因から見てあるわけがないのですが?」  ミナは目を瞑り恋の心と恋の魔力を掻き集める。  彼女は既に妖精姫ではない。今から行うのは妖精姫でなければ使えない、足りない技。  キャパシティを超えて再現する以上手間と時間を要する本気の言葉。 「全投 i ラブ u ♡!!」 「……………?!??!??!????」  どんな言葉も歌も届かない呪いの鎧、心の壁。  それはこの世の何よりも分厚く強い厄災の嵐。  ヤクヒメ本人ですら見失い見つけられない無垢な心、だが心の守護者には確かに見えていた。  そして宇宙より重い愛と甘い心をただ一点に込めた言葉は、全ての障害をぶち破ってヤクヒメの心を射抜いた。 「…ありがとうございます、なんて、言いませんからね」 「うん。来世ではきっと友達になろう!」  改心したわけではない。過去の殺戮を反省したわけでもない。  だが何度生まれ変わっても過ちを犯し続ける魂を救おうとしただけのこと。  それさえも今後の彼女次第、というかミナはヤクヒメに課題を押し付けたようなものであり彼女にとっては迷惑まである。  とはいえ彼女にとってそれが心地のいいものであったかは定かではないが、初めて幸福を感じながら砂のように消えていった。 「ま、あいつ多分生きてるけどね!」 「えっ、そうなの!?」 「死んだけど輪廻転生の前に自力で復活を遂げちゃうって感じね」 「不死身すぎませんか〜…?」   こうして全ての大魔王を討伐した。 後はクルーエルマン達が黒幕である侵食邪竜を制圧するだけである。 六大魔王編、完!   「私ももう一回くらい討伐されたーい。倒した大魔王達の魔力を掻き集めて大魔王に変身できないかな?」 「あんたって結構マゾよね!」 「サドも行けるから怖いですよね〜」 「冷静に心に味を感じてる時点で正負が逆なだけでミナとヤクヒメは一緒よね」