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【韋編悪党】欺瞞の魔物 ヴァルナール

「復讐は人を色よく変えるもんだ」 狼は女に言う 彼女の祖母を殺した自分を追い、ついに仕留めるまでに達した赤い頭巾の女に言う 女は答えず、使い古した猟銃を狼へ向ける まだ幼い顔だが、実に良く成長している 狼は抑えきれぬ興奮と、この憎しみの結末に笑う 女の指か引き金に触れようとした時、狼はふと思い出したかのように口を開く 「ああ、ところでよぉ、お前の娘は小さい頃の嬢ちゃんにそっくりだったな。確か、こんな顔だったか?」 血に濡れた皮を取り出して狼は被る 「…お母さん? どうして銃を私に向けるの?」 その声と顔に赤い頭巾の女は青ざめた 僅かな隙を狼は逃さず、爪を振るう 鋭い爪の一撃は赤い頭巾を裂き、女の顔に赤の傷跡が走る。態勢を崩した女へ狼は更に追撃を続けようとするが、苦し紛れに放たれた猟銃の銃弾が狼の顔を掠める。 ニヤリと笑う狼だったが自分の伸ばした腕よりも早くに、女は逃れるためか自ら崖下へ落ちる。 「お、おいおい…そりゃあ、ないだろうが…」 崖下を覗くも既に女は真っ暗な底へ落ちていく。 折角の相手をみすみす逃したくはないが、流石の狼も下へ降りることに躊躇する。 「…ま、良いか。あんたの復讐心が仄暗い底から這い上がるのを気長に待ってやるさ」 狼は笑い、その場を後にした。