お節介な母に促され、 鉄面皮の父の運転する車に乗る。 つい先刻まではしゃいでいた弟は、 別人のように隣で静かな寝息を立てていた。 確か父の昇進祝いだか何だかで、 普段より少しだけ豪華な外食をしてきた、 その帰り道だったはずだ。 飛び込んできた対向車と正面衝突ってのは 後から聞かされた事実だった。 あの日オレは、残骸にまみれた炎の中で 両親の亡骸をつまらなそうに見下ろすアイツの姿を 確かに捉えていた。 アイツは死に体のオレを見つけ、 視線を交わすと楽しげに笑った。 ……嗤った、ようにも見えた。 オレは奴に真意を問わねばならない。 それがこの、ぶつける場の無い"憤り"の 唯一の捌け口足り得るからだ。