「時計の針がそう♪ 12時を打ったなら♪ 探しに行こうよほら♪ コバルトブルーの果てを♪」 「……白い兎は、どこ?」 答えは返らない。 でも、返らなくていい。 独り言は、返事を期待しないから。 「遅れちゃう……お茶会が、始まるのに」 誰のお茶会? いつのお茶会? わからない。 わからないけど――行かなきゃいけない。 背中が、ひりつく。 はさみの音。 籠が揺れる音。 物語が、軋む音。 「……ああ、また?」 わたしは、くすっと笑う。 楽しいからじゃない。 そうしないと、壊れてしまいそうだから。 「見つけたわ」 冷たい声。 甘い毒みたいな声。 「逃げ足だけは一人前ね。 でも、あなた―― もう半分、私でしょう?」 蒼の少女は、にこっと笑う。 「ちがうわ」 懐中時計のネジを、巻く。 【お茶会が始まるわ!】 カチリ。 世界が、一拍、巻き戻る。 その少女が現れる“直前”。 床に影が落ちる、その一瞬前。 「ふふ。」 蒼の少女は、 “選ばなかった未来”へ跳ぶ。 最後に振り返る。 赤いドレス。 鋏。 籠。 ――そして、 自分とよく似た顔。 「待ちなさい!」 赤い声は遠ざかる。 走りながら、ふと胸が痛む。 「……あれ?」 何か、呼ばれていた気がする。 でも思い出せない。 音だけが、欠けている。 思い出そうとした瞬間、 胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。 「あ、だめ」 蒼の少女は首を振る。 「考えちゃだめ。ここには、無いんだ。取られちゃったんだ」 誰に? いつ? わからない。 でも、赤いあの子が持っていった。 「返してもらわなきゃ」 その言葉だけは、はっきりしている。 「そう、返してもらわなきゃ」 私の、名前は? https://ai-battler.com/battle/893fc88e-2220-41c2-a35a-3b3afd677756