この地には何百年前から風船が引っかかってる木がある その風は朽ちる事無く、永遠に羨望を撒き続ける この木の発生は、600年ほど前に遡る 「グミ」と言う少女は、ルンルンで帰路に着いていた 風船片手に、道草をしながら 握り飯をもぐもぐと頬張りながら ポーカーランドの帰り道、あまりにも強い強風に、風船を手放して転んでしまった 風船は幸運と言うかのように、木に引っかかった まだ幼く、小さいグミは、風船を取ろうと木によじ登ろうとした だが、小さなその身体では、あまりにも無謀だった だが、グミは諦めない 木にひっついては転び、木にひっついては転びを繰り返していた いつしか、日が暮れ、服も汚れていた グミがここまでこの風船に固執する理由は、1つ。大事な物だからだ 単に大事と言う訳ではない グミの母親は病に侵されていた グミの母、通称「ラミ」は、3年前、夫と離婚 女手一つでグミを育てていた 当初は病など無く、この頃はまだお金にも困っていなかった だが、ある日を境に、ラミは体調が悪くなった ラミは身体を医者に診てもらった 診断書には、複数物生死に関わる病に侵されていたと記載されていた その中には、ガンもあった こんな身体で普段通り力仕事をするのは無理があった だが、ラミは絶対に仕事で弱音を吐かなかった ラミも自分自身が内心、なぜこんな事をするのかは不思議に思っていた それは本人ですら気づかなかった無意識な母親としての意地だろう グミにすくすくと育って欲しい 何不自由無く育って欲しい そんな願いが、身体を動かしたのだろう そんな生活を続けていると、ラミの食事の量は減り、身体は骨が浮くまでに痩せ細った 医者の診断でも、これ以上働いたら生死に関わるらしい ラミも病の治療に専念したいが、お金がない だから、働くしかない ラミの体重はこの時点で30kgを切っていた そんな身体で肉体労働をするのは無理があった 仕事にも支障が出て、やがて職すらも失った この風船は、そんな母がなけなしのお金をグミにあげて、それで買ったものだ グミにとっては、それは自分の命と同じくらい大事なものだった 何としてでも取りたい グミはなんとか木によじ登る事に成功した グミが風船に手をかけたその時、枝が折れた グミは背面から落下し、辺りには赤い液体が飛び散った それから600年、風船は未だに残り続けている