ある時、ある時空、または並行世界に「デュール」と言う少女が居た。 その少女はとても裕福で親にも愛される幸せだった。 だがある時、命を落とした。 理由も死因も分かっておらず、分かるのは触ると目覚めて発狂し再び静かに眠ることだった。 この事は全世界で取り上げられ現代最大の謎として注目された。 ありとあらゆる物を溶かす猛毒に何故か腐らない亡骸。 様々な科学者、国がこの亡骸の解剖や解析に挑戦し命を落としていった。 次第にその亡骸の話題は終息していき、今では噂話で偶に聞く程度だ。 親から子へ、子からそのまた子へ。と伝達が繰り返され、その500年後。その亡骸に興味を持った少年が現れた。 名前はジェーン。好奇心旺盛な十歳の少年でその破天荒っぷりから親をいつも困らせていた。 ある時、おばあちゃんから噂話にその亡骸の事を聞きジェーンは家を飛び出してその亡骸を探した。 亡骸はすぐに見つかった。何故ならその周囲だけやけに植物が少なく息苦しいからだ。 「すっげぇ!これがばあちゃんが言ってた亡骸か!本当に触ったら溶けるのかな?」 ジェーンはその亡骸に近づき、触ろうとしたがもしかしたら本当に自分の手が溶けるかもしれないと、近くから木の棒を拾って亡骸に投げつけた。 亡骸は声を上げて泣き出し、苦しみ悶えてジェーンを永遠の眠りへと誘おうとした。 ジェーンはその不気味な光景に泣き出してしまい、眠気が強まった所で誰かにビンタされて起きた。 「痛ってぇ!?なんだ?誰か居るのか?!」 ジェーンがあたりを見回すと後ろからおばあちゃんが歩いてきた。 「全く…年寄りを使わせて…」 「おばあちゃん…?腰が痛いから動けないんじゃなかったの?」 「ジェーンや…帰ったらたっぷり説教だ。」 おばあちゃんの声圧がいつもの穏やかな物より何倍も強く、まるで頭に鬼の角が生えたようだった。 「はい…」 「ジェーン。魔法使いになりたいんだろう?ならば見ておけ、おばあちゃんの魔法を」 「えっ!?おばあちゃん魔法使えたの!?」 「使えたわ。お前にそれを教えると面倒くさそうだから黙ってただけ」 「捻くれババア…」ボソッ 「……」 おばあちゃんの近くの空気が揺れ動き、まるで幻生物図鑑に出てくる悪魔みたいな不気味さと言うか、強さを感じた。 次の瞬間にはおばあちゃんは謎の言語で呪文を唱え、魔法陣を展開していた。 そしてあの恐怖の亡骸を手のような物で闇に葬り去った。 圧巻だし一瞬だった…これがおばあちゃんの魔法! 「哀れな魂よ…浄化されると良い」 「おばあちゃん…かっけぇ!俺にも教えて!あの魔法!教えて!」 「……ははっ。家に帰ったらたっぷり教えてあげよう」 「だがジェーン。あの魔法もそこまで長くは続かない後2年もすればあの亡骸は地の底から這い上がってくる。近づくなよ」 鋭い眼差しで僕を一点に見つめた。 「うん…分かったよおばあちゃん」 「ジェーン!お義母さん!大丈夫!?」 「あっ!ママ!おばあちゃんが守ってくれたお陰で俺は無事だったよ!」 「私も…ちと肩が凝ったくらいかの…」 「よかった…本当に良かった…」 「ジェーン、これからはデュールおばあちゃんの言う事はきちんと聞くんだよ!」 「分かったよ…」 「所でおばあちゃん、あの亡骸は誰なの?」 「そうじゃな…ある時、ある時空、または並行世界に『ダズ』と言う少女が居て──」