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【津々浦々森羅万象練り歩く夢のパレード】オセア・ダ・アヴァル

 スタンド型スキル…。我が家の中でも稀だが、スタンド型になるというのは、人の形を成すまでにその欲求が強いということだろう。 オセアは小さい頃から何かと遊びの道具にしていたからね。特にいじめられていたなんてことはないが、この世じゃあ遊ぶに足りないんだろう。おぉ、可哀想なオセア…ピエロメイク、似合ってるよ。 一体誰から習ったんだろうな。エナブロか、パラナか…ふふ、今はオセアの個人スキルの話をしていたんだったね。  『“皆芸” -パプリカ・パレード-』  それがオセアの能力。全身緑色で、ところどころスロットマシーンのようなもこと関節が置き換わっているロボットのような姿の亡霊だ。力も速さも人と変わりない。オセアの意思とは別に動いていて、彼も遊びたくなったら出て来る。 パプリカ・パレードは半径1500mの知性ある生命体に影響を及ぼし、その生命体が楽しいと思える、憧れにしている、なってみたいと思っている…希望を抱けるものに変形させてしまう力を持っている。触らずとも自動的にだよ。 まず、半径1000~500mまで。 パプリカ・パレードに接近された生命体は高揚感を与えられ、鬱だろうと病気だろうとハッピーな気分になって、個体によっては鼻歌を歌ったり踊ったりしだす。 次に、半径500~5mまで。 体が異常に柔らかくなり、一部が変形する。快楽に弱いタイプの性格ならこの時点でオセアの玩具だ。この柔らかい状態では筋肉もうまく作動しなくなっているから、ふにゃにふにゃになりながらも懸命に日常を送ろうとしている者が多い。この時点で、変形しない個体も殆どが踊るか歌うか、ハイになっている。 最後に、5m範囲内。 終わりだ。パプリカ・パレードに5m範囲内まで近づかれた個体はギターやら剣やら金やらに変形して、ただ踊って歌うだけの存在になる。変形する時はオセアに引っ張られるように体が伸びるんだから、見ていると笑いが堪え切れなくなってくる。  ちょうど、君のようにね。 「ねぇお父さん!今度のパレードはどこを通っても良いの?」 こらオセア。家の中でパプリカ・パレードを出しちゃあいけない。お父さんでも戻すのが大変なんだよ。 まぁ。君は戻したりしないがね。