水の魔法を操る大人しい性格の女子高生『アリス』は雨が大好きだ。雨が降れば傘も持たずに外に出て目を瞑り黙って雨に打たれ続けるのが彼女の唯一の趣味である。 アリスに異変が起きるその日もアリスは雨に打たれていた。しかし雨は永遠ではない、『止まない雨はない』という言葉があるように雨はいずれ止み太陽が顔を出す。アリスの心を満たし続ける雨も止もうとしていた。 アリスは瞼から熱い光を感じた、太陽の温かい光だ。アリスは寂しさを感じながら思った。 (もっとこの素敵な雨が降り続いてほしい…もっと雨と一緒にいたい…) そう思った時再び空から水滴が落ち雲が太陽を隠した。そう再び雨が降り始めたのだ。アリスは心から喜んだ、不思議なことに降る雨からはこれまで以上の心地良さを感じた。アリスは心の中で雨に感謝の言葉を捧げ、再びこの不思議な雨を感じ続けるのであった。 ところでアリスは容姿端麗で大人しさからくるミステリアスさやその心優しい性格から、声をかけてくる男が多い。そしてアリスは声をかけられるたびに申し訳なさそうにその誘いを断ってきた。 アリスに不思議な雨が降り続けるようになった日も一人声をかけてくる男がいた。その青年は右手に大きな傘を持ち左手には美しい花束を持っていた。しばらくアリスの様子を伺っていた青年だったが意を決してアリスに近づく。 しかしその瞬間青年に異常が起こった。手にしていた傘が突然消滅したのである。呆然として立ち尽くし右手を眺める青年だったが異常はこれだけではなかった。青年に降る雨が青年も消そうとしていたのである、何故かはわからないがその事を青年は確信した。 青年は自身に起こる異常を感じ恐怖のあまり叫んだが、その叫びごと雨は青年を消し去った。 左手に持っていた花束が地面に落ちる。その花束も風雨に晒されてすぐに消えていった。 アリスは青年にもこの出来事にも花束にも気づかなかった。 このアリスに降る不思議な『雨』は意思を持ち、雨を愛するアリスに恋をしていたのである。雨は自分とアリスだけの時間と場所を邪魔されるのを絶対に許さないのだ。 ロマンチック(?)で強いキャラが作りたかった(粉蜜柑)