医師は考えた どうすればこの患者を救済できるか。 その患者は不治の病に侵されていた、治療しなければ翌日にでも死んでしまいそうだ。 医師は患者にお酢を飲ませ、薬を処方し、懸命に治療した。 しかし、その努力も虚しく患者は2カ月後に死んだ。 呻き、苦しみぬいて死んだ。 医師は考えた 「私が延命しなければもっと楽に死ねたのではないか」と そんな事を考えていると、次の患者を診察する時間になっていた。 医師は患者の家に赴き、その姿を見た。 その患者はペストに感染しており体の一部が黒く変色していた。 もう助からないことは明白である。 医師は考えた 「この患者は延命するほうが良いのか?」と 患者の顔を見た、美しかった。 医師は患者を治療することにした。 前回以上に、懸命に… 患者は5日に死んだ。 また苦しんだ。 血を吐き、痙攣していた。 医師は考えた 2日間部屋に籠り考えた 医師は決意した。 治療しても苦しむだけなら、そんなことはもうやめよう。 医師はペスト患者を放置した。もちろん、助かる見込みのある者には治療を施した。 医師はペスト患者を殺した。 早く楽にするためだ。 それを邪魔する者も、殺した。 だが、こんな事をしていれば正気でいられるわけがない。 ペスト患者は敵だ、邪魔する者も敵だ。 敵は殺さなければならない、だがこれも救済なのだ、私は敵にも慈悲をかける、ペストは救済なのだ。 私は救済者である。 医師でありペストである私は、救済者である。