「私…私ッ!!こんな力いらない!!!なんで私だけこんな力があるの!?」 少女は叫ぶ。父親に告げられた母親の本当の死因。彼女の産声が雷を呼び寄せ、病院ごと半壊させて殺したのだそう。焼けた瓦礫の山の中心で1人無傷で佇んでいた赤子、それが有栖川なのだ。 _________ ある日の夜、少女の力が弱まった。彼女の願いに呼応し、その力は体から大半が出ていったのだ。そしてその力は遥か彼方へと飛び散り、あらゆる世界へと向かう。もちろん、彼女がいるこの世界にも。 だが、陸に落下するまでどれほどの年月が必要になるだろうか。1年?それとも10年?誰にもそれはわからない。 ______________ そして時は流れ…家でテレビを眺めている時、ニュースが流れてくる。 「謎の異形により、都市部が襲撃される。」 そのニュースに含まれる動画に、少女は自分にしか理解できない謎の既視感を感じた。それが何なのか、当人には言語化することはできないだろうが、とにかく共通点を感じた。 「これって…もしかして私の……?」 途端、少女を襲う焦燥。この既視感が私の弱まった力の一部分なら、この災害は私が引き起こしたものだ。責任を取らなければ。と。 そして少女は空を見つめる。焦燥が彼女に気付かせた。無数に感じる、画面の向こうの異形に感じたものよりも濃い「既視感」。 「まさか……………」 これから彼女は、空に感じる全ての既視感と戦わなければならない。その先に待つ結末が良い物であれ、悪い物であれ。 少女は責任を取るために、自分の…世界の結末すらも無視して歩みを進める。なぜならこれは彼女の物語で、全ての物語には結末があるから。