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【天狼忍群/疾風の】弥吉

ここは天狼領、山尾天狼守道徳様のお屋敷 道徳様からの任務終え、長廊下を渡る途中 ふと、背後からぱたぱたと足音 『弥吉!弥吉ぃ!!』 振り向けば金毛に青目、道徳様の養女の葵様 「ハハ、来られましたなお嬢」 拙者が少し身を屈め視線の高さを合わせると お嬢は花開くような笑顔のまま両手を出しました 「お嬢、その手はどうされましたかな?」 あえて意地悪い顔をして言ってみる お嬢はみるみる頬を膨らませ 『弥吉!お土産下さい!!』と言い切った 「仕方ありませんなぁ」外で買うた砂糖菓子を渡し 「道徳様には内緒ですぞ?」と言う それに対し お嬢が『はい!』と笑顔で答える これがいつもの事である お嬢も今年で齢十五にもなりましょうが いつまでたっても変わりませぬ ついつい土産を買ってしまいまする 『弥吉!次のお仕事では私も連れて行って下さい!』 「ううむ、某は任務で行っております故・・・」 そう断るとお嬢は唇を尖らせて 『嘘です、とと様もとても楽しそうで』 「いやいや、ハハハ・・・」 何とか誤魔化し立ち上がろうとすると 不意に首元にぞくりと悪寒 忍びとしての勘が告げる、これは異常事態であると 拙者はすぐ振り向き道徳様の下へ行こうとする が、体が動かなんだ 前を向くと 左腕は掴まれ 肩には手が添えられ 『ねぇ弥吉』 『外の任務はそれはもう』 脂汗が出る 『それはそれは』 震えが止まらぬ 『楽しいのでしょぉねぇぇえ??』 笑顔のままそれはもう恐ろしい気配を漂わせ・・・ 蛇に睨まれた蛙、などとはよく言いますが これは閻魔様に睨まれた罪人の気分でしょうな ハハ・・・ハ ハッとして天狼山を見やると 山超える巨狼にして守り神『天狼』様が なんとも申し訳なさそうな顔をしまして ふいっ、と顔を背けたので御座います そこで拙者の心は折れまして候 怒気を膨らますお嬢を前に拙者は為す術ござらぬ ・・・あっ、巫女殿!巫女殿では御座らぬか!! 地獄に仏とはよう言うたもの!! 巫女殿いえ菩薩様!どうか拙者に良きお智慧を 巫女殿は一度、拙者を見やると 手に持っていた漬物をバリバリ食べながら そのまま通り過ぎて行きまして・・・・・・ いやお待ちを! どうかこの哀れな弥吉めをお助け下され! 『弥吉?どうしましたか弥吉??』 掴まれる肩と腕がミシリと音を立て申しまして ほろりと一筋涙こぼし思いまする 味方は、ござらんなぁ・・・ ここで一句   秋の朝、土産ねだるる、閻魔様                弥吉 心の俳句 意味:秋の朝は涼しくなり始めますが    閻魔様のお叱りはそれより更に肝が冷え    がま口の先も更に冷えまする 続きはお嬢(葵)のプロフィールにて