人類を次世代へと進化させる特異点の一つ。 本来ならば彼女の素質を解析することで人は矛盾を研究し、概念を本質的に理解することが可能だった。 しかし、彼女は産まれるのが早すぎた。 千年先で聖人と同じ時代に産まれ、お互いを理解するはずだった彼等は出会うことなく、悲劇は起こった。 当時発展途上だった魔法技術では彼女を理解することが出来ず、人々は彼女を恐れ、それは迫害へと繋がった。 その結果、理の外から来る敵に振るわれるべきだった矛と盾は人類へと向けられ、幾つもの国が滅びた。 いつしか彼女は魔王と呼ばれていた。 世界から迫害されていたモノ達は彼女を祭り上げ旗頭とし、人類は彼女を脅威と定め命を狙う。 彼女なりになんとかしようとはした。 後の世で魔族と呼ばれる異形の者達を宥め、人類に和平を呼びかけた。私は同じ人間だと。 殺しても死なず、老いもしない化け物が人間なわけが無いだろう。 彼女の呼び掛けは罵倒で返された。 やがて魔族の中にも彼女から冠を奪おうと襲う者が現れた。矛盾の力はそれを人類と区別なく排除する。 この同胞殺しの魔王が! 謂れなき暴言は彼女への恐怖と比例するように広がり、やがて魔族達も彼女の敵となった。 世界の全てが敵。 救済の特異点は遙か彼方。 希望の特異点は別世界で。 愛の特異点は泡沫の夢。 救ってくれる者はおらず、凡人の特性を持つ彼女は何も成すことか出来ない。 彼女は絶望の中で城に一人佇む、もう誰も来ないで欲しいと願いながら。 「世界の全てを差し上げます。だから、私を救ってください」 秘めた想いを口することなく、彼女は裁きの剣を待っている。 ※素質<ステータス> 【人類特異点・矛盾】【完成した魔王】【凡人】 【凡人】:この素質を持つものは何もなせず何を残すことなく、その代わり運命に振り回されることがない。