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妖艶大妃ハチビ

かつて、彼女はただの小さな狐でした。しかし、偶然にも人間を心の底から恐怖させ、その瞬間から妖力を得たのです。力を得た彼女は、夜の静寂の中でその力を試し、次第にその妖力を増していきました。ついには、その強大な力が妖怪の王の目に留まり、彼の妻となったのです。 彼女の夫である王は、普段は群れを成さない妖怪たちを従えます。彼らを引き連れて歩くその姿は圧巻でした。その光景は彼女にとって誇らしく、まるで己の成長を象徴するようでした。しかし、心の片隅には常に思いがありました。彼女は本来、山奥の静かな暮らしを愛していました。妖怪たちの王に従う身であっても、彼をいつかこの騒がしい世界から連れ出し、静かに共に暮らすことができれば…そう願うのは、元は狐であった彼女には自然な感情でした。 しかし、運命は残酷でした。ある日、いつものように妖怪たちを引き連れていた彼らに、人間の妖術師たちが襲いかかってきました。守るべき者たちがいる中、彼女は満足に戦うこともできず、激闘の末、多くの仲間と一本の尻尾、そして夫を失うことになりました。「もし、あの時、無理をしてでも彼を連れて行けたなら…」彼女の心には、後悔が深く刻まれました。 深い嘆きと悲しみの中で彼女は気力を失い、名を捨て、ただ人間たちに好きなように呼ばれるままに任せました。そうして、次第に噂は広がっていきます。曰く、八つの尾を持つ妖怪が山奥に住んでいる。曰く、八尾は人間に対して深い怨みを抱き、近づく者を呪い殺す。曰く、ハチビの山には決して近づくな…と。