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メルクリア

これはとある昔話。赤髪の勇者メルクリアと緑髪の魔術師ゼリナスの二人が世界を力と恐怖で支配していた魔王を倒すために旅をしていた。中央大陸の遥か西にある魔王の城を目指して二人は進む。 その道中で二人は苦戦しながらも魔王軍に支配された国や村を解放し、各地で暴れる魔王軍の幹部を撃破していった。 いつしかメルクリアは神速の勇者、ゼリナスは地上最強の魔術師と呼ばれるようになる。メルクリアはその名の通り圧倒的な速度で敵が斬られた事を自覚する前に首を落とすと言われ、ゼリナスは地属性の魔術を極め、大地に立つ者は彼には決して敵わないと言われる程だった。 こうして二人は魔王城に到着するも城は明らかに手薄、幹部すらも不在ですぐに魔王と対峙する事になった。二人はその状況に明らかな違和感を感じつつ、魔王に攻撃を仕掛ける。 魔王は人間では辿り着けない領域の魔術、武術の数々を見せ有利に戦ったが、ゼリナスが作った一瞬の隙をメルクリアは見逃さなかった。牙突を何発も打ち込み、そこにゼリナスが魔力を全て使った魔術を放ち二人の全力の攻撃を浴びせる。そして遂に魔王は倒れた。 が、しかしそれすらも魔王の悪趣味な策略の内だったのだ。魔王は自分より二人の方が強く、いつか自分が負ける事を理解しており、部下を先に全て逃していた。そして魔王は二人に最後の大魔術を使う。 消滅しかかる魔王の体が発光し、二人は光に包まれた。 気がつくと二人は城の外に転移させられていた。自分達の体に何も異常が無い事を確かめ、付近の村に向かう。そこには村を支配していた魔物も無く、二人が本当に魔王を倒した事を示していた。しかし、村人に話を聞くと、「魔王?なんの話だい?」と口々に言う。二人は唖然とし、私達は勇者一向で…と説明するが魔王軍は確かに居たが肝心の魔王が現れずにバラバラになったと言われた。 今度は最寄りで二人が救った国に向かい、そこで話を聞くも村で聞いた話と変わらない話を聞かされるだけだった。それならばとメルクリアがこの国を救ったばかりだと話すが、民達は確かに少し前に魔物が攻めてきた事はあったが、二人に救われたなど知らないと言われてしまった。二人は完全に変人扱いされてしまい、仕方なく国を出た。 あの時、魔王は自らを引き換えに世界中の人々の記憶から魔王自身と二人の存在を消したのだ。地獄で魔王は二人を見て嘲笑っているのだろう。 二人は途方に暮れ、大陸の辺境で過ごす事にした。二人とも強さには自信があったため、周辺の国や村の依頼をこなして生計を立てた。しばらくして、二人の間に子供が産まれた。赤髪の男の子と緑髪の女の子だった。二人はそれぞれにゼノン、メノンと名付けた。 それから数ヵ月が過ぎたある日、メルクリアとゼリナスは魔物の気配で目を覚ます。 幹部を含めた大量の魔王軍の精鋭が辺りを取り囲み、幹部達が二人の家に目掛けて攻撃をしようとしていた。魔王は、大魔術の記憶の抹消を配下だけは対象外にし、誰からも支援してもらえない二人を一斉に襲って殺そうとしていたのだ。 すぐに二人は戦闘体制に入り、子供達を連れて家を飛び出した。瞬間、家は爆発四散する。 最初こそ二人は優勢だったが、幹部も含めた魔王軍が徒党を組んで襲ってくるのは初めてであり、魔物達の連携と数の暴力に押され始める。 子供達を抱えたまま戦闘になったため、メルクリアは神速を上手く発揮出来ず、雑魚達が重なり、肉壁となって彼女の剣と動きを止める。そこを押さえつけられ、魔物達の手が彼女の体に伸びる。ゼリナスは決断する。未来のため、今襲われそうになっている子供達と妻のために。 ゼリナスは魔術でメルクリアに群がる魔物を一掃すると、巨大なゴーレムを作り出す。ゴーレムに妻と子供達を安全な場所まで護送する事を命じ、自分は残る事にしたのだ。 メルクリアが目を覚ますと、大陸の遥か東の国テセスに居た。真っ暗で雨も降っており、ゼノンとメノンを抱え、ふらふらと歩き出す。 メルクリアの家系において分家にあたるテセスの領主の屋敷を訪れた。このまま二人を守りながら戦うのは不可能だと判断し、叔父を信じてゼノンとメノンを預けると、大陸に戻る事にした。ゼリナスの敵討ち、そして魔王軍残党を全滅させるために。 今日も彼女はどこかで存在しない勇者として孤軍奮闘しているのだろう。 好きな物は平和と酒、子供達 嫌いな物は魔王軍