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デトレ

遥か昔、誰かの「願い」から生まれた。 その「願い」は平和と豊かさだった。 それはただの元の「願い」を逸脱し、拡大解釈されて叶ってしまった。この世界の人類の歴史は闘争の歴史であり、その血みどろの闘争から文明は発展してきたからだ。 平和を追い求めた結果、争いが無ければ良い、争いは人類の技術、魔術が発展するから生まれるのだとして人類の進化を停滞せんとする停滞の神を生み出した。 彼女が生まれた際、手始めに人類を自らの力に依存させて発展を妨害するつもりだった。彼女は近くの村の畑に牧場、村人の庭まで豊穣で満たした。すると彼女は豊穣の女神として、人々に崇められるようになってしまった。 彼女は想定外の事態に戸惑いつつも、崇められる事に強い快感を感じ、身を震わせる。少し照れながらも、本当は停滞の女神である事を隠し、豊穣の女神と名乗る事にしたのだった。 次第に他の村々にも頼られるようになり、膨大だった魔力を調子に乗って使い果たしてしまった。大陸の東の僻地にて彼女は魔力を回復するために長い眠りにつく。 彼女が目覚めた時、既にとてつもない歳月が流れていた。平原だった筈の彼女の周囲は彼女の影響で巨大な森林と化していた。彼女は最初に自らを崇めていた村をどうなったのかを見に行くと、大陸でも有数の大国となっていた。 彼女は既に伝説上の女神として崇められ、信仰する教会もできていた。人々に力と姿を見せれば、大きく人口も増えたこの世界で一体どれほどの信者が私に向けてひれ伏すだろうと彼女は想像し、恍惚とする。だがよく考えてみれば前と比べて文明の規模は大きく発展しており、また調子に乗ればすぐに魔力を使い果たしてしまうと考えた彼女は苦渋の決断で諦める事にした。 目覚めた後の世界を知るため、素性と顔を隠して情報収集をしていると、ピフレと名乗る破壊の女神の存在を知る。直感で自分と何か自分と同じものを感じ取り、ピフレに会いに行く事にした。 破壊された村の跡で二人は邂逅する。 ピフレ「あ?なんだテメェ、俺に近づいたって事は死にたいみてぇだな?」 次の瞬間には彼女の体はピフレによってぐちゃぐちゃにされ、ピフレは次の破壊を求めて飛び去った。その直後、彼女の飛び散った肉片が集まり急速に再生し、元通りになる。 これまで彼女を気味悪がったり、豊穣を受け入れなかった人間に攻撃された事はあったがここまでされたのは彼女にとって初の経験だった。 嗚呼、あの我が妹が私をお姉ちゃんと呼んで慕ってくれたなら、服従させられたなら、支配できたなら、私だけを考えてくれるようになったなら、と想像するだけで強い快感を感じながら自らの生まれた理由すら忘れてピフレに歪んだ感情を向けるようになった。その日から勝手にピフレの姉を自称し始め、自分で自分にデトレと名付けてピフレに執着するようになった。 手始めに自分を信仰する教団を服従させ、ピフレは容認できない存在として討伐するために信者に調査させる。が、本当は全て建前であり、教団すらも歪んだ欲望を叶えるための踏み台としか考えていないのだ。 表の顔は慈悲深く心優しい女神だが、裏の顔では欲望の邪魔をする者を容赦なく葬ってきた。 デトレは今日も密かにピフレへ劣情を向けて自身を慰める。ピフレを我が物とするその日まで。 好きな物はピフレの全て 嫌いな物はピフレに群がる人類