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ルル/百八億個のスキルを持つ少女剣聖

彼女は既に死んでいる。 死因は過労による心臓発作。享年38歳。 この物語は伝説の追体験である。 そう、彼女が34歳の時の体験である。 死んだ時の彼女の顔はとても気持ちが良さそうであった。 A.M.5:00。 朝日に意識を浮かばせ起き上がると眠たい目を擦りおでこから顎へと泡を広げる。 歯ブラシに歯磨き粉を付け口の中に入れシャカシャカ音を立てて歯を磨く。 次に私は髪にいつものポンデリングを作る。 自室に戻るとパジャマを脱いで下着姿となり、紫色のシャツを着て黒いショートパンツを履く。 シャツの上に白いコートを着て、その上に黒いマントを羽織る。 そして伝説の剣を鞘から引き抜こうとする。 …だが、伝説の剣はうんともすんとも言わない。 毎朝の朝ごはんは随分と質素だ。 何故なら私が以前朝ごはんを作ろうとすると不運で火事になりかけたからだ。 今日の朝ごはんはパンだけだ。 パンは硬くて香ばしい。美味い。 今日も始まる。悪夢が始まる。 仕事はA.M.6:30から始まる。国の警備だ。 私が百八億個のスキルを持つからって、国一つを私一人で守るのはおかしいと思う。 国を守っている時、不審者を見つけると必ず私はお気に入りのスキルを使って撃退する。 「スキル【光の剣】Lv.666」 光の剣は不審者の四肢を壁に貼り付けにして拘束する。 「ふぅ…疲れた」 国を何周もした。…まだ仕事がある。おかしい。おかしい。 キレそう。 A.M.7:30。 魔物討伐の仕事が始まる。 大体はドラゴンとかサイクロプスとかのヤバイ奴らを狩り続けているけど、今日は大量発生した雑魚が相手らしい。 現場に行ってみるとそこには超巨大スライムが居た。 ザッと見て60mは越えた超巨大スライム。 聞いていた情報と違う。 「…はぁ。スキル【水分吸収】スキル【圧縮】」 スライムはみるみると硬く乾燥し10cm程のブロックに圧縮された。 私の頬肉に水分が大分宿りモチモチモチモチ…。 うん。良い触り心地。仕事に癒される日が来るとは思わなかった。 さて帰ろう。 私がそう思っていた時だった。 「ギャオオオオオオオオン!」 メカメカしい咆哮が聞こえた。真後ろから。 私は思わず冷や汗をかいた。 だってこれは伝説にしか存在とされる生き物の鳴き声に途轍もなく似ていたからだ。 「嘘だろ…『メガメカニティウムドラゴン』が居るとでも言うのか…?」 私はバッ!と振り向く。 そこには枯れ葉が浮き上がっていた。 ヤバイ! メガドラゴンはいつの間にか私の真後ろに居た。 私はそれを見逃していなかったが。体が追いつくか…? 「ッッッ!!」 私はリリで爪を防ぎ衝撃で吹き飛んだ。木々が私を受け止める。 「あぁ…こいつ伝説通りなんだ。」 スキル無効…マジであるんだな…。 私の感知が発動しなかった。Lv.は921で申し分無いのに。 私の天敵だ。 「初っ端から本気で行かせて貰う。」 【光の剣】【剣の護符】【剣聖】【究極の一撃】【鬼殺しの剣】【剣技:風車】【剣技:竜巻】【剣技:残風】【威力超上昇】【威力上昇】【威力微上昇】【超硬硬化】【超硬化】【硬化】【ドラゴンキラー】【龍殺しの剣】【適応】【分析】【解析】【吸収】【威力倍増】【封印の剣】【魔法剣】【斬鉄剣】【木刀】【竹刀】【秘剣】【炎剣】【雷剣】【水剣】【風剣】【闇剣】【光剣】【土剣】【氷剣】【機械破壊】【不明の剣】【不運の剣】【因果の剣】【蜻蛉の剣】 とにかく一杯スキルを詰め込む! 普通なら大地が抉れ直径70mくらいの深いクレーターができるほどの威力だが…。 片腕を半壊程度か…! どうやらバフ系のスキルは全て無効化されているみたいだな。 分析と解析は機能してくれて助かった。 …スキルを使って土煙が舞い、周囲が見辛くなってしまった。 まずいな…コレは…。 どうやって奴の動きを見切るか── ──あ…? ここは…?私は…硬い。なんだこれ…岩…?岩の中に私が居るのか…? うう…クラクラする。スキルが使えない…と言うより使いづらい。 何が起こったんだ…? あのドラゴン、こんなに速かったのか…。 流石神と呼ばれる種族…あはは。 楽しくなってきた。 って言えるほどの余裕があればなぁ…貧血で動けそうにないし。 一回私は肉塊にされたのだろう。その後【超再生】とか【不死鳥】などのスキルで蘇ったと見る。 証拠は臭いと視界だ。 アンモニア臭い…一回膀胱が破れて尿が飛び散ったんだろう。 岩にも赤い血がこべりついている。 こう言うときに衣服も再生してくれる【超再生】は本当に助かる。 私が街に戻ったときに恥を晒さなくて済む。 「来いよドラゴン…私はこの瞬間、自分の殻を破って【勇者の矜持】を解放してやる。」 【勇者の矜持】。それは私が唯一解放していないスキル。 伝説の剣【リリ】を鞘から引き抜く際に必要なスキル。 ドラゴンの喚き声が聞こえる。 来る。突進してくる。 右爪から来る。また私を殺すつもりだ。 ああ…なんでだろう。最悪な筈なのに。 「最高の気分だ…」 私は不意にリリを鞘から抜きその巨大な刀身を煌めかせる。 私の中で新たなスキルが目覚めた気がする。 「ははは…使ってみよう!お前はその実験台だ!」 【真・勇者の矜持】Lv.1 ドラゴンの攻撃がゆっくりに見える。さっきはあんなに速かったのに。 ドラゴンの四肢をあっさりと切り落としドラゴンの上に乗る。 「なんだ?もう終わりか?ほら、がんばれがんばれ♡」 ドラゴンは背中を光らせ、レーザーを放って来た。だが、無駄であった。 何故ならもう死んでいるのだから。 次の瞬間、ドラゴンの首がズレる。 ドラゴンはこの世とおさらばしてしまったのだ。 「やった…遂に本物の『剣聖』に…」 私は気を失ってしまった。 私が目覚め、街に戻る頃には日はすっかり暮れていた。 今日は非日常だった。 P.M.21:00〜A.M.1:00まで私は国の防衛を務める。 はぁ〜苦行苦行。 特に変なことは起こらない。だからこの仕事要るか? A.M.1:10 服を脱ぎ、疲れを癒しに湯に浸かる。 …それにしても。 「もっと身長が高くて…もっと胸も大きければなぁ…」 はぁ…。 この低身長のせいで良く舐められるのだ。誰だと思っているんだ全く。 ゆっくりとお湯に浸かった後はA.M.1:40になっている。 後は髪を乾かして食事を取り歯を磨いて寝るだけなので省略させていただく。 A.M.2:30分 就寝。