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波風 華奈

本名:波風 華奈(なみかぜ かな) 性別:女性 性格:胆大心小、慎重、根は優しい 口調:強気な敬体口調を好んで扱う 年齢:23歳 発現年齢:9歳 身長:182cm 容姿:蒼髪翠眼、髪は背中の中頃まで 服装:黒基調のメンズライク 装備:黒ベースボールキャップ 家族構成:四人家族(母親と三姉弟) 姉弟関係:三姉弟長女 趣味:髪を梳く、服を選ぶ コンプレックス:過去二度、危機的状況下で何もできなかった事 ──────────────────  私は、ずっと後悔している事がある。  一つ目は、私が五歳の時。まだ弟達は、一歳と産まれたての赤ん坊だった頃。  二つ目は、一年前の825年。私が姉弟達と協力してお母さんへの感謝を伝える為に、一緒に旅行へ行った時。  私は、あの時─何もする事ができなかった。 ◇◇◇ ─現年808年─  私は当時五歳。弟達は凛華が一歳、稜華が生後六ヶ月程だった。まだお父さんもいて、平和で楽しい日々だったと記憶しているわ。 ……でもそんな楽しい日々は、突如終わりを迎えたの。 ──あの日。  丁度、その日は台風が来ていて、外は大荒れになっていた、あの日。  私の両親は、大喧嘩をしていた。  お父さんが生まれたばかりの稜華を思っての言葉が、事の発端だった。始まりこそ穏やかだったけど、次第にヒートアップして大喧嘩になったの。  お互いに私達の事を大切に思い過ぎるが故に起きた、悲しい事故。そしてそれは留まることを知らずに、お父さんとお母さんを刺し続けた。  私と弟達は、その光景を部屋の片隅で泣くのを堪えながら、眺めることしかできなかったのよ…。  そうして、いつもはあまりの仲の良さで周囲を照らしていた陰陽(二人)が、互いに重なり合い…自ら、曇っていったんだ。  遂にはあと一歩で手が出てしまう…そんな空気になった所で、お父さんは出ていった。  お父さんが出ていった後、お母さんがその場に呆然と座り込んでいたのを、ぼんやりとだけど覚えてる。  その後、″お父さん″が帰って来ることはなかった。  お母さんは毎日のように自責を重ねて、病んでいってたわ。この時は親戚の人も呼んでお母さんを支えていたな。  そうして、数ヶ月経った頃。  突然、お父さんは帰ってきた。 ……ただし、この世界特有の現象、『我力者』と変わって。  我力者とは、異能力者が精神的に追い込まれる事によって、《進化》してしまう現象。  通常、進化してしまった我力者は凶暴化、その強化された能力を振るい、暴れ回る。  当時はそこまでは知らなかったけど、とても危険で、見つけたらすぐに逃げなさい、って言われていたのを思い出す。  お父さんは、ぼんやりとこちらを覗き込むような形で、戸の前に立っていた。  その姿は異型そのものに変化していて、全身は波そのものと化し、水光を放っていた。  弟達はその姿に怖がり震えていたが、私は直感でそれがお父さんだと、無意識の内に理解していた。  まるで、それがわかっているかのように、お父さんは私に向けて、非常に大きくなった手を差し出す。  その時、お父さんが醸し出していた雰囲気は、実に和やかなものだった。  なぜ私が、あの化け物の事を『お父さん』と気付けたのかは、わからない。  私も同じく、手を伸ばし─ ──しかし、その寸前で…私は、手を引っ込めた。  恐怖が、勝ってしまったのだ。  私は…理解した上で結局、弟達を抱いて震えることしか、できなかった。  お父さんを…信用、できなかったの。  その後は、あまり覚えていないわ。  お父さんはいつの間にか消えて、もうそこには欠片も痕跡は残っていなかった。  ただ…消える前、手を引っ込めた瞬間、お父さんの顔が、悲しく歪んたように見えたことだけは覚えてる…。  そうして残ったのは、『私がお父さんを信用せず、震えることしかできなかった』という、事実だけだった。 ◇◇◇ ─現年825年─  あれから17年が経った、去年のこと。  弟達も大きくなり、私はお母さんと同じ会社務めを頑張っている。お母さんも大分回復して、最近は同じ時間に会社に行ってるんだ♪  そうして…四人ながらに何とか、前のような生活の為に頑張っていた、ある日。  凛華と稜華二人の 「久しぶりに旅行に行かない?」 という言葉をきっかけに、久しぶりの旅行へ行くことになったの。  水族館やカフェ、最後は旅館にも泊まったのよね。  特に、久しぶりに入った温泉は格別に気持ち良かったわ。伸び伸びと入れたしね。  そんなこんなで楽しい時は過ぎ去り、のんびり帰り道、私達は道の駅に寄ったんだ。  道の駅は景色がよかったり、その地域の特産品や装飾品があって、どこも素敵な場所。  ここは綺麗な海岸があって、そこで眺めながらたこ焼きを食べるのが美味しいんだよね。  そう思い、皆を呼んで食べようとした、その時……。  同海岸に静かに、しかしこの世のものとは思えない、威圧的な叫び声があがったの。  それは…我力者が現れる兆候だった。  その声は次々と道の駅中に波及していって、たちまち海岸、そして道の駅は大混乱に陥っていった。人は外・中それぞれに逃げ惑い、そこら中に人の雪崩が起きてた。 「私達も…早くッ、逃げるよ!」  我力者は私達の目の鼻の先にいた。今はまだ進化したてだからか、まだ悶えて動かない様子だったけれど、一度動けば危険なんてもんじゃない!  そう思った私は皆にそう言い、立ち去ろうとしたんだ。  その時、私達の耳に。 「…た、助けてください!」 と、声が響き渡った。  その方向を見ると、20歳程の女性観光客の二人組がいた。どうやら一人の足が砂にハマってしまい、動けなくなってしまったようだった。  ちょうどその時、我力者は煩悶期間が終わり、いよいよ暴れだしていた。動けない二人を発見・標的化し、走り出していた。 (ど、どうする…? 助けなきゃ…。)  だけど私は、動けなかった。  恐怖が私の体を蝕み、出たのは弟とお母さんを制止した結果出た、「逃げて」の合図だけ。 (せめて…家族だけでも。)  何とか体を動かし、一歩前に出る。 ……しかしそこから一歩が、出ない。  自分の不甲斐なさがとても嫌になる。  そうしている間に、我力者が観光客の眼前にまで、近付いていた。 (あぁ…ごめんなさい。 私は…あなた達の為には、動けない。)  そうして我力者が近付き、二人が拳によって潰される…次の瞬間。  後ろから、甲高い音が鳴り響いた。  驚きその音の先端を見ると、凛華が能力の反射を利用し、勢いよく突っ込んでいた。  そのまま凛華は二人の前まで急加速し、攻撃を反射。我力者は勢いよく反射された攻撃を食らい、大きく吹き飛んでいった。 「凛華!」  私は急いで凛華の元へ行った。 「大丈夫!?」 「はは…大丈夫だよ。姉さん。」  凛華に怪我一つないことを確認すると、ほっと、胸を撫で下ろす。 「もう…危ないから。 逃げてって、合図したでしょ!」 「あれ? でも私の自由にしていいよ、って言ったのは、姉さんだよ?」  その時の凛華は珍しく、小悪魔のような顔を浮かべて、からかっていた。 「そ、それは…。」 「それに…。」 「私は…小さい頃に姉さんに助けて貰ったことがあるから…。 それを見習いたかっただけだよ。 だから、大丈夫。」  爽やかに、心地よい声が響く。  そしてその言葉は、私に優しく…逃がさないよう胸に刺さったのだった。  その後は、我力者討伐部隊の隊長さんが来て、その場を収めてくれた。  どうやら我力者は、あの凛華の反射によって瀕死にまで追い込まれていたらしく、残りはスムーズに対処する事ができたそう。  私達は感謝状を貰い、皆無事に家に着くことができたのだった。 ◇◇◇  でも、私は何もできなかった。  お父さん亡き今、私がしっかりとしなければいけないのに…。 ──結局私は、あれから一片たりとも変わってなかったんだ。