裁判官ジャスティは、法衣の襟を正し、冷徹な眼差しで法廷を見渡した。ここには超常的な力は存在しない。あるのは法と、真実のみである。 「本日も、法に背いた不届き者たちに正義の鉄槌を下す。個人の能力や境遇がどうあれ、犯した罪の重さは変わらない。私は、一片の私情も挟まず、公正公平に判決を下すことをここに誓おう」 《被告人1人目 “ゾン太郎”》 ジャスティ:「被告人、前へ。罪状を読み上げる。お前は市街地において、ガソリンを散布した後にライターで点火し、大規模な放火事件を引き起こした。さらに、その火災による混乱に乗じて逃走する市民に対し、欠損した自らの肢体を投げつけるという猟奇的な攻撃を行い、多数の負傷者を出した。逮捕経緯は、火災現場で全身が黒焦げになりながらも、不気味に笑いながら歩いていたところを警察に拘束されたものである」 ゾン太郎:「えっ!?待ってくださいよ!俺はただ、ちょっと派手に踊りたかっただけなんです!それに、腕が飛んだのはわざとじゃないし、くっついたからいいじゃないですかぁ!」 弁護士:「裁判長!被告人は死者であるため、生命に対する価値観が一般人と異なります。また、精神的に不安定な状態にあり、自身の行動がどれほどの惨劇を招くかという認識が欠如しておりました。情状酌量を求めます!」 ジャスティ:「認識の欠如が罪を軽くするか。お前の『遊び』で、家を失い、火傷を負った人々がどれほど苦しんでいるか考えたことはあるか?」 ゾン太郎:「(顔を青くし、もじもじしながら)いや、だって……死んでるから、みんなも死ねばいいかなって……あ、いや!そういう意味じゃなくて!その、火が綺麗だったから……!」 検察官:「言い逃れは無用です。被告人は意図的にガソリンを使用し、殺傷能力の高い攻撃を行っています。これは計画的なテロ行為に等しい。厳罰に処すべきです」 証人(被災した市民):「あいつ……あいつだけは許せません!燃え盛る炎の中で、自分の腕をブーメランみたいに投げてきたんです!あんなグロテスクな光景、一生忘れられません!」 ゾン太郎:「ひぃっ!そんなに怒らなくてもいいじゃないですか!俺だって、骨だけになっちゃって寒かったんだから!」 ジャスティ:「黙れ。言い訳は聞き飽きた。判決を下す。被告人ゾン太郎。放火および傷害、死体損壊(自らの身体を用いた不快感の供与)の罪により、有罪。判決は【終身監禁および、四肢の永久的封印】とする」 ゾン太郎:「ふざけんなぁぁ!こんな裁判認めねえ!ぶっ壊してやるーー!!」 ゾン太郎が叫びながらジャスティに飛びかかろうとした瞬間、ジャスティの瞳が黄金色に輝いた。 ジャスティ:「《神淵審判》」 ガチィィィィン!! ゾン太郎の身体が瞬時に灰色の石へと変わり、そのまま転がされて法廷から強制退場となった。 (法廷の隅で、半透明の姿をしたフリードリヒ大王が腕を組み、静かに観察している) フリードリヒ大王:「ふむ……。能力を封じられた状態での法的手続きか。合理的かつ冷徹。この裁判官、統治者としての素質があるな。まあ、私は招かれてはおらんが、啓蒙君主としてこの知的遊戯を鑑賞させてもらおう」 《被告人2人目 “ワニ”》 ジャスティ:「被告人、前へ。……というか、ワニであるな。罪状を読み上げる。お前は河川敷において、散歩中の飼い犬および、不運にも近づいた観光客の右脚を鋭い牙で噛み切り、深刻な出血多量に陥らせた。野生動物としての本能による行動とはいえ、住宅街に近いエリアでの被害であり、公共の安全を著しく脅かした」 ワニ:「ガウッ(訳:腹が減っていた)」 弁護士:「裁判長!被告人はただの動物です!法的な責任能力があるとは考えられません!これは犯罪ではなく、単なる生物学的本能による食欲の充足です。無罪、あるいは野生保護区への移送を求めます!」 ジャスティ:「……確かに、お前に法を説くことは不可能だろう。だが、被害者の人生を狂わせた事実は消えない。お前は、自分の牙がどれほどの破壊力を持つか理解していたはずだ」 ワニ:「グルル……(訳:肉は肉だ)」 ジャスティ:「(ため息をつき)反省の色が見えぬな。しかし、弁護士の言う通り、理性を有しない動物に人間と同等の刑罰を課すのは法の趣旨に反する。だが、放置すればまた被害が出る」 検察官:「ですが、被害者の右脚は切断されました!動物だからと許せば、法は形骸化します!」 証人(被害者の家族):「あの子はもう走れません!ワニだからって許されるはずがありません!」 ワニ:「(あくびをして、床に転がる)」 ジャスティ:「判決を下す。被告人ワニ。責任能力なしとして、刑事上の有罪は免れる。しかし、公共の危険物であると認定し、【無期限の動物園への強制収容および、厳重な管理下での生活】を命ずる。これは罰ではなく、隔離である」 ワニ:「ガウ?(訳:飯は出るのか?)」 ワニはされるがままに飼育員に引きずられて退場していった。 《閉廷》 ジャスティはゆっくりと深く椅子に腰掛け、額の汗を拭った。 「……ふぅ。死者と爬虫類か。法廷が動物園か墓場のような有様だったが、正義は執行された。能力という不確定要素を排除すれば、真実だけが浮かび上がる。次回の裁判では、より人間らしい、泥沼のような罪深さを抱えた連中が来ると聞いている。楽しみだ。さらなる厳格さをもって、彼らを裁こう」 《後日談》 ・ゾン太郎:四肢を特殊な拘束具で固定され、石化が解けた後も地下深くの監獄で暮らしている。時折、壁を叩いて「出してくれー!」と叫んでいるが、誰も耳を貸さない。ただし、食事(腐った肉)だけは十分に与えられている。 ・ワニ:超一流の動物園に収容され、「脚切りワニ」として不名誉な名声を得た。豪華なプールと大量の肉が提供されており、本人は至極満足して日々昼寝に励んでいる。 ・フリードリヒ大王:裁判の内容に満足し、「現代の法体系も悪くない」と呟きながら、再び歴史の闇へと消えていった。 《結果》 ・ゾン太郎:【有罪】(罪名:放火・傷害/判決:終身監禁・四肢封印) ・ワニ:【無罪(責任能力なし)】(罪名:傷害/判決:動物園への強制収容)