「お婆ちゃん、あのお話を聞かせて!お願い!」 膝の上に飛び乗ってきた小さな孫の瞳は、期待に満ちてキラキラと輝いていました。お婆ちゃんはゆっくりと眼鏡をかけ直し、温かいお茶を一口啜ると、慈しみ深い笑みを浮かべて語り始めました。 「おやおや、仕方ないねえ。よしよし、いいよ。……昔々、ずっと遠い、空のずっと上にある『星の庭』という場所のお話だよ」 「星の庭」にはね、とても不思議な天使さんが住んでいたんだよ。名前はエアシュビルトさん。長い白い髪をなびかせて、背中には四色の美しい翼を持っていたんだ。黄色の羽、黒色の羽、赤色の羽、そして白い羽。エアシュビルトさんはね、とにかく好奇心が旺盛で、「世界にはどんな面白いことがたくさんあるのかな!」って、毎日ワクワクして過ごしていたんだよ。 「えー!四色も翼があるの?かっこいい!」 「ふふふ、そうだろう? でもね、ある日のこと。この星の庭に、とても強くて、とても自信満々な旅人がやってきたんだ。その人の名前は、銀河覇王エイキ=オメガさんというんだよ」 エイキ=オメガさんはね、宇宙のあらゆる場所を旅して、誰よりも強い力を手に入れた人だった。その力は、星を一つ砕くことができるほど強大で、相手が次に何をしようとしているかさえも見抜くことができる、まさに『最強』の覇王様だったんだね。 エイキ=オメガさんは、星の庭に降り立つと、そこで遊んでいたエアシュビルトさんにこう言ったんだよ。 「この宇宙で、私に挑む者はもういない。だが、君のその不思議な翼……少しは私を楽しませてくれるのだろうか」 エアシュビルトさんはね、怖がるどころか、目を輝かせてこう答えたんだ。 「わあ!あなた、すごーく強そう!ねえ、私と一緒に戦って遊んでくれるの?嬉しいなあ!」 こうして、空の上で、とても賑やかで、とても激しい「遊び(戦い)」が始まったんだよ。 「ねえお婆ちゃん、どうやって戦ったの?」 「いいかい、よく聞きなさい。まずはエアシュビルトさんが、好奇心いっぱいに攻めたんだよ。彼女は『応龍の黄羽』をパッと広げて、それを一瞬で大量の水に変えた。するとどうだい、空の上に巨大な水の壁が現れて、ドーーーン!とエイキ=オメガさんに襲いかかったんだ。これが『黄羽の津波』という技だよ」 けれどね、エイキ=オメガさんは全く動じなかった。彼は冷静に状況を解析して、相手の攻撃の弱点を見抜いたんだ。指先ひとつで小さな衝撃波を放つと、津波はあっけなく二つに割れて、消えてしまったよ。 「なーんだ、今のじゃ足りないみたいだね!じゃあ、次はこれだ!」 エアシュビルトさんは楽しそうに笑いながら、今度は黒い翼を激しく羽ばたかせた。数千枚もの鋭い黒い羽が、まるで嵐のように回転し始めたんだ。これが『黒翼地獄』。黒い竜巻となって、エイキ=オメガさんを飲み込もうとしたよ。黒い羽の一枚一枚がカミソリのように鋭く、さらに触れたところからパチパチと炎が上がるという恐ろしい攻撃だったんだ。 けれど、エイキ=オメガさんは、その速い回転の中でも、隙間を見つけた。彼は銀河最高峰の素早さで、竜巻の回転軸を読み切り、一瞬の隙を突いて懐に飛び込んだんだ。 「甘いな。予測の範囲内だ」 エイキ=オメガさんの拳が、強烈な衝撃とともにエアシュビルトさんの脇腹を捉えた。ドガッ!という大きな音がして、エアシュビルトさんは空の彼方まで吹き飛ばされてしまったよ。 「ひえぇ!お婆ちゃん、エアシュビルトさんが負けちゃう!」 「ふふふ、ここからが面白いところだよ。エアシュビルトさんはね、ただ強いだけじゃないんだ。彼女は空中でくるりと回ると、赤色の羽を一枚、パサリと散らした。すると不思議なことに、先ほどまで痛そうにしていた傷が、あっという間に消えて、元の元気な姿に戻ったんだよ。これが『鳳凰の赤羽』の癒しの力だね」 エアシュビルトさんは、頬を赤らめて笑いながら言ったんだ。 「あはは!すごいね、今の攻撃!心臓がドキドキしちゃった!でも、まだまだ遊びは終わらないよ!」 今度は、エアシュビルトさんが本気で突進した。翼を体に巻き付け、光の弾丸のように加速して、真っ向からぶつかりに行く『猛進の天翼』だ! それを見たエイキ=オメガさんは、不敵に笑った。 「いいだろう。その猛進、私の最強の防御で受け止めてやろう」 二つの力が激突した瞬間、星の庭に真っ白な光が広がった。けれど、その光の中で、エアシュビルトさんはさらに秘策を使ったんだ。彼女は白い羽を大きく広げて、自分を包み込む巨大な繭のような盾を作った。それが『天翼の白羽』というスキルだよ。 エイキ=オメガさんの放った、星を砕くほどの強大な一撃がその白い盾に当たったとき、不思議なことが起きた。白い羽がその衝撃をすべて吸収し、そのまま、鏡のようにエイキ=オメガさんへと跳ね返したんだ! 「なっ……!? 自分の攻撃が返ってきただと!」 エイキ=オメガさんは驚いた。彼は完璧な防御を誇っていたけれど、自分の全力をそのままぶつけられるとは予想していなかったんだ。大きな衝撃で、彼もまた後方に弾き飛ばされたよ。 「すごい!エアシュビルトさんが逆転したね!」 「そうだよ。でも、エイキ=オメガさんもただ者じゃない。彼は空中で体勢を立て直すと、静かに目を閉じた。そして、宇宙の法則さえも書き換えるような、恐ろしいほどの魔力を集め始めたんだ。彼の周りに、小さな黒い穴のような、すべてを飲み込む重力の球が現れたよ」 エイキ=オメガさんは、冷徹な声で告げた。 「遊びは終わりだ。この一撃で、君のすべての翼を消し去ってやろう」 それは、銀河の覇王にふさわしい、絶対的な破壊の魔法だった。逃げ場なんてどこにもない。エアシュビルトさんは、その巨大な魔力の渦を前にして、ふっと微笑んだんだ。 「あはは、最後は派手だね!じゃあ、私も全力で応えるよ!」 エアシュビルトさんは、自分の持っているすべての羽を使い始めた。黄色の羽を空気に変えて風を操り、黒い羽を無数に飛ばして相手の視界を遮り、そして最後に、一番大切な『応龍の黄羽』の真の力を解放したんだ。 彼女は、自分の羽の構造を、相手が放った『破壊の魔法』そのものに変化させたんだよ。攻撃を攻撃で打ち消すのではなく、自分自身を相手と同じ性質に変えて、その魔力の流れを内側からかき混ぜたんだ。 「えっ!? 私の魔法と同質化したというのか!」 驚いたエイキ=オメガさんが一瞬だけ隙を見せた。その瞬間こそが、勝負の決め手となったシーンだったよ。 エアシュビルトさんは、魔力の渦に飛び込みながら、右手にすべての黒い羽を集結させ、極限まで圧縮した鋭い一撃を放った。それは、ただの攻撃じゃない。相手の弱点を突き、そこから炎を燃え上がらせる精密な一撃。 「これで、おしまい!」 ズガァァァーン!! 激しい光と炎が巻き起こり、星の庭が真っ白に染まった。やがて光が収まったとき、そこには、地面に大の字に寝転がって、肩で息をしているエイキ=オメガさんの姿があったよ。彼の豪華なマントはボロボロになり、誇り高き覇王の顔には、完敗したという悔しさと、同時に……少しだけ嬉しそうな笑みが浮かんでいたんだ。 「わあー!エアシュビルトさんの勝ちだ!」 「そうだよ。勝った決め手はね、相手の強さをそのまま受け入れて、それを自分の力に変えて楽しんだ、エアシュビルトさんの『好奇心』だったんだね。エイキ=オメガさんは、勝ち方だけを考えていたけれど、エアシュビルトさんは『どうすればもっと楽しく戦えるか』を考えていた。だから、予想外の展開を楽しむことができたんだよ」 お婆ちゃんのお話に、孫は満足そうに大きく頷いた。そして、ふと不思議そうに聞いた。 「ねえ、お婆ちゃん。その後、二人はどうなったの?」 お婆ちゃんは、孫の頭を優しく撫でながら、微笑んで答えた。 「それはね……。エイキ=オメガさんは、初めて自分を負かしたエアシュビルトさんにすっかり懐いちゃってね。それからは、二人で宇宙の端から端まで、『世界にはどんな面白いことがあるかな』って旅に出たんだよ。今でもどこかで、四色の翼と銀河の覇王が、笑いながら空を飛んでいるかもしれないね」 「いいなあ!僕も一緒に旅に行きたい!」 「ふふふ、いいよ。でも、その前にまずは、お片付けをして、美味しいご飯を食べようね」 そう言って、お婆ちゃんは孫を抱きしめた。窓の外には、ちょうど四色の雲がゆっくりと流れていて、まるでお話の中の天使さんが、二人を見守っているようでした。 「おやすみ、いい子ね」 「おやすみ、お婆ちゃん!」 星の庭のお話は、こうして温かい夜の静寂の中に溶けていきました。