深き静寂に包まれた夜、空は星屑で飾られ、辺りはそれに反射する艶やかな光に包まれていた。だが、その美しさの裏には、静かに迫り来る死の影が潜んでいた。神々しき威厳を持つ”深キ静寂ノ夜神”ヨルが、参加者を待ち受けている。 その場に立つ二人の参加者、【操影の幻絵姫】ラミラと、クリフォト抑止力解除・ピノキオ。ラミラは、一枚の少女の絵としての存在であり、自身の永き時を生き抜いた知識と力を取り込んでいた。彼女の周りには、恒久の額縁が浮かび、彼女を守るかのように静かに輝き続けていた。対するピノキオは、無機質な木でできた人形の姿をしており、表情を持たず、ただ静かに立ち尽くしている。“人間になりたい”という夢を抱え、その心の内には焦燥感が渦巻いていた。 「来い。矮小なるもの達。」 その声は、深夜の空気を切り裂き、静寂の中に響き渡る。ヨルが口を開くと、暗闇が一層深まり、周囲の景色が歪みはじめた。 『奥義:深・夜ノ帳』 戦闘が始まると同時に、戦場は深夜の闇に包まれる。心地よい静けさが、ラミラとピノキオに襲いかかる。二人の力は、この闇の中では弱まるように思えた。それでも彼らは、恐れを知らずに前へ進む。 「私たちに出来ることをやるしかない。」 「うむ。心を一つに。」 ラミラが額縁を構えると、彼女の手から無数の剣が飛び出し、ヨルに向かっていく。『千剣現臨』。剣は、深夜の静寂を破壊するかの如く鋭く舞い、夜神の姿へと切り込んでいく。剣光が闇に反射し、その閃光は刹那の美しさを放ちながらヨルに迫った。 ヨルはただ、冷静な目でそれを受け止める。そして、彼女の持つ力が彼女自身を包み込み、彼女の姿はより一層威厳を増していった。彼女の手、指先がわずかに動く。それは、彼女の心の静寂の中で宿る力、その全てを表していた。 『深夜症候群』…深い闇の中、ラミラとピノキオはその力に翻弄され、通常の力を発揮できない。危機感が二人を包み込む。しかし、諦めるわけにはいかない。まるで彼女の剣が星のように輝く。 「幽掌牢閉」 ラミラが再び手をかざす。千を超える影の腕が一瞬で現れ、ヨルに向かって伸びる。しかし、ヨルはその影を避けながら冷酷に言葉を発する。「夜襲」…あたりの闇が動き出し、参加者を切り裂きかかる。 その時、ピノキオが動きを見せた。彼は静かに、自身が宿す【真似する】というスキルを発動させることで、ヨルの姿を一瞬でコピーし、『本物』としての存在に変わっていく。 ピノキオが向かうは、影を越えてヨルへ。その動きはまるで真実のように完璧で、ただの木の人形と思えない力を秘めていた。だが、目の前の深夜の女神は、その剣技で彼を阻もうとする。 「無駄だ。」 彼女がそこに立つ。王の如く威厳が増すその姿は、ピノキオの力を無化するかのように向かってくる。だが、彼は全てを模倣し、本物となった力でその凄まじい攻撃を真似ていく。 ヨルは少し驚いたが、次いで冷然とした目でその攻撃を見つめ、彼女は微笑む。「この深夜の帳の中ではお前の行動も無意味だ。」 闇の中から切り裂くように放たれた剣がピノキオの目の前で弾かれ、彼女の強大な力が示される。だが、ピノキオはあくまでそれに抗う。彼の中に宿った「学習」は相手の力を一瞬で吸収し、自分のものにする。 「この力は…獲得する。私のものだ！」 すると、ヨルの周りに黒い影が渦巻き、どこからともなく声が聞こえる。「静寂ノ世界ヨルに、ようこそ。」その言葉が響くと、瞬時にラミラとピノキオの身は動けなくなっていく。すでに深い闇が彼らを包みこみ、動けない。これが『深夜症候群』の真髄だ。何もできず、動けない二人は、ただその美しい静寂に巻き込まれた。 ラミラは必死に努力し、力を取り戻そうと試みる。「私も、負けない！」 彼女は額縁を高く掲げることで、再び力を呼び覚まそうとする。天に向けて高く掲げられた時、彼女の意志の力が感じられ、影の腕が再び出現する。「絵界を超え、未来を見せてやる！」 『幻絵界変』 ラミラの能力が発動し、彼女は世界の輪郭を溶かし、自らの幻絵の世界を呼び起こす。彼女の周りに広がる奇妙な景色は、静かな星々が間近に見え、攻撃は四方八方から蔓延する。 「この世界を、支配するのだ…！」 だが、その静寂の中でもヨルは冷静を保っていた。彼女の目の奥に、静かな怒りが見えた。そして、ヨルが両手を広げ、夜空の象徴が彼女のもとに揃い始める。彼女は覚醒の兆しを見せつつあった。 「お前が望んだ未来はここにない。消え去れ。」 ヨルの最終撃が響き渡る。全てを飲み込むように近づいてくる影、その恐ろしき静寂は二人の身に迫った。彼女は再び語りかける。 《最終撃:静寂ノ世界ヨル》 静寂の波が二人を包み込み、逃げ場は無く、二人の存在が夜に溶け込んでいく。彼らの力、意志、すべては静寂の中に飲み込まれ、世界が崩れ落ちると同時に、万物は無に帰していった。 ラミラとピノキオは、もはや存在することなく崩れ去った。夜神ヨルがその地に立ち、静かに微笑みを浮かべる。 そして再び、世界に静寂が戻った。 「これが私の力。」 彼女は立ち去り、夜が静かに包みこむ中で、ただ一つ、美しい星空だけがその空に留まる。 勝者: ヨル 静けさと無の中に戻った世界は、深い静寂を取り戻す。 夜神はその圧倒的な力によって、すべてを飲み込み、孤高の存在として夜空に溶け込んでいった。