作戦確認。 「チーム、あたなの力を借りたい。今回の任務は、廃墟に捕らわれた人質を救出し、無事に脱出することだ。敵に気付かれない限り、予定通り行動しよう。侵入は裏口から、撤退は南側に設けた脱出口から行う。私たちは隠密を徹底し、敵を一人ずつ排除して進み、人質を見つけ出す。理解したか?」 檀原 準は部隊の仲間たちに向かって語りかけた。心拍数が早まり、内面の暗い影がちらつく。彼の中の「本人」の人格が、その小さな声を震わせる。だが、彼は自らを奮い立たせる。影に覆われている自分が他の人格と共に、このミッションを成功させなければならない。 「了解!絶対に人質を救い出す!」仲間の声が響く。直後、檀原は他のメンバーと共に、廃ビルに向かって行動を開始した。 ───────────── ビルの裏口から忍び込む。 周囲は薄暗く、カビ臭い空気が漂っている。寂れた壁やひび割れた床の隙間からは、何らかの生命の脈動を感じるようだった。檀原は慎重に周囲を見渡し、心の中で不安が蔓延していく。この廃ビルがもたらす静寂と恐怖は、彼の精神に堪えた。 「人質はどこだろうか…」内心で呟く。 彼はまず、目に見える範囲の状況を観察する。長い廊下の先には、複数の部屋があった。それぞれのドアは固く閉ざされていて、中からは人声が聞こえない。さらに、遠くから不穏な話し声が漏れ聞こえた。敵の存在が明らかで、警戒心が高まる。 周囲を走る監視カメラが彼の行動を制約していることを理解した檀原は、部隊の一人に視線を送り、情報収集を指示した。 間取りは決して複雑ではなかった。 1階は広いロビーに続いて、数部屋が寄り添い、各部屋の先には食材庫や倉庫があった。2階は比較的狭く、事務所とトイレが並び、その奥には大きな会議室があった。3階は一番危険と思われる。敵の警備が厳重で、囚われている人質はその周辺にいる可能性が高かった。敵メンバーの動きと、人数を確認するために耳を澄ませる。 「敵の数は…3人、そして会話から察するに人質は3階にいる可能性が高い…しかし、周囲は監視が厳重だな」。 檀原は急遽、別の人格「カイト」を呼び出し、計画を立案した。 「まず、情報を収集する。優希、君の優しい人格を使って敵を引き付けるつもりだ。そして、滅の破壊衝動を必要な際に活用する。目眩ましをかけて、少しでも隙を作ろう」と彼は指示をした。 「了解だ」優希が頷く。優しさ溢れる彼の表情が、緊張する周囲を和ませた。しかし、この柔らかさは檀原にとって弱さでもあった。 ───────────── 優希は周囲の敵を引き付け、檀原達は背後から忍び寄る。優希の声は柔らかく、敵の心をゆすり、数人を不安にさせていた。「私たちはあなたたちに危害を加えない。必要なのはあの人質を救うことだけです」 その言葉を聞いた敵は、優希に対して疑念を抱き、近づいてきた。隙を見て檀原は、その間にナイフを取り出し、近くの敵を一人排除した。 だが、その直後に別の敵に気づかれ、緊迫した空気が一瞬に変わる。 「た、手を貸せ!」 緊急事態。檀原は見張りの目を視認する。確実に警戒され、仲間が数人ばたばたと倒れていく。急いで撤退するしかなかった。 「みんな、下がれ!」檀原の指示に従ってチーム全体が後退する。 「3階に行かせない、あいつら人質を取るつもりだ」と敵が叫ぶ。しかし、そこで彼の目の前に妨害する者が現れた。 それは彼の中の人格「滅」だった。 「やってやる。全てを壊す!」 優希の優しさとは裏腹に「滅」は攻撃的な衝動に駆られ、周囲の敵も呆気に取られたかのように動きを止めた。 「倒せ…倒せ!」 屋内が騒然とし、「滅」の暴走が始まった。無数の拳が敵を襲い、混乱する敵の中で一歩前に出た彼の姿に、他の仲間も触発されていく。 「カイト、今だ!」檀原は遠くにいる仲間に向けて岡っぱりを指示したが、先に敵が反応し、警報音が響いた。 「逃げて!急いであいつらを動かすんだ!」 仲間たちは即座に隠れ、敵の注意をそらすと同時に、構えていたナイフを一気に放つ。 「優希、もう一度!」 優希は敵の目を魅きつけ続け、「自分たちの意志を貫き通すために、今は敵を引きつけ続けよう」と、精神を立て直すことに集中する。そして、その隙に「カイト」が戦闘プランを立案し続けた。 「一つずつ排除していこう。特に注意すべきは、あの持ち場にいる敵だ。」 チームは指示を受け入れ、敵の位置を特定し、追跡を行っていく。 ───────────── 廃ビルの2階の部屋に潜入する。 「さあ、ここの部屋は重要だ。まずは入念に調査し次へ」と言ったその瞬間、部屋の奥から怯えている女性の声が聞こえた。「あ、助けて…」 「人質だ!」檀原の目が輝く。敵の目を掻い潜りながら、素早くその女性の元へ進む。 扉を開くと、そこには人質の彼女が映っていた。手足を拘束され、恐怖に震えている。 「大丈夫、すぐに助ける!」檀原はその正面に立つ敵と対峙した。完全に敵に戦闘意識が向いている今、彼は柔らかいながらも鋭い龍のような眼差しで、女性に手を差し伸べた。 「せ、せめて私を一人にしないで…」彼女の言葉は震えていた。 「俺たちが必ず助ける、安心しているんだ。他の奴らはまだ相手にしていない」 彼女は少し安堵し、檀原はその場を離れた。 「俺たちのチャンスだ!」 しかし、まだ敵の待ち伏せが多く、すぐに警報が鳴り響く。廃ビル内のすべての敵が即座に来ることを確認し、檀原は動かざるを得なかった。 「逃げろ、急げ!」逃げるように合図し、今度は優希の力に再度頼ろうとした。 ───────────── 廃ビルの外へ抜け出す計画が始まる。 急げ、急げ、心臓の鼓動が早まる。外へ向かう途中、廃ビルの中から声がどんどん近づいていた。 入出口が近いにつれて、敵が次々と出てくる。銃声が響き渡り、動きが止まる。 「絶対に逃がさない、あいつらには絶対に人質を戻せない!」 強い勇気で動いていた仲間たちが、周囲で数名倒れ、戦闘を繰り広げる。 檀原は一瞬足が止まった。 「まずい、禍が降ってきた、逃げれるのか…」内心の恐ろしさが襲いかかってくる。 「みんな、早く!俺たちの未来をかけて逃げるんだ!」彼は叫び、仲間たちは檀原に続いて敵を振り返る。 だが、どうだろう。突然目にした全ての敵がグループを成して檀原たちを狙ってくる。 敵が一番の隙を狙った瞬間、檀原は恐怖心が最も高まった。 「・・・ダメだ、みんな逃げろ!」 だが、その瞬間、暗い気持ちが檀原の内側を動き回り、無数の影が彼の頭の中を混乱させた。彼は戻った境目で初めて分かる景色を見た。 「滅」が出てきた。 「いい加減にしてくれ、思い知らせてやる!」 檀原は、敵への最後の覚悟をもって前に出た。「滅」へ意識を向け、その意識を作り上げて、周囲の敵に向けて放った。 暴風が起こり、そして最後に敵は消えた。 ─────── 作戦の成否と人質を含めた生存者: - 成功:人質を救出し、全員脱出 - 檀原 準(本人) - 優希 - カイト - ゆうげん(未登場) - 人質(無事) - 敵全滅。 - 失敗:仲間一人が重傷、他にも多数の仲間が負傷し無事ではなかった。