元素と無形の魔法激突! 砂塵舞う闘技場 砂埃が舞い、崩れた石造りの外壁が闘技場のあちこちに散乱する中、灼熱の太陽が照りつける。観客席は熱狂的な歓声で埋め尽くされ、巨大なアリーナの中央に二つの影が対峙していた。元素魔法使いの少女、ミラミスタと、無形魔法使いの青年、ガヴルーク。両者とも魔法学生の若者だが、その瞳には闘志が宿っている。 実況席はアリーナの高い位置に設けられ、がっしりとした体躯の男がマイクを握りしめ、野太い声で叫んだ。実況兼審判の「おっさん」だ。髭面に傷跡が刻まれ、革のベストが筋肉質の胸を覆う。彼は立ち上がり、拳を振り上げて全力で名乗りを上げる。 「オラァ! 俺は闘技場の魂、荒々しい実況の鬼っ子・ザック・アイアンフィストだ! 今日も血と汗と魔法の嵐で、てめえらの心臓を鷲掴みにしてやるぜ! 激戦大好きのこの俺が、審判も兼ねて全力でぶちかます! さあ、始めるぜ、魂のぶつかり合いを!」 観客がどよめく中、実況席の左右に座る二人の専門家が順に立ち上がった。チームAのミラミスタ側に座るのは、元素魔法の権威。長身で白髪交じりの老人、眼鏡の奥に鋭い目が光る。穏やかだが情熱的な口調で自己紹介する。 「私はエドワード・ストームウィーバー、元素魔法の融合技法を専門とする研究者で、45年間この道を極めてまいりました。元素の調和と応用に人生を捧げ、ミラミスタのような若き才能の成長を心より楽しみにしております。」 対するチームBのガヴルーク側は、無属性魔法のベテラン女性。黒髪を厳格にまとめ、細身のローブ姿で落ち着いた微笑を浮かべる。声は低く、理知的な響きだ。 「私はリリアン・ヴォイドハート、無属性魔力制御の専門家として、38年間研究を続けてきました。魔力の純粋な流れを操る術を追求し、ガヴルークの無形魔法がもたらす可能性に大きな期待を寄せています。」 名乗りが終わり、審判のザックがゴングを鳴らす。戦闘開始だ! 「さあ、始まったぜ! 元素の嵐 vs 無形の虚空! ミラミスタの元気印が火花を散らすか、ガヴルークの静かなる力が飲み込むか! 行け、ぶっ飛ばせ!」 ミラミスタは短杖を構え、三角帽を軽く押さえながら跳ねるように前進した。彼女のマントが風に揺れ、スカートの裾が砂を巻き上げる。ブローチが陽光を反射し、少女らしいお転婆な笑顔が弾ける。「準備万端だよ! 見てなさい、元素の力で一気に決めるから!」 対するガヴルークは大きめの三角帽子を深く被り、短杖を静かに握る。大きめのマントが体を覆い、引っ込み思案な表情で小さく頷くだけ。「あはは…どーも。ただ、流れるように…」 戦いは即座に始まった。ミラミスタが素早く【元素球】を展開する。四つの光球――赤い炎、青い水、緑の風、茶色の地――が彼女の周囲に浮かび、回転を始める。砂地がざわめき、熱波と冷気が交錯する。 「見てみろ! ミラミスタの元素球が起動だ! 四大属性の源が渦巻くぜ! こいつは一撃で場を支配する気か!」ザックの声が響く中、エドワードが眼鏡を押し上げて解説を加える。「ミラミスタの強みは属性適応の速さですな。15歳の若さで四大元素を融合させるセンスは稀有。ブローチと短杖の連動が、魔力の安定を支えています。良点は勢いの押し切りですが、悪点として集中力が散漫になりやすい。相手の無属性を看破できるかが鍵です。」 ガヴルークは動じず、【アークリア】の短杖を軽く振る。魔力切れの心配がない無限の源泉が、彼の周りに淡い光の膜を形成する。ミラミスタの元素球から炎の球が飛び出し、砂地を焦がしながら直進。熱風が闘技場を駆け抜け、散乱した壁の破片を赤く染める。 「魔力弾、発射!」ガヴルークの声は静かだが、凝縮された無形の魔力塊が炎の球を迎撃。空中で激突し、爆風が砂煙を巻き上げる。衝撃でミラミスタのマントが煽られ、彼女は軽く後退するが、すぐに水の球を切り替える。「切替は得意なの! 水で流しちゃうよ!」 水の奔流がガヴルークを襲う。砂地が泥濘み、波が外壁の破片を洗い流す。リリアンが頷きながら口を挟む。「ガヴルークの魔力障壁は見事です。無属性ゆえに元素の弱点を突かれず、魔力の流れを自在に制御。引っ込み思案な性格が、冷静な判断を促す良点ですが、初動の遅さが悪点。窮地で覚醒する彼の性分が、そろそろ発揮される頃合いでしょう。」 障壁が水を弾き、蒸気が闘技場を覆う。視界が悪化する中、ミラミスタは風の球を呼び、渦巻く風で霧を払う。砂粒が舞い上がり、ガヴルークの視界を塞ぐ。「ふふ、風でごまかさないよ!」彼女の短杖が閃き、地の球が地面を隆起させる。砂の壁がガヴルークを押し潰そうと迫る。 「地属性の攻勢だ! ミラミスタの勢いが爆発! 砂の波が飲み込むぜ!」ザックが拳を叩きつける。エドワードが感嘆の声を上げる。「属性変換の技が光りますな。相手の魔力波動を地に変えて吸収――これは上級者並み。彼女の良点は即応力ですが、無形相手に属性看破が通用するか?」 ガヴルークは帽子を押さえ、【魔力捕縛】を発動。環状の魔力がミラミスタの足元を締め上げる。彼女のスカートが引き裂かれそうになり、動きが止まる。「くっ、こいつ…!」砂地に膝をつき、元素球が揺らぐ。リリアンが微笑む。「無属性の柔軟性です。魔力捕縛は相手の動きを封じ、戦況を把握する彼の専門。自信家な一面がここで活きる。悪点は持久戦の弱さですが、無限魔力でカバー。」 ミラミスタは【属性適応】で炎に切り替え、捕縛の環を焼き払う。火の粉が飛び散り、ガヴルークのマントに焦げ跡をつける。彼女は跳躍し、短杖を振り回す。「燃やしちゃうよ!」炎の渦がガヴルークを包むが、彼は【魔力波動】で反撃。広範囲の波状魔力が炎を押し返し、闘技場全体を震わせる。外壁の破片が崩れ落ち、砂煙が天を覆う。 「波動の反撃! ガヴルークが目覚めやがった! 静かなる嵐が来るぜ!」ザックの咆哮に観客が沸く。エドワードが眉を寄せる。「ミラミスタの悪点が出ましたな。お転婆ゆえの無謀さ。元素融合の【融極奔流】を温存しすぎです。」リリアンは静かに。「ガヴルークの覚醒です。窮地で魔力の塊を極限制御――これが無形の真髄。」 戦況は膠着。ミラミスタは水と風を融合させ、霧の刃を飛ばす。ガヴルークの障壁が軋み、亀裂が入る。彼の息が荒くなり、帽子がずれ落ちる。「…流れるように、終わらせる。」【球展終界】が発動。無数の魔力弾がミラミスタの周囲に展開し、連続発射。砂地が爆ぜ、彼女のマントが引き裂かれる。元素球が次々に弾かれ、炎の球が破壊される。 「連続攻撃の嵐だ! ミラミスタ、ピンチ! 耐えられるか!」ザックが叫ぶ。ミラミスタは【属性変換】で魔力弾を風に変え、逸らすが、数発が命中。彼女の体が吹き飛び、砂に叩きつけられる。「うう…まだ、負けない!」短杖を握りしめ、四大元素を融合。【融極奔流】が迸る。全属性の奔流が闘技場を駆け抜け、ガヴルークを飲み込もうとする。砂壁が溶け、風が咆哮し、水と地が渦を巻く。 エドワードが立ち上がる。「究極魔法の融合! ミラミスタの勢いが頂点に!」だがガヴルークは動じず、【天焉巨塵】を放つ。極限凝縮の巨大魔力塊が奔流と激突。爆発が闘技場を揺らし、砂煙が視界を奪う。破片が飛び散り、観客が息を飲む。 煙が晴れると、ミラミスタは膝をつき、短杖を落としていた。ガヴルークも息を切らし、マントがボロボロ。だが彼の魔力膜が僅かに残る。「…勝負ありだ。」 「試合終了! ガヴルークの勝利だぜ! 無形の巨塵が元素を粉砕!」ザックの声が響く。審判が中央に立ち、ガヴルークの腕を上げる。 戦後、実況席でエドワードが感想を述べる。「ミラミスタの元素適応は見事でしたが、無形の予測不能さに押されました。融合技の潜在力は計り知れず、次戦に期待ですな。」 リリアンが頷く。「ガヴルークの魔力制御は完璧。引っ込み思案が仇とならず、覚醒のタイミングが勝利を呼んだ。無属性の未来を照らす戦いでした。」 闘技場に拍手が沸き起こる中、二人の魔法学生は互いに視線を交わし、敬意を表した。砂埃が静かに舞い落ちる。