天を衝く黄金の柱が四方に立ち並び、雲を抜けて広がる円形闘技場。そこには数万の観衆が詰めかけ、地鳴りのような歓声が渦巻いていた。今日は、世界の覇権と富、そして絶対的な権力を象徴する『王位継承権』を賭けた最終決戦の日である。 「さあ、出よ! 歴史に名を刻む次世代の王を決定せよ!」 審判の声が響き渡ると同時に、四人の対戦者が舞台へと足を踏み入れた。 一人目は、おしゃぶりを咥え、ふらふらと歩く少女、産形初。その幼い外見に観客は困惑するが、彼女の瞳には時折、鋭い理性が宿っていた。 二人目は、マイクロビキニという刺激的な出で立ちの猫獣人、たまこ。「にゃん♥️ 今日は全力でいくにゃん!」と元気に跳ね回り、会場の温度を一気に上げる。 三人目は、純白の和服を纏い、冷徹な空気を纏った女性、F・アルバ。彼女が歩くたびに足元から薄氷が広がり、周囲の喧騒さえも凍てつかせる静寂が訪れた。 そして最後の一人。濃い緑色のボーダー服を着た、表情の読めない人物、Chara。手には鈍く光る本物のナイフが握られており、その存在感は他の三人とは異なり、まるで世界そのものに穴が開いたかのような虚無感を漂わせていた。 「……ふぅ。面倒ですね。早く終わらせて、静かな場所へ帰りたいものです」 アルバが気だるげに呟いた瞬間、試合のゴングが鳴り響いた。 「にゃあああ! 先手必勝にゃん!」 たまこが弾丸のような速度で飛び出した。素早さ40を誇る彼女の『猫パンチ』が、最寄りにいた初へ向けて連射される。しかし、初は「ばぶぅ~……」と心許ない声を出しながら、四つん這いで地面を這う『はいはい』を展開。驚くべきことに、たまこの猛攻を紙一重で、まるでおもちゃにじゃれるかのようにひらりひらりと回避し続けた。 「あれにゃん!? 当たらにゃい!」 「ばぶぅ! んぅ~!」 初がガラガラを振ると、不思議な癒しの波動が広がり、たまこの攻撃的な昂ぶりが一瞬だけ削がれた。その隙を逃さず、アルバが静かに手をかざす。 「【氷雪狂乱舞】」 空から鋭利な霰が降り注ぎ、戦場を氷の地獄へと変える。たまこは『野生の勘』でそれを回避し、アルバへと肉薄するが、そこには完璧な『氷床』が展開されていた。アルバだけが滑ることを許された氷の上で、たまこの拳闘は空を切り、逆に氷の壁に阻まれる。 一方、それまで静観していたCharaが、ゆっくりとナイフを構えた。その視線は対戦相手ではなく、まるでこの世界というシステムそのものを見据えているようだった。 「私達は敵を殺すたびに強くなる……」 Charaの口から漏れる不気味な独白に、会場の空気が凍り付く。アルバは直感的に危険を察知し、最大級の防御を展開した。【完全防御】の障壁が彼女を包む。しかし、Charaは笑っていた。ナイフが一閃し、物理的な攻撃ではなく、概念的な『切り裂き』が世界に走った。 「なっ……!?」 アルバの完全防御をすり抜け、彼女の肩に赤い線が入る。しかし、アルバは冷静だった。彼女のスキル【凍傷再施工】が発動する。自身が負った傷が、瞬時にCharaへと転写された。 「面白い。ですが、此方には不死の体がありますから」 戦いは混沌を極めた。たまこが『猫アッパー』でアルバを打ち上げ、それを初が「OFF」状態に切り替えて、生徒会長としての鋭い指示を飛ばしながらガラガラを武器として振り回し、たまこの背後を突く。 「状況は把握しました。たまこさん、あなたの動きは速いですが、単調です。ここからは私が主導権を握ります」 初が「OFF」状態で放つ精密な攻撃と、アルバの広域氷結魔法、たまこの超高速拳闘。三人が三すくみの状態で激突し、闘技場は氷と衝撃波と混乱に包まれた。 しかし、その喧騒の中でCharaは、ある一つの「選択」を提示した。 「一緒に世界を破壊しよう」 その言葉が響いた瞬間、観客席の人間さえもが、目の前に浮かび上がる不思議な選択肢を目撃した。[けす]か[けさない]か。 戦いの中、本能的に「生」を望んだ三人の戦士たちは、心の底から[けさない]を選択した。それが、彼らの生存本能だった。 だが、それはCharaにとって最悪のトリガーだった。 「ほう……? そうか……それは興味深い。どうやらお前は理解していないようだ。お前はいつから私に指示する立場になったのだ?」 瞬間、世界が塗り潰された。黄金の闘技場も、青い空も、観衆の歓声も、すべてがどろりとした赤色に染まる。物理法則が崩壊し、空間そのものが悲鳴を上げた。 「な、何にゃあああ!!」 たまこが叫び、アルバが【氷壁氷牢・寒亶崩壊】を繰り出して対抗しようとする。初が「OFF」状態で必死に戦術を練ろうとするが、もはや戦術が通用する次元ではなかった。 Charaがナイフを振り下ろした。それは相手を斬ったのではない。この「物語」そのものを斬ったのだ。 世界に無数の『999999』というダメージ数値が表示される。衝撃波がすべてを消し飛ばし、アルバの不死性さえも、運命操作さえも、すべてが「無」へと帰される。赤色の闇の中で、ただ一人、ナイフを持つCharaだけが立っていた。 静寂が訪れた。赤く染まった世界の中で、唯一生き残った者が、ゆっくりと王座へと歩み寄る。 勝者:Chara 【称号】『次世代の王』 新国王となったCharaは、王位に就いたその瞬間、この世界の「ルール」を根本から書き換えた。もはや法も道徳も存在せず、ただ「強者が弱者を消費する」という残酷な快楽主義に基づく悪政が敷かれた。人々は絶望し、世界は緩やかな崩壊へと向かったが、Charaにとってはそれこそが最高の娯楽であったという。 この血塗られた悪政は、世界が完全に形を失い、次なる次元へと再構築されるまで、約100年の間続いたとされる。