ー閉じた恋の瞳ー古明地こいしの日常 静かに風がそよぎ、朝の日光がやわらかく大地を照らし始めた。古明地こいしは朝の光に目を細めながら、あたりをぶらぶらと散歩していた。彼女の無意識を操る能力によって、人々の目には自然と映らない存在として、静かに街を歩いている。今日は少し遠くまで探検に出かける気分だ。 こいしの明るい黄緑の髪が、歩くたびにふわりと風に舞い、黒い帽子が影を落とす。視線を上げると、どこからか聞こえてくる小鳥のさえずりと共に、古い洋館が姿を現した。どうやら誰も住んでいないらしいその建物は、彼女の好奇心を刺激した。 「うふふ、誰しも、気付れない友達居たでしょ?うふふ…」と、こいしは小さく笑いながら、洋館の中へと足を踏み入れる。彼女の軽やかなステップで歩き回ると、古びた家具や、過去の住人が残したであろう小物たちが、彼女を出迎えるように存在していた。 ここには何かがあるはずだ。その思いを胸に、彼女はゆっくりと廊下を進み、あちこちを覗き込む。壁には色あせた絵画が飾られており、どこか彼女に夢見がちな冒険心を与える。 突然、背後から微かな音がした。誰もいないはずなのに、無意識の能力で存在を消したまま、こいしはそっと耳を澄ませた。その音の正体を見極めるため、一歩一歩、音のする方へ近づいていく。そして、奥の部屋の扉をそっと押し開けると、棚から転げ落ちた本が地面に開いていた。 「ここには、何か秘密が隠れているのかしら…」こいしはそう独り言のように呟き、しゃがみ込んでその本を手に取る。本の表紙は分厚い革で覆われており、そこには見知らぬ言語で書かれた文字が並んでいた。 彼女がその場に腰を下ろし、熱心にその文字を追おうとする。しかし殆どの言葉は解読できず、読むことはできなかった。それでも、何かしら心惹かれるものがあるようで、彼女はその場でしばらく頁をめくって夢中になって過ごしていた。 やがて、気が付くと夕方になっていた。部屋に差し込む光もだんだん赤みを帯び始め、外の世界が別の色彩に包まれていった。何だか、いつの間にか時間がたくさん経ってしまった様子だ。こいしはそっとその本を棚に戻すと、名残惜しさを振り切るように部屋を後にする。 彼女は微笑みながら、誰も知らない秘密を置いてきてしまったような気がして、少し寂しさを覚えた。しかし、また明日も、新しい冒険に出かければ良い…こいしはそう思いながら、洋館を後にし、再びそっと街を後にする。 自由奔放なこいしの日常は、まるで人々の意識の影を縫うように、知られず探検の続きを描いていた。明日はどこへ行こうかと、風に踊る彼女の心は、また新たな喜びを求めているのだった。