【完理-熟読玩味】 天知 シオン ボ/‐ "ただの死体" 【壊滅的な運転手】今人 火射田路 ロードランナー N筋 明日の犠牲者はこの方です。おやすみなさい 静寂がすべてを支配していた。戦いという概念すら消し飛んだ、色のない空白の空間。そこに集められた強者たちは、互いの能力をぶつけ合う暇もなく、得体の知れない「何か」に包まれていた。 最初に異変に気づいたのは、誰よりも鋭い感覚を持つ者たちだった。しかし、その気づきは絶望への入り口に過ぎない。空気の密度が変わり、肺に吸い込む酸素が次第に重く、冷たい泥のように感じられ始めた。視界の端から、黒い染みがじわりと広がっていく。それは影ではなく、意識を塗り潰そうとする深い眠りの誘いだった。 抗おうとする意志はあった。不撓不屈の心を持つ者、物理法則を筋肉でねじ曲げる者、運命を書き換える者。だが、彼らが拠り所にしていた「力」が、ここでは全く意味をなさない。まるで、電源を切られた機械のように、あるいはページを閉じられた物語の登場人物のように、彼らの存在そのものが強制的に停止させられていく。 一人、また一人と、膝をついた。抵抗する声すら出ない。ただ、心地よいはずの眠気が、逃れられない鎖となって精神を縛り付ける。彼らは気づいた。この空間にいるのは自分たちだけではない。目に見えない、形のない「観測者」が、彼らが絶望と共に意識を失う瞬間を、愉悦に浸りながら眺めていることに。 最後の一人が、ゆっくりとその瞳を閉じた。意識の断片が闇に溶け込み、深い闇の底へと沈んでいく。そこには勝ちも負けも、栄光も屈辱もなかった。ただ、底知れない虚無だけが広がっていた。 【おやすみなさい】 勝者なし