第一章:絶望の接客・コラプスの静寂なる狂騒 チームAのレジ担当に配属された堕天使コラプスは、その絶望的な表情のまま、押し寄せる客の波に立ち向かっていた。かつて神にまで届く力を持っていた彼にとって、地界の喧騒はあまりに矮小で、しかし同時に耐え難いほどに煩雑である。白髪を揺らし、赤眼に諦念を宿しながら、彼は機械的に注文を聞き、会計を済ませる。しかし、客は絶え間なく押し寄せ、店内に充満するピザへの欲望は、もはや暴徒に近い。彼はもはや魔法を使えないが、その「因果に逆らう」経験は、意外にも接客において機能していた。絶妙なタイミングで客の流れを断ち切り、最短距離で会計を捌くその姿は、まるで戦場で敵の急所を穿つ剣客のようである。 だが、彼の本当の苦行はそこからだった。調理担当から回ってきた熱々のピザを、店内の客席まで運ぶ。朽ちた黒翼は狭い店内で邪魔になり、割れた天使輪が照明に当たって不気味に光る。客にピザを差し出す際、彼は感情の欠落した声で「お待たせしました」と呟くが、その目は虚空を見つめていた。あまりの忙しさに、彼は思わず腰に差した『ソル』に手を伸ばしそうになる。この因果を断ち切れば、この行列も消えるのではないか。しかし、彼は地界の監視員としての矜持か、あるいは単なる諦めか、ただ黙々とピザを運び続けた。彼にとってこの激務は、天界での疎外感に比べれば、心地よいほどの地獄であった。