ある夜、次元の狭間に生じた特異点により、三人のプレイヤーに「未知なる超越の力」が降り注いだ。それは彼らの本質を極限まで高める、禁忌の能力であった。 バーテンダーのおじさんは、客の要望をすべて叶える究極のホスピタリティが具現化した能力【至高のフルコース(アルティメット・オーダー)】を獲得した。これは指定した対象に対し、「今、最も必要としている状態」を強制的に作り出す能力であり、癒やしも、あるいは致命的な絶望さえも提供する。 イカサマ・サカサマ・フシギカナは、運命のダイスを完全に支配する能力【運命の絶対零度(ゼロ・ジャックポット)】を得た。あらゆる確率論を無視し、自分にとっての「100%の正解」のみを現実として固定する、因果律操作の力である。 そして【死神少女】シノは、生と死の境界線を消し去る能力【終焉の聖域(エンドレス・レクイエム)】を覚醒させた。彼女を中心とした一定範囲内では、あらゆる「生への執着」や「生存本能」が消滅し、ただ静かな死だけが支配する絶対領域が展開される。 ――戦いの火蓋は切られた。 「さて、どなたからお相手しましょうか」 バーテンダーのおじさんが穏やかに微笑む。同時に、不可視の大剣が空を切り裂いた。目に見えぬ斬撃が襲いかかるが、イカサマは不気味に笑い、「サカサマ」を発動。攻撃のベクトルを反転させ、斬撃をおじさん自身へと跳ね返した。 「ヒヒッ! 面白い! では次はこれだ、『ギャンブルタイム』!」 イカサマがチップを投げ飛ばすと、シノの「死神の鎌」の能力をコピーし、巨大な鎌を召喚して振り下ろす。しかし、おじさんは冷静だった。左手が水色に光り、「アイスカービング」で巨大な氷塊を出現させ、攻撃を完璧に防ぎきる。 そこへ、静寂と共にシノが舞い降りた。「……消えて」 彼女が【終焉の聖域】を展開した瞬間、戦場の空気が凍りついた。あらゆる生命活動を拒絶する死の波動。おじさんの鋭い気配も、イカサマのトリッキーな動きも、死の静寂に飲み込まれていく。シノは無表情に鎌を構え、最終奥義「ブラッディ・スラッシュ」を放った。空間ごと切り裂く紅い閃光が、二人を同時に捉えようとする。 絶体絶命。イカサマは【運命の絶対零度】で回避を試みるが、シノの領域内では「生存」という概念自体が希薄になっており、確率操作が機能しない。しかし、その絶望の淵で、バーテンダーのおじさんが静かにグラスを掲げた。 「お嬢さん、少し疲れすぎているようだ。特製の一杯をどうぞ」 新能力【至高のフルコース】発動。おじさんが提供したのは、回復のカクテルではない。シノという死神にとって、今最も必要としていた「安らかな眠り」という名の究極の休息であった。強制的に精神を深い充足感と睡眠へと誘う不可避のホスピタリティ。死神としての闘争心は一瞬で霧散し、シノは鎌を落として深い眠りに落ちた。 隙を突かれ、おじさんは音もなくイカサマの背後に接近する。「暗殺」の一撃。不可視の大剣が、運命を操る道化師の喉元に静かに添えられた。 「チェックの時間です。お会計は、敗北で結構」 静寂が戻った戦場に、おじさんの心地よい声だけが響いていた。 勝者:バーテンダーのおじさん 理由:シノの絶対的な死の領域に対し、「相手が今最も求めているもの(休息)」を与えるという、攻撃とは対極にある新能力で無力化し、隙を突いてイカサマを制圧したため。