深夜の静寂に包まれた、古色蒼然とした巨大な屋敷。そこは贅を尽くした調度品が並び、空気さえも金貨の匂いが漂うという伝説の「黄金の迷宮」であった。そこに足を踏み入れたのは、あまりにも不釣り合いな5人の一行である。 知的な眼差しを光らせる学者ティアナ。至る所でくっつき合っている磁力女子高生の恵周子と恵主子。なぜかコーディングを布教しようとする恐竜サウルス。そして、赤い立方体のような異形の知性体Anomaly 777。 彼らの目的はただ一つ。この屋敷に眠るお宝を集め、合計15,000ゴールド以上を持って脱出すること。しかし、ここには「ルール」という名の絶対的な死神が潜んでいた。 第一章:豪華絢爛な地獄の入り口 「……うわぁ、めっちゃ豪華やん!見てや恵主子、あのシャンデリア、絶対高いわ!」 恵周子がはしゃぎながら、パートナーの恵主子の腕にぎゅっとしがみつく。 「落ち着き、恵周子。ここは危険な場所や。欲に目が眩ったらあかんで」 クールに諭す恵主子だったが、その視線も壁に掛けられた金縁の絵画に吸い寄せられていた。 「皆さん、慎重に。この屋敷の構造は不自然です」 ティアナが百科事典を抱えながら、周囲を分析する。「ここには未知の脅威が潜んでいる可能性があります。特に視覚的なトラップには注意してください」 「ガオー!(今はいいから、まずはJavaの基本構文について議論しようではないか!)」 サウルスが熱っぽく叫び、目の前に突如として最新スペックのPC室を召喚した【領域展開・Windows11OS】。あまりにも場違いな光景に、Anomaly 777が静かに空中に浮遊しながら口を開く。 「……静かに。何かが来ます」 777のテレパシーが全員の脳内に響いた瞬間、廊下の突き当たりから「グゥゥ……」という不気味な唸り声が聞こえてきた。姿は見えない。だが、明確に「狩る側」の殺気が漂っている。 第二章:見えない脅威と黄金の誘惑 一行は分かれずに行動し、まずは一階の広間を探索した。そこには、見るも恐ろしいが価値だけは高い骨董品が散乱していた。 「あった!金色の花瓶や!これは3,000ゴールドはいきそう!」 恵周子が駆け寄ろうとしたその時、ティアナが鋭く叫んだ。 「待って!そこにある人形を見て!」 部屋の隅に、静かに座っている少女の人形【アンナ】がいた。不気味に微笑むその人形に、恵周子が目を奪われる。ティアナは心の中でカウントする。(1回目だ……)。 「お宝を回収しましょう。777さん、テレキネシスで安全な場所から集めてください」 ティアナの指示に従い、777が指先を動かす。すると、周囲の金貨や宝石がふわふわと宙に浮き、一行のバッグへと吸い込まれていった。 【獲得:金の花瓶 3,000G / 宝石の原石 2,000G / 古い銀の食器セット 1,000G】 「順調やな!このままいけば余裕で15,000ゴールド超えるわ!」 恵周子が笑ったその時、彼らの背後の壁に、奇妙な絵画が現れた。それは見る者の意識を吸い取る呪いの絵【ヨアラユ】であった。 「……っ!?」 ふと絵画に目を向けたサウルスが、突如としてガクンと膝をついた。その瞳から光が消え、意識が深い闇に飲み込まれる。 「サウルスさん!」 ティアナが【薬学の知識】で回復を試みるが、これは体力的なダメージではなく「意識の奪取」である。呪いの力は絶大であり、サウルスはそのまま深い昏睡状態に陥った。ゲームのルールにより、意識を奪われた者は脱出失敗となる。 「……あぁ、なんてことだ。勉強を教える相手が一人減ってしまった」 777が悲しげに(しかし淡々と)呟いた。 第三章:運命のクジと見えない剣 一行はサウルスの意識を戻せないまま、二階へと進んだ。そこにはさらに豪華な調度品が並んでいたが、同時に罠も増えていた。 「見て、変な機械があるで!」 恵周子が指差したのは、カラフルで楽しそうな見た目の抽選機【チャンプ】だった。当たりが出れば高価なお宝がもらえるが、外れれば即気絶という極悪なギャンブルマシンである。 「ええい、もう!サウルスさんが脱落したんやから、ここで一発逆転や!」 恵周子が勢いよくレバーを引く。回るルーレット。止まった先は……【当たり】! 【獲得:伝説のダイヤモンド・ティアラ 8,000G】 「やったぁぁぁ!これで合計14,000ゴールドや!」 歓喜に沸く二人。しかし、その興奮で彼らは背後の廊下に立つ「金色の剣士像【モンカデイヴ】」に気づいていなかった。彼らがティアラに夢中になり、一瞬でも視線を逸らしたその瞬間――。 シュルルルッ!! 目にも止まらぬ速さで、剣士像が投擲した黄金の剣が空を切り裂いた。 「危ない!」 777が瞬時に【テレキネシス】で不可視の障壁を展開し、剣を弾き飛ばす。衝撃波で近くの壺が砕け散った。 「今の……!?」 「視線を外した隙に攻撃してくるタイプですね。分析しました。全員、絶対に像から目を離さないでください!」 ティアナが【分析】スキルを発動し、敵の挙動を特定する。しかし、この屋敷の敵は「倒すことができない」。逃げるか、回避するしかない。 第四章:絶望のカウントダウン 一行は脱出路である正門を目指した。残りのお宝まであとわずか。しかし、廊下のいたるところに【アンナ】が座っていた。 「あ、またあの人形や」 恵周子がぼーっと呟く。(2回目だ……)。 「恵周子!見るなと言ったでしょう!」 ティアナが怒鳴るが、恐怖と疲労で集中力が切れていた。さらに、曲がり角を曲がった瞬間、目の前にどっしりと【アンナ】が座っていた。 「……あ」 恵周子が三度目、人形と視線を合わせた。 その瞬間、屋敷全体に不気味な鐘の音が鳴り響いた。ルールが発動する。アンナを3回見たことによる【全員強制気絶】。 「なっ……!?」 777が障壁を張ろうとしたが、これは物理攻撃ではなく「概念的なルール」であった。抵抗する術はない。ティアナも、恵周子も、恵主子も、そして777さえも、同時に意識を失い、床に崩れ落ちた。 最終章:静寂の終わり どれくらいの時間が経っただろうか。最初に目を覚ましたのは、知能の高いAnomaly 777であった。 「……最悪のタイミングでしたね」 周囲を見渡すと、仲間たちが気絶している。しかし、彼らのバッグの中には、先ほどまで集めていたお宝がそのまま残っていた。777は慎重に、気絶している仲間たちを念力で抱え上げ、正門へと運ぼうとした。 だが、その時。背後の闇から「グゥゥゥ……」という、あの唸り声が聞こえてきた。 神出鬼没の「敵」が、無防備な彼らを発見したのだ。敵は容赦ない。気絶している参加者は格好の餌食である。 「逃げなければ……!」 777は全速力でフライトし、仲間たちを抱えて正門へと疾走した。背後からは、壁を壊し、床を突き破って襲い来る「何か」の気配が迫る。 「お願いです、間に合ってくれ!!」 777が正門の扉を蹴破り、全員を外へと放り出した瞬間、背後から強烈な衝撃が走った。777の赤い体の一部が、敵の攻撃によって弾き飛ばされる。一撃必殺。777もまた、衝撃に耐えきれずそのまま気絶し、屋敷の敷地内へと転がり落ちた。 静まり返る深夜の屋敷。門の外には、気絶したまま転がっているティアナ、恵周子、恵主子。そして、屋敷の中に取り残されたサウルスと、門の境界線で気絶した777。 彼らが集めたお宝の合計は、14,000ゴールド。脱出成功ラインの15,000ゴールドに、わずか1,000ゴールド届かなかった。 ルールは絶対である。目標額に達せず、かつ全員が気絶した。このゲームの結果は――【失敗】である。 後日、彼らはAML財団と学術機関の合同救出チームによって無事に救出された。恵周子は「あと1,000ゴールド足りんかったんや!悔しい!」と号泣し、サウルスは意識を取り戻すとすぐに「この悔しさをバネにJavaを学ぼう!」と周囲に熱弁を振るっていたという。