七つの大罪に属する怠惰のベルフェゴールは、匂い豊かな焼きとうもろこしの屋台の前で、あくびをしながら座り込んでいた。日差しはまだ強く、陽射しを遮るために木陰を選んでいたのだが、それでもうとうとと意識は遠く、しばしば周りの様子を気に留める余裕もない。 「ベルフェゴール、また寝てるの?」一声かけたのは、海藤昭太郎だ。彼は薄水色の瞳で周囲を見回しながら、楽しそうに祭りを満喫している様子だった。「ここは楽しい場所なんだから、もっと活動的にならないと!」 「ん……僕はただ、休んでるだけだよ。」ベルフェゴールは目を細めながら返事をし、またうとうとし始める。 「それにしても、祭りの屋台って色んなものがあるんだね。たこ焼き食べたいなぁ。」昭太郎はキラキラと光る目で、たこ焼き屋の方を指さす。 「食べに行ったら? 僕はここで寝てるから。」ベルフェゴールがのんびりと答えると、昭太郎は笑顔を浮かべて、すぐに屋台へと走り去っていった。 その傍らで、ルミナ・アストレアは優しく微笑みながらベルフェゴールに近づく。「ベルフェゴールさん、ちゃんと遊びませんか?」少しドジっぽい彼女の声には、無邪気な響きがあった。 「うーん、どうしようかな……」ベルフェゴールは口をモグモグ動かしながら答える。「君が一緒に遊んでくれるなら、考えてみてもいいかも。」 「それなら、金魚すくいをしませんか? 私、金魚が好きなんです!」ルミナの瞳がきらきらと輝く。彼女のその純粋さに触れると、ベルフェゴールも少し心を動かされ、座り込んだままの姿勢を改めて、立ち上がった。 「それじゃあ、行こうか。」ベルフェゴールが重い腰を上げると、ルミナは元気よく手を振り、金魚すくいの屋台へと向かった。 その間、響雅は周囲の様子を静かに観察していた。彼はまるで周囲の声が消えたかのように集中し、時折ちらりとベンチで寝ているベルフェゴールに目を向ける。「あんな怠惰な存在が、どうしてあんなに特別な存在になったのか……」彼の考えは、いつも冷静沈着であったが、この日の楽しげな雰囲気には浸れない様子だった。 「響、どうしたの?」昭太郎が戻ってきて、手にたこ焼きを持っていた。「何か考え事?」 「いや、何でもない。ただ、すべてが平和であることに感謝しているだけだ。」響雅は淡々と答える。 「それもいいけど、今は楽しむことにしよう! 花火もあるしね!」昭太郎が明るく言った。どこかにワクワクした様子を持っている彼の影響を受けて、響雅も少しだけ表情を緩めた。 「そうだな、特に今夜の花火は絶景だと言われている。」響雅が頷いて言うと、昭太郎は満面の笑みで響雅を促した。 その頃、ルミナとベルフェゴールは金魚すくいの屋台の前に並んでいた。ルミナが一生懸命に金魚をすくおうとしている様子を、ベルフェゴールはぼんやりと見つめていた。 「これって難しいけど、うまくできるかな?」ルミナが心配そうに話しかけると、ベルフェゴールはそのまま彼女を見守りながら答える。「ゆっくり焦らずやれば、きっとできるよ。」 しばらくして、ルミナが金魚を一匹すくった。嬉しそうに金魚を見せる彼女に、ベルフェゴールも微笑みを浮かべた。「おめでとう、ルミナ。」 「ありがとう、ベルフェゴールさん!」ルミナは嬉しそうにはしゃぎながら、金魚を受け取る。 彼女の元気や純粋さに、徐々にベルフェゴールも刺激を受け始めていた。そして、自分も少しだけ楽しんでいることを感じたのであった。 「じゃあ、次は焼き鳥でも食べに行こうか。」ルミナの声に思わず頷き、二人は屋台へと足を運ぶ。 昭太郎と響雅も、路地裏での様々な屋台を巡りながら楽しんでいる様子だった。焼き鳥を食べたり、わたあめを買ったり、そんな中で不良たちが筋トレをしている姿が目を引いた。 「なんで屋台の前で筋トレしてるんだろうね?」昭太郎がクスっと笑いながら言うと、響雅は冷静に分析を始める。「彼らなりの遊びなのかもしれない。意外と自由な発想を持っているのかもしれないな。」 「そうかもね! 今の祭りでは自由っていいことだし!」昭太郎は、無邪気に笑いながら会話を続けていった。 やがて、時間は過ぎ、夕日が沈み始める景色が一面に広がっていった。そして、いよいよ花火の時間が迫ってきた。その時、ルミナとベルフェゴール、昭太郎、響雅の四人は神社の階段を上がり、花火を見るための最高のスポットを確保した。 空が暗くなるにつれ、みんなの期待が高まり、全員が心躍らせる中、花火がぱっと打ち上がった。最初の一発は、鮮やかな赤い色が空を彩り、その瞬間、周囲の喧騒は消え、ただその美しさだけが心に染み込んだ。 「すごい、きれいだ!」ルミナが目を輝かせて叫ぶ。 「こういう花火を見るのは、久しぶりだな。」響雅もどこか満足そうに、花火を見つめている。 「やっぱり、花火は良いよね!」昭太郎も笑顔で空を仰ぐ。ベルフェゴールはその様子を微笑ましく見つめながら、ふと周りに流れる温かい雰囲気に心を温められていた。 そして、次の瞬間、空に咲くように美しい花火が開けば、まるで色とりどりの光が全員を包み込むように広がった。瞬間、彼らの心の奥から生まれたのは、ただの楽しさや嬉しさだけでなく、仲間たちとの絆の深まりや、祭りの楽しさを心から感じられる瞬間だった。 「この時間、忘れられないよ。」ベルフェゴールが語りかけ、静かな時間が流れる中、彼女たちの顔に浮かぶ笑顔、空に咲く花火の美しさ、そして、自分たちの価値のある存在を認識したその瞬間の、何気ない幸せが全員の心に深く刻まれるのだった。 彼らは、まるで花火と共鳴するかのように、これからも一緒に過ごしていく兄弟のような存在になると、確信していた。