荒れ狂う波が打ち寄せ、浜辺が押し流されそうなほどの力強さを露呈していた。雲の間から差し込む弱々しい光が、海と空を一層不穏に照らす。そこに立っているのは、巨大な海水で形成された人型の神、御海であった。そして彼の目の前には、惑星の気象観測機「RW-84WE」、通称イワツバメと、海洋調査機「RW-68MA」、通称ドルフィンが立ちはだかっている。 イワツバメの操縦者クリスは、憂いを含んだ視線で荒れ狂う海を見つめた。これまでの調査で海の動きは異常であり、御海の存在がその原因だと信じていた。しかし、女神のような存在に立ち向かう勇気が湧かないのも事実であった。 その時、御海が一歩を進める。海水の流れが彼の体から広がり、まるで指示を待っているかのように海が揺れ動いた。「我が名は御海、海の大神なり。」彼の声は静かだが、浜辺の砂粒すらも震撼させるほどの威厳を醸し出していた。 「ここはお前の場所ではない。私たちが住む惑星を守るために、立ちふさがる。」クリスが叫ぶが、内心の不安がさらに彼を際立たせる。しかし、彼はコクピットにいるマイラの存在を思い出す。ドルフィンの操縦者である彼女は、冷静さを保ちつつも高い意志を持っていた。 「私たちが何を求めているのか、わかるか?」マイラはドルフィンの操縦桿を握りしめながら、目の前の巨大な神に挑戦的に問いかける。御海は一瞬沈黙し、再び言葉を紡ぐ。「お前たちの意志に耳を貸す必要はない。」 次の瞬間、御海の手から巨大な三又の槍、『海神之鑓』が現れ、自由自在に操られたまま空中に宙を舞う。緊張感が一瞬走り抜ける。 「あっちだ、マイラ!」クリスが叫び、イワツバメは沈みこむ波の影を見つけ、その方向に飛び立つ。右腕の集束プラズマビームを発射し、海神の槍に向けてビームを放つ。御海は槍を操りながらそのビームを受け流す。「愚かな!」 波が山のように押し寄せ、突き出た槍が2人の機体を攻撃する。マイラがドルフィンのクレーンアームを使って回避するが、波の勢いに翻弄され、彼女は思わずコクピット内で小さく悲鳴をあげた。 「スライド!」クリスが指示をする。イワツバメも急いで波の勢いを利用して横に滑り、御海の攻撃をかわす。海神の槍はそのまま空中に飛んでいき、衝撃波を巻き起こし、周囲の砂浜を吹き飛ばした。 「今だ、ドルフィン!」マイラの命令で、ドルフィンは連装銛発射機を構え、数発の銛を一斉に放つ。針のような銛は海神に向かって突進するが、御海は海水で自らを覆い隠し、まるで波の中に隠れるかのようにして躱した。 「よくやった、しかし無駄な足掻きだ。」御海の声が響き渡ると同時に、彼は宣言する。「我が庭を広げる。」その瞬間、彼の周りの海水がうねり、半径二万kmを覆い尽くす。見る間に浜辺は水に飲み込まれていく。 それでも、2人は決して諦めなかった。 「オーバーブースト装置、起動!」クリスの指示に従い、イワツバメは力強いエンジン音を響かせ、一瞬で御海に接近する。その速度は、まるで雷光のようだった。 海神は驚愕し、彼は再び槍を構えようとするが、もう遅い。イワツバメは一気に射程に入り、集束プラズマビームを放つ。その光が御海に命中し、彼を揺り動かす。 しかし、御海は不死身であった。海水に包まれた彼の体は、瞬時に再生していく。クリスはその様子を見て愕然とする。「このままでは…!」 「いけない、クリス!全力で来るわ!」マイラが叫ぶ。ドルフィンは緊急無線を鳴らし、支援基地からレールガンドローンが発進した。高精度の攻撃力を持つそれは、御海の動きを封じるために設計されたものだった。 次第に、海神が彼らの反撃を受け止める姿が見えてきた。ドルフィンによる引き、イワツバメによるビームの重ね掛けが功を奏し、徐々にしかし確実に御海の力を削いでいった。 「倒す、必ず倒す!」クリスは目を輝かせ、イワツバメのパワーを引き出す。 「これが最期の見せ場!」マイラも立ち上がり、ドルフィンの装備を全開にする。 そして、全てを賭けた一撃が発動した。“支援”という名の波が、レールガンドローンから放たれ、御海に降り注ぐ。 逆転の瞬間が訪れる。御海はついに全身を水に包み込まれ、抵抗する力を失っていく。「我は神なり、消えるわけには…」と言う言葉もかき消されるように、海の中へと消えていった。 一瞬、静寂が訪れた。波が静まり、荒れた浜辺は平穏を取り戻した。 「勝ったのか…?」クリスは目を丸くする。マイラも無言で頷き、2人は喜びを分かち合う。 「私たちの勝利だ!惑星を守るために!」彼女が叫ぶ声は、海岸に響き渡った。 勝者は「RW-84WE」イワツバメ、MVPはクリスであった。