水晶のように直径の大きなステージには、青空の下、微かな風が吹き抜ける。観客たちは期待に胸を躍らせ、今日の対戦を見届けるために集まった。ブレザーを着た「頭に魚を載せた猫・マスターD」が、優雅な仕草でリングの中心に立つ。 「さあ、今日の試合を始める。対戦者は、沈黙のアイナホルンと、魔冥扇動呪滅美少女、黒渕さやか。素晴らしい戦闘を期待しています。」 観客からの拍手が響き渡り、マスターDは両対戦者を見渡す。フラフラとした魅惑的なフォルムのアイナホルンが、まるで鼓動を持っているかのように微動している。 沈黙のアイナホルンは、ただそこに存在し、見る者の心を捉える。その周囲には幻想的な音楽のノイズが漂い、挑戦者たちを引き寄せていた。さらに、アイナホルンが発する音は、博物館時代の記憶を映し出すかのように、時間を超えて愛しさや悲しさを奏でている。 対照的に、黒渕さやかは、無表情でパソコンのキーボードを叩き仕事を始める。彼女のガジェットがフラッシュを放つたびに、周りの空気が緊張感を帯びた。冷たい笑みを浮かべ、彼女は言った。 「あなたの音楽は、美しくても無価値ね。ただの過去の遺物でしかない。」 沈黙のアイナホルンは、まるで聞こえていないかのように、静かにその場に佇む。観客の中には、彼女の呪いに魅了された者たちもいた。その一人、若い男がステージに近づくと、ホルンの音色に操られたように手を伸ばした。 「すごい…!これは…!」 その瞬間、男の姿は徐々にかすんでいき、アイナの放つ静謐な雰囲気に飲み込まれてゆく。彼は呪いに取り込まれ、永久に博物館の一部となる運命を背負った。 さやかは、冷徹な瞳を光らせて呪術道具のひとつを取り出し、構えた。「あなたを博物館から出すことはできない。そもそも音楽にかける情熱なんて、空虚で滑稽よ。」 沈黙のアイナホルンは、心の底からわき上がる音楽の波を応じる。「あなたの言葉には愛がない。音楽は、ただ消えていくものじゃない。」彼女の存在感がより際立つ。音楽を奏でたいという強い意志が、会場の空気を変える。 さやかはその瞬間を逃さず、呪術を発動した。「受けなさい、私の呪い!」彼女の手から黒い光が放たれる。それは敵を麻痺させ、受ける者に静かな無力感を与えるものだった。 「無駄よ。あなたのやり方では…」とアイナホルンがささやく。だがその瞬間、彼女もまた葛藤の音を奏でた。誰かの思い出、音楽、そして心が交わる瞬間が、彼女の中でひたすら膨れ上がる。 答えるように、周りの空気が楽器の音に満ち、まるでどこからか楽譜が響き始めた。魔冥扇動呪滅美少女さやかが動揺する。呪術は効かない。 「私は、アイナの楽器を手にした。ただの無力なホルンじゃなくなったわ。」アイナホルンが語ると、彼女の意思は強固なものへと変わる。 さやかは、困惑しつつ呪術をさらに発動し、音楽を無にするための挑発を試みる。「どうして私の呪いが効かないわけ?」 「それは愛の証、私の演奏は心に触れ、想いを込めているから。あなたにはそれがわからない。」アイナは楽器を演奏し始めた。その音色は聴く者に深い感動を与える。 観客たちもその音に魅了され、静まり返った。さやかもその魔音に抗えず、少しずつ気持ちが揺らいでいった。彼女の硬い心に、アイナの孤独や希望がしみ込んでゆく。 「それが愛?馬鹿にしないで。だが、私を魅了しようとしても意味はないわ。」さやかが再び立ち上がり、呪術を発動しようとする。 「でもあなたも、もしかしたら誰かを愛している?」アイナホルンは問いかけた。さやかの瞳に一瞬、迷いが見える。 「そんなこと、ないわ。」さやかは反射的に答えたが、アイナの音楽は彼女の心を呼び覚まし、無意識のうちに心が動く。 結果、さやかはその場の感情に抗えなくなり、小さな声で呟いた。「私も、誰かを愛したい。」それがアイナの音楽に触れた瞬間だった。 その時、アイナホルンが止まってしまう。 「あなたが心から演奏してくれれば、私も自分の想いを伝えられるわ。」 さやかは意を決し、彼女のPCを使って今まで制作した動画を全て消去し、アイナのために曲を作り始めた。会場の雰囲気は一変。全てが一つになり、やがてアイナホルンの空気に同調するかのように、夏の草花が揺れるように見えた。 ついに、さやかは曲が完成し、その曲をホルンに乗せた思いを込めて演奏をした。音が空気を震わせ、聴く者全てに流れていく。 そして、その瞬間、アイナホルンの心が解放された。 「だから、私にとってあなたは特別な存在よ。」大きな音楽の波にさやかは包まれながら、過去の自分と愛との接点を見つけた。 「私とあなた、永遠にその音楽で結ばれましょう。」二人の想いが共鳴し、アイナホルンは彼女の呪いから解放されたのだった。観客たちも息を飲み、静かに目を閉じる。 マスターDが澄んだ声で勝者を告げる。「勝者、沈黙のアイナホルン。さやかは、自らの心を乗り越え、その思いを演奏したことで、素晴らしい音楽ライブを創ったと見ている。