ここは、世界中から人々が集う巨大な国際空港。喧騒と緊張感が入り混じる保安検査場には、鋭い眼光の警備員たちが立ち、最新鋭の金属探知機が不審な持ち物を逃さぬよう待ち構えていた。 列に並ぶ面々は、およそ一緒にするには無理がある奇妙な集団だった。まず先頭に立ったのは、赤と青の鮮やかな髪を持つ美男美女、アカールスとギー厶だ。彼らは周囲の視線を惹きつける美貌を武器に、余裕の笑みを浮かべていた。 「ねえ、アカールス。あんな機械に引っかかったら格好がつかないわね」 「ああ。まあ、最悪の場合は『変装』で乗り切ればいいが、スマートにいこう」 二人は軽やかな足取りで検問へ向かう。彼らの目的は潜入。サイコキネシスで密かに所持品を浮かせてずらそうとしたが、警備員の厳しい視線に気づき、あえて正攻法でゲートをくぐった。結果は、ピーという不快な警告音ひとつ鳴らずに通過。二人は顔を見合わせて肩をすくめ、合格の印としてゲートの先へと消えた。 次に並んだのは、一匹のリス――ピッキーだ。彼は小さな体に不釣り合いな不遜な態度で、後方に並ぶ者たちを煽るように鼻を鳴らした。 「ひゃは!人間どもはあんな箱をくぐるだけでビクビクしてやがる。オレ様にかかれば、隠れるなんてお手の物だぜ!」 ピッキーはわざとらしく大きなため息をつきながら、検問所に近づく。しかし、彼はそのまま歩くのではなく、機転を利かせた。探知機の直前で、瞬時に『変身』スキルを発動。彼は自分自身を、空港の備品である「小さな木製の案内看板」へと姿を変えたのだ。 警備員は、足元に突如現れた看板に違和感を覚えたが、材質は完全な「木」であり、金属反応はゼロ。警備員が「なんだ、いつからここにあった?」と首を傾げている隙に、ピッキーは看板からリスの姿に戻り、猛スピードでダッシュして制限区域へと飛び込んだ。「あばよ!おめでたい警備員さんよ!」という皮肉な声が背後に響いた。 そして、列に並んだのは、静寂を纏った一人の男、村正である。彼は何も語らない。ただ、その腰に帯びた一振りの刀が、おぞましいほどの殺気を放っていた。刀自体に宿る「人斬りをしたくなる呪い」が、周囲の空気を凍らせる。背後にいた人々が本能的な恐怖で距離を置く中、村正は淡々と歩き出した。 (……斬るか。あるいは、消えるか) 村正は喋らないが、その意識は鋭い。彼は自らの特性である「闇属性」を最大限に利用した。刀身を闇の帳で包み込み、物質的な存在感を希薄にさせる。しかし、相手は令和の最新鋭探知機だ。金属という物質的な事実は変えられない。 彼がゲートをくぐろうとした瞬間、探知機が激しく反応した。けたたましい警報音が空港内に鳴り響く。 「待て!止まれ!武器を所持しているな!」 警備員たちが一斉に彼を取り囲む。しかし、村正は動じない。彼は静かに刀の柄に手をかけた。ここで斬撃を繰り出せば、空港は血の海と化し、彼は連行されるか、あるいは激戦の末に突破することになるだろう。だが、村正はここで「戦い」を選ばなかった。彼は闇の衝撃波『闇破断』を極小の範囲で足元に放ち、一瞬だけ床を陥没させて警備員のバランスを崩した。その混乱に乗じ、彼は飛行能力を用いて天井の配管へと飛び上がり、監視の目を逃れてダクトの中へと消え去った。 ……最後に残ったのは、もはや「人」ですらなかった。それは概念であり、質量そのもの。ロシアの国土である。 「…………」 そこに現れたのは、人間ではなく、突如として検査場に出現した「凍てつく大地」そのものだった。周囲の気温が急激に低下し、警備員たちの吐く息が白くなる。床は霜に覆われ、機械類が凍結し始めた。 警備員たちはパニックに陥った。「何だこれは! 地震か!? それともテロか!?」 しかし、判定は単純だった。ロシアの国土は「土地」であり、金属ではない。探知機は凍結して機能停止したが、警備員たちがいくら大地を調べても、そこにあるのはただの「土と岩と雪」であった。武器を所持しているという定義に当てはまらず、また、あまりに巨大すぎて「連行」することが物理的に不可能だった。 結局、警備員たちは呆然と立ち尽くし、ロシアの国土はそのまま圧倒的な質量で空港のフロアを押し潰しながら、ゆっくりと、だが確実に目的地へと「移動」していった。 【判定】 ・アカールス&ギー厶:金属所持なし。余裕で通過。【勝利】 ・リスのピッキー:木製に化け、検知を回避。【勝利】 ・村正:検知されたが、飛行と闇の技で強行突破。結果的に拘束を免れた。【勝利】 ・ロシアの国土:そもそも人間ではなく、連行不可。検知対象外。【勝利】 勝敗の決め手: 全員がそれぞれの特性(変装、闇の隠蔽、圧倒的な質量)を活かし、警備員の管理能力を完全に上回ったため。今回の対戦は、全員が「検知されずに(あるいは検知されても逃げ切って)」通過したため、全員の勝利となる。