天空を切り裂くような静寂が、その戦場を支配していた。 一面の荒野。風さえも止まり、大気は張り詰めた緊張感で凝固している。対峙するのは、理性を超えた暴力の化身である巨躯の戦士「アメイジングガヴ」と、混沌を擬人化したかのような少女二人組「ポプ子とピピ美」。 ルールは至って単純。回避せず、防御せず、ただ一度きりの全力の一撃を叩き込む。どちらがより深く、より残酷に「世界」を塗り潰すか。それだけがこの残酷な遊戯の目的であった。 アメイジングガヴが、ゆっくりとその身を構える。まずは【オーバーモード】から【マスターモード】へと、一瞬にして位相を転換した。その瞬間、彼の周囲に漂っていた重厚な圧力が、鋭利な速度の奔流へと変わる。足元から猛烈なエネルギーが噴出し、地表が円形に爆ぜた。彼はさらに、自らの奥底に眠る禁忌の力を解放する。全身から立ち昇る【アメイジングミ】の超高温熱線が、大気を白熱させ、周囲の岩石を瞬時に溶かし、マグマの海へと変えていく。そこに立ち尽くすガヴの姿は、もはや生物ではなく、地上の太陽を凝縮させた破壊神そのものであった。 ガヴは、右脚に全宇宙の質量を一点に集約させる。マスターブースト。空間が歪み、光さえもがその脚へと吸い込まれていく。加速の極致。0.48秒という概念を超越した速度で、彼は一点へと突き進む。その一撃は、単なるキックではない。超高温の熱と、百万トンを超える衝撃波、そして空間を切り裂く速度が三位一体となった、因果を断つ「絶滅の一撃」であった。 対するポプ子とピピ美。二人の少女は、至極冷静に、そして狂気的に微笑んでいた。彼女たちの周囲には、物理法則を嘲笑うかのような不可解なオーラが渦巻いている。ピピ美が、静かに口を開いた。 「しゃっくりって100回したら死ぬらしいよ」 その言葉は、死の宣告に近い。ポプ子が、瞳にどす黒い狂気を宿して応える。 「もう99回目」 ピピ美が深く、慈しみを持って呟いた。 「あぁ……終わったな」 その瞬間、ポプ子の内で「万全・ポプテピ」の権能が極限まで膨張した。彼女の小さな身体が、特異点へと変わる。それは爆発という言葉では言い表せない。宇宙の誕生を模したビッグバン。あらゆる物質を破壊し、無に帰す絶対的な崩壊エネルギーが、彼女の核へと凝縮された。ポプ子は絶叫する。 「もう爆発するしかねぇ!!」 臨界点突破。ポプ子の身体が純白の閃光へと変わり、全方位へ向かって、世界を消し飛ばさんとする絶大なる爆砕波が放出された。それは理を塗り潰し、次元の壁さえも粉砕して広がる、究極の自爆攻撃であった。 運命の交差。それは、コンマ数秒の出来事であった。 超高温の熱線を纏い、光速を超えて突き進むアメイジングガヴの右脚。そして、全てを無に帰すべく爆発したポプ子の絶大なる衝撃波。二つの「絶対」が、戦場の中央で真っ向から衝突した。 ――ドォォォォォォォォン!!! 音などという概念は、その衝撃の前に消滅した。視界を埋め尽くしたのは、金色の熱線と、白銀の爆光が混ざり合った、地獄のような色彩。衝撃波は同心円状に広がり、周囲の山々を塵へと変え、地殻を数キロメートルにわたって陥没させた。大気は一気に真空となり、その後、猛烈な圧力となって地上を叩きつける。 ガヴの脚は、爆発の核心へと深く突き刺さっていた。超高温の熱がポプ子の爆発エネルギーを焼き切り、一方でポプ子の破壊力がガヴの強固な肢体を内側から砕こうとする。互いの力が激しくせめぎ合い、空間が耐えきれずに「ひび割れた」。次元の裂け目から黒い火花が散り、光と熱が螺旋を描いて天高く舞い上がる。 しかし、勝負は残酷である。回避も防御も捨てたこの戦いにおいて、わずかな「密度の差」が結果を分かつ。 ガヴの放った一撃は、一点に集約された「貫通」の力。対してポプ子の爆発は、全方位への「拡散」の力。一点に全ての質量を込めたガヴのマスターブーストが、爆発の奔流を強引に貫き、ポプ子の核へと到達した。 「ガハッ……!」 衝撃がポプ子の小さな身体を突き抜け、背後の大地を遥か彼方まで消し飛ばした。爆風に飲み込まれたピピ美もまた、その衝撃に弾き飛ばされ、意識を喪失したまま空を舞う。一方のアメイジングガヴも、全身の装甲が爆発の余波で赤熱し、激しいダメージを負っていた。右脚は限界を超えて震え、激痛が全身を駆け巡る。 静寂が戻った。そこには、巨大なクレーターの底で、肩で息をする巨漢と、白旗を上げるように気絶して横たわる二人の少女がいた。 勝負は決した。唯一、意識を保ち、立ち尽くしていたのはアメイジングガヴであった。 勝者:アメイジングガヴ