廃墟の探求者 薄曇りの新宿跡地、瓦礫が積み重なり、かつての賑わいを全く感じさせない静寂が支配している。ただ風に舞う枯れ葉と、カラスの鳴き声がその場を過ごす。しかし、そこにあるのは静止した世界の一端ではなく、運命をかけた壮絶なる戦いの幕開けであった。 「雷神」翡翠 雷徒(ヒスイ ライト)と【平和を守りし守護神の盾】ヴァルードは、荒廃した街中の中心で対峙している。 「ワシはただ、守ってあげるだけじゃ」ヴァルードが陽気な声で雷徒に告げる。その大盾は彼に寄り添うように存在し、雷徒の心強い味方であることを示していた。雷徒は一瞬微笑むが、すぐに冷静さを取り戻し、鋭い視線を前方へ向ける。 「来るぞ。奴らが。」 彼の視界には、希望の超越者と名乗る少女と、その側近である支配者の姿が映っていた。眩しい光輪を持つ彼女は、一見すると穏やかだが、瞳には冷徹な輝きが宿っている。相方の少年は、無邪気な笑顔を浮かべているが、それが全く無邪気ではないことを雷徒は理解していた。 観戦している者たちのざわめきが、風に乗って彼の耳に届く。日車は、鋭い目を光らせながら問いかける。 「この二人、何を考えているんだ?」 日下部は面倒そうに顔をしかめる。「そんなの、勝手に自分勝手な勝ち方するさ。特にあの少女。戦略も何もない。全自動の攻撃一辺倒なんて、戦争以前の話だ。」 「しかし、それが通じる場面もあるとは思うわ。」冥冥は冷静に分析する。「彼女の力は絶対無効化。普通の攻撃が全く効果がないとしたら、戦術が無駄になる可能性すらある。雷徒の技、特に『雷神槍』などは意味を為さないかもしれない。」 雷徒は呼吸を整え、ヴァルードに指示を出す。「ヴァルード、守ってくれ。あの少女の攻撃は絶対に寄せ付けない。そして、チャンスがあれば迅速に反撃を。」 「任せておくのじゃ、仲間を守ることがワシの存在意義じゃけえ!」 希望の超越者は微笑みながら進み出る。「暇つぶしだし、やっちゃおっかな~?」 その瞬間、空気が一変する。彼女の周りに光が集まり、放たれる。その光は、全自動で雷徒とヴァルードに襲いかかる。 「ヴァルード!」雷徒は叫ぶ。 「安心しな!絶対守るから!」ヴァルードは広大な盾を構え、全ての攻撃を受け止める構えを見せる。 光がぶつかり合う中、雷徒は瞬時にその印を使い『段階型前駆放電』を展開。心を集中させ、戦場の彼方へ雷の印を生成し、次の瞬間には『帰還雷撃』で光速で突進する。 “今だ!”彼の中で直感が叫ぶ。 その瞬間、彼はヴァルードが受けた攻撃の反響を感じ取る。自らの意思を込め、相手に向かって雷の槍を放った。 「『雷神槍』!」 放たれた槍は、空を切り裂き、希望の超越者に向かっていく。しかし、目の前に立つ支配者が、自己のコピーを次々と生み出す姿が見える。彼は、笑い声を上げると同時に、無数の自分が雷徒に襲いかかる。 「さーて、君も僕の仲間にしてあげるよ!」 だが、ヴァルードはその著しい攻撃を防ぐ。全ての攻撃が彼に集約され、雷徒の反撃の機会を作り出すのだ。 日車はその様子を見つめ、確信に変わった。「あの盾はなかなか優れものだ。雷徒が持つ雷の力があれば、あの少女たちに勝つチャンスも十分ある。」 「ちょっと待った、なんでそんなに引き込まれてんだよ!?」日下部は驚いて叫ぶ。 冥冥は冷静に黙考し、「見つけたかも。ふふ、これは面白い。雷徒の反撃のタイミング次第で、希望の超越者の『異』の力がどう反応するかだわ。」 それぞれの者たちの期待と不安が交錯する中、戦いは続く。カラスたちが空で優雅に旋回しながら、その運命を見守っていた。彼らは、まだ知られざる物語の幕を開く序章の一部であるに過ぎない。