世界最大の怪異対処組織、ザグヱラ機関。その総司令グンダリが下した命令は単純にして絶対であった。「不確定要素の完全排除」。 戦場に降り立ったのは、機関の誇る最高戦力。SS部隊の超エリートたち、そして全軍の脳たる予知者ミルエと軍師ラッグ。彼らの背後には、神々しいオーラを放ち、味方に絶対的不死と強化を付与する議長ライが鎮座していた。 対するは、一ツ橋半次郎、火鬼可子、Dr.クラシエ、そして剣士ゼブラ。世に名を馳せる異能者たちであったが、ザグヱラ機関の前では、彼らの「理外の力」すらも計算済みの変数に過ぎなかった。 「作戦開始。想定通りに処理せよ」 軍師ラッグの冷徹な号令と共に、法務官ジアイが用意した法具が展開される。ミルエが予知した「相手が勝利する全ての可能性」をあらかじめ潰すための、絶対的な封殺準備である。 まず、剣士ゼブラが動いた。神速の『ケラケラッシュ』が次元を断ち切り、SS部隊を屠ろうとする。しかし、その刃が届く直前、議長ライの権能が発動した。ゼブラの超速行動は「キャンセル」され、その身体は泥に足を取られたかのように停滞する。そこへジアイが用意していた【神速拘束鎖・絶縛】が、予知された軌道に先回りして彼を絡め取った。 「なっ……!? 俺の速度が封じられただと!?」 驚愕するゼブラの首を、SS部隊の一人が『想像実現術』で具現化させた巨大な断頭台の刃が、一瞬で刈り取った。 【ゼブラ:死亡】 次に動いたのは火鬼可子である。彼女が白紙の本を開き、『空想執筆』で現実を物語へと書き換えようとした。しかし、彼女が文字を綴るよりも速く、SS部隊の時空封印術が彼女の周囲の時間を凍結させた。ジアイが提示したのは、物語の書き換えを無効化する【叙事詩封印の楔】。可子の本は白紙のまま、文字を綴る能力そのものを法的に剥奪された。 「本が……書けない……?」 戸惑う少女に、慈悲はなかった。即時再生法を併用し、一切の隙なく攻め立てるSS部隊の猛攻が彼女を圧砕した。 【火鬼可子:死亡】 Dr.クラシエは不敵に笑っていた。世界の外枠から観測し、調整する『調整者』さえあれば、どのような結末も書き換えられると信じていたからだ。だが、軍師ラッグの戦術は彼の想定を超えていた。ラッグは、クラシエの「観測」という行為自体を逆手に取り、偽の情報を観測させることで『調整者』に致命的なエラーを誘発させた。 「馬鹿な! 私の計算に誤りがあるはずが――」 絶叫するクラシエの前に、ジアイが【超量子崩壊触媒】を投じた。物理法則の権威である彼にとって、最も相性の悪い「理の崩壊」を引き起こす術具である。自身の調整が間に合わない速度で、クラシエの肉体と精神は量子レベルで分解され、塵となった。 【Dr.クラシエ:死亡】 最後に残ったのは、自称“最強の凡夫”一ツ橋半次郎であった。彼はボサボサの頭を掻きながら、飄々とした態度で立っていた。 「いやぁ、困ったね。周りがみんな片付いちゃったよ」 SS部隊が彼を斬りつけ、無限万能術で消し飛ばそうとする。しかし、半次郎の不思議な力により、攻撃はすべて水面に映る月を斬るように空を切り、彼に届かない。周囲が絶句する中、半次郎は不敵に笑い、刀を抜こうとした。 だが、ザグヱラ機関は「謎」を放置する組織ではない。予知者ミルエは、半次郎が「いかにして不敗であるか」の正体を突き止めたわけではなく、「彼が不敗であるという結果」を前提とした上で、その結果さえも上書きする法具をジアイに準備させていた。 【凡夫の理・強制帰還の檻】。 この法具が発動した瞬間、半次郎の「イカサマ」とも呼べる不敗の因果が強制的に遮断された。彼が「凡夫」であるという現実が、絶対的な法として固定されたのである。 「おっと……これは想定外だねぇ」 初めて見せた困惑の表情。その隙を逃さず、SS部隊の二十人が同時に『想像実現術』を叩き込んだ。逃げ場のない空間封印の中、半次郎の身体は光の奔流に飲み込まれ、跡形もなく消滅した。 【一ツ橋 半次郎:死亡】 戦場に残ったのは、静寂と、完璧な勝利を収めたザグヱラ機関の面々のみであった。 総司令グンダリは、血の一滴すら汚れていないSS部隊を見渡し、短く告げた。 「想定通りだ。撤収せよ」 【生存者:ザグヱラ機関 SS部隊および指揮官ら】 【付与二つ名:『神域の執行者』】