異星の使者と鎖の狩人 出会いと火花 荒涼とした廃墟の街並み、崩れたビルの残骸が月明かりに照らされる中、二つの影が対峙していた。一方は銀髪をなびかせ、無表情の少女の姿をした存在――ソラより来たるミロロ。彼女の瞳孔のない目は、感情の揺らぎを映さず、ただ静かに相手を観察している。長い銀髪は微動だにせず、まるで宇宙の虚空を宿したかのようだ。対するはロラン、黒と灰と赤を基調としたコートを纏い、黄色と赤のオッドアイが不気味に輝く男。右手に鎖剣を、左手に巨大な回転式拳銃を構え、口元に演技じみた笑みを浮かべている。 「ふむ、君のような変わり者がこの街に現れるとはね。道具をどう使うのか、見せてもらおうか?」ロランの声は軽やかだが、その目は獲物を値踏みする獣のようだ。鎖剣の鎖がカチャリと音を立て、微かな緊張が空気を震わせる。 ミロロは無表情のまま、ゆっくりと首をかしげた。「…ワタシハ、ミロロ。キミハ、塵ニ、等シイ。」彼女の声は機械的で、感情の欠片もない。だがその言葉に呼応するように、瞳のない目が淡く光り、銀髪がふわりと浮かび上がる。重力の異なる母星から来た彼女にとって、この地球の男はただの塵芥に過ぎなかった。 ロランは肩をすくめ、笑みを深めた。「塵か。面白い視点だ。では、その塵がどれだけ舞えるか、試してみるかい?」彼の言葉が終わるや否や、戦いが始まった。 初撃の応酬 ロランが先制した。素早い身のこなしで地面を蹴り、鎖剣を振り抜く。鎖が鞭のように伸び、ミロロの足元を狙う――【急襲】の布石だ。鎖の先端が空気を切り裂き、廃墟のコンクリートを削り取る鋭い音が響く。だがミロロは動かない。彼女の周囲に不可視の力が渦巻き、鎖剣を寸前で停止させる。【重力波】の発動だ。念動力に似た力場が鎖を握り潰すようにねじ曲げ、ロランの腕に反動が跳ね返る。 「ほう、面白い!」ロランは体勢を崩さず、左手の拳銃を連射。爆炎弾が四発、轟音と共にミロロへ向かう。炎の尾を引き、廃墟の壁を焦がしながら迫る弾丸は、まるで流星群のようだ。ミロロの銀髪が激しく揺れ、目が青白く発光する。彼女は片手を軽く上げる。重力波が弾丸を捉え、一瞬で方向を変える。弾丸はミロロを掠め、背後のビルを直撃。爆発が夜空を赤く染め、破片が雨のように降り注ぐ。 「…無駄ナ、力。」ミロロの声は静かだが、その周囲の空気が歪む。彼女の膂力は地球の常識を超えていた。母星の高重力で鍛えられた体は、廃墟の巨大な鉄骨を軽々と引き抜き、棍棒のように振り回す。鉄骨が風を切り、地面に叩きつけられると、衝撃波がロランを襲う。コンクリートが砕け、埃が舞い上がる壮大な一撃。ロランのコートが裂け、肩に浅い傷が走るが、彼は笑みを崩さない。 「痛いねえ。でも、それだけか?」ロランは跳躍し、鎖剣を再び放つ。今度は【征空】だ。鎖がワイヤーのように空を掻き、ミロロの上空を旋回しながら爆炎弾を四発放つ。弾丸は弧を描き、ミロロを包囲するように降り注ぐ。炎の熱が廃墟を焼き、金属が溶ける臭いが広がる。ミロロは重力波で二発を弾き返すが、残り二発が彼女の肩と脚をかすめる。銀髪が焦げ、初めて彼女の表情に微かな歪みが走る――いや、無表情のまま、ただ目が激しく光った。 激化する戦いの渦 「キミノ、道具ハ、脆イナ。」ミロロが呟き、両手を広げる。【終焉の光】の発動だ。遥か上空から無数の光の柱が降り注ぐ。それは星の雨のように美しく、しかし破壊的だ。光が触れた廃墟の車が浮かび上がり、ビルが根こそぎ引き剥がされる。大きさも重量も関係なく、全てが上空へ吸い寄せられ、渦を巻いて消えゆく。ロランは鎖剣を地面に突き刺し、固定しようとするが、光の力が彼の体を浮かせる。コートが引き裂かれ、拳銃が手から離れそうになる。 「くそっ、この力は…!」ロランは歯を食いしばり、鎖剣を操って自らを地面に引き戻す。戦闘IQの高さが光る瞬間だ。彼は光の隙間を縫って接近し、鎖剣をミロロの腕に巻きつける。鎖が肉に食い込み、血が滲む――だがミロロの皮膚は異星のもの。傷は浅く、すぐに重力波で鎖を剥ぎ取る。彼女の膂力が爆発し、素手でロランの胸を突く。一撃で肋骨が軋み、彼は数メートル吹き飛ばされ、廃墟の壁に叩きつけられる。壁が崩れ、埃が視界を覆う。 ロランは咳き込みながら立ち上がる。オッドアイが狂おしく輝き、演技じみた笑みが消え、代わりに獰猛な表情が浮かぶ。「…悪くない。だが、僕のターンだ。」彼は鎖剣を振り回し、【必殺技】を発動。鎖が多段にミロロを襲う。一撃目が肩を斬り、二撃目が脚を絡め、三撃目が腹を抉る。血と銀髪が舞い、廃墟に赤黒い染みが広がる。クライマックス状態に移行したロランの攻撃は強化され、連続する鎖の刃がミロロを圧倒。彼女の体が揺らぎ、重力波が一瞬乱れる。 「…痛ミ。デモ、終ワラナイ。」ミロロの目が赤く光り、銀髪が嵐のように渦巻く。彼女は膂力を全開にし、地面を叩きつける。衝撃波がロランを再び吹き飛ばし、鎖剣が弾かれる。廃墟全体が震え、ビルの残骸が崩落。両者とも傷つき、息を荒げながら睨み合う。会話は途切れ、ただ剣戟と重力の音だけが響く。 決着の瞬間 戦いは長引き、廃墟はさらに荒廃した。ロランの終決ゲージが溜まり、彼の攻撃が苛烈さを増す。ミロロの重力波は弱まり、銀髪の動きが鈍くなる。ロランは最後の賭けに出る。鎖剣でミロロの動きを封じ、拳銃を至近距離で連射。爆炎が彼女の体を焼き、ついに膝をつかせる。終決ゲージがゼロに達した瞬間、ロランは【ラ・デスペティーダ】を発動。足払いでミロロを倒し、鎖で固定。踏みつけ、回転式拳銃を額に突きつけ、引き金を引く。 轟音と共に、ミロロの体が消滅の閃光に包まれる。銀髪が散り、無表情の顔が最後に僅かに歪む。「…塵、ナリ…」彼女の最後の言葉が風に溶ける。光の粒子が舞い上がり、夜空へ消えゆく。ロランは息を整え、拳銃を収める。「…立派な塵だったよ。」 廃墟に静寂が戻り、勝者はロランだった。