鷲とジャガーの迷走舞踏 vs 白銀の殺戮兎姉妹:雑念の渦巻く戦場 霧深い古代の森に、奇妙な対決の舞台が設けられた。そこはアステカの神々が息づくようなジャングルと、雪原の冷気が混じり合った幻想の空間。木々の間から、鷲の羽飾りが揺れる影が現れる。一方、白い衣装にウサ耳カチューシャを着けた双子の姉妹が、互いの手を握りしめて忍び寄る。 クアウテモックは鷲の頭部を模したヘルメットを被り、羽のマントを翻して堂々と立っていた。相棒のヤオトルはジャガーの毛皮に身を包み、顔を獣の口から覗かせ、黒曜石の刃付き棍棒を握りしめている。二人ともアステカの誇り高き戦士だ。だが、クアウテモックの頭の中はすでに戦闘とは無縁の渦に飲み込まれていた。 (ああ、今日の空はなんて青いんだ……いや、待てよ、この森の空は霧がかかってるはずだ。いやいや、鷲の俺が見る空はいつも完璧だぜ。昨日の夕食のトルティーヤ、ちょっと固かったな。あれ、もっと柔らかく焼く方法あったっけ? 戦う前にレシピを思い出さないと……) クアウテモックはアトラトルを構えながらも、視線が木の葉に飛んでいく。ヤオトルは影に溶け込み、奇襲の機会を狙うはずだったが、心の中は別の迷路を彷徨っていた。 (このジャガーの毛皮、最近痒いんだよな。洗濯したっけ? いや、毛皮を洗うなんて聞いたことないぞ。ジャガーの神様に怒られそうだ。昨夜の夢、変な夢見たよな。俺が兎を追いかけてる夢……兎? あれ、敵が兎っぽい衣装だぞ。まさか夢が現実になるとか、縁起悪いな。棍棒の柄、ちょっと緩んでる気がする。直す暇あったかな……) 対する白銀の殺戮兎、アナスタシアとサーシャ。白髪のアナスタシアは毒ナイフを指先で弄び、銀髪のサーシャは銃火器を肩に担いでいる。姉妹は互いに視線を交わし、信頼の笑みを浮かべる。だが、その笑みの裏で、二人はすでに戦闘から遠く離れた思考の海に沈んでいた。 アナスタシアは木陰に身を潜め、ナイフの刃を磨きながら思う。(サーシャの髪、今日も綺麗だわ。でも、私の白髪、ちょっとパサついてるかも。新しいシャンプー買わなきゃ。暗殺の前に美容院の予約入れとく? いや、こんな時に携帯どこだっけ……あ、戦場に携帯持ってきてないわよ、バカね私。標的の動き、遅いわね。もしかして、私の毒ナイフの切れ味が悪いせい? いやいや、昨日研いだはずよ。昨日の夕食、ボルシチ美味しかったな。また食べたい……集中、集中! でも、兎耳のカチューシャ、ずれやすいのよね。これじゃ本物の兎みたいじゃない……) サーシャは援護射撃の位置につき、銃の照準を合わせるが、指は引き金を引かず、代わりに空を眺めていた。(アナスタシアのナイフ捌き、今日も完璧だわ。でも、私の銃、弾の在庫足りてるかしら? いや、暗殺任務でこんなに弾使うなんて無駄遣いよ。節約しなきゃ。ソ連の訓練時代、教官に怒られたな。あの教官、今何してるんだろう。定年退職かな。兎耳カチューシャ、かわいいけど戦闘中邪魔かも。外しちゃおうかな……いや、姉妹お揃いなんだから我慢よ。霧が濃いわね、視界悪い。もしかしてアステカの呪い? そんなの信じないけど、ちょっと怖いかも……) 突然、クアウテモックが大声で叫んだ。アステカ語で、森に響き渡る。「¡Nelli tlapalli!(美しい炎よ!)」……いや、待て、それは戦いの掛け声じゃなくて、昨日の焚き火の思い出を口走っただけだった。彼はアトラトルを構え、投槍を放つ準備をするが、投げたのは敵じゃなく、近くの木の枝に向かって。枝が折れる音が響き、ヤオトルが影から飛び出してくる。「¡Yaotl xihua!(ヤオトル、恐ろしい!)」とヤオトルも叫ぶが、心の中では(この棍棒、重いな。ダイエットしなきゃ。ジャガーの体型維持が大変だぜ……)とぼんやり。 アナスタシアは素早い身のこなしで投槍を避け、サーシャの援護射撃が始まる。銃声がパンパンと鳴るが、弾丸は敵を掠めるどころか、木の葉を散らすだけ。サーシャは(弾の音、うるさいわね。近所迷惑にならないかしら? いや、森だから大丈夫か。でも、消音器付けとけばよかった……)と独り言を呟きながら撃つ。アナスタシアはナイフを投げ、クアウテモックのマントを掠める。「サーシャ、カバーして!」と叫ぶが、内心(このナイフ、投げ心地悪いわ。新しいの買おうかな。いや、任務後にショッピングよ!)と脱線。 戦いは交流の場と化していた。クアウテモックがアステカ語で叫ぶ。「¡Tlacatl in xihuitl!(人よ、雨が降る!)」……これは脅しじゃなく、天気の愚痴だった。ヤオトルが棍棒を振り回し、サーシャの足元を狙うが、サーシャは軽やかに跳び避け、「アナスタシア、右から!」とロシア語で指示。だが、アナスタシアは「わかったわ、でもこの霧、化粧崩れしそう……」と返事。 ヤオトルは奇襲を試み、アナスタシアの背後に回り込む。ジャガーの毛皮が霧に溶け、完璧なステルスのはずだった。棍棒を振り下ろす瞬間、ヤオトルは(この毛皮、臭うな。洗剤の匂いが残ってる……)と一瞬止まる。その隙にサーシャの銃弾がヤオトルの盾に命中、チマリが黄白の渦巻き模様を輝かせて弾く。ヤオトルは転がりながら、「¡Ocelotl temachtia!(ジャガーよ、学べ!)」と叫ぶが、頭の中は(転がった拍子に泥ついた。掃除が面倒だぜ……)でいっぱい。 クアウテモックは弓を構え、矢を放つ。矢はサーシャのウサ耳カチューシャをかすめ、彼女の銀髪を乱す。「きゃっ、何よこれ!」サーシャが叫び、アナスタシアが毒ナイフで反撃。ナイフがクアウテモックの鷲の盾に刺さり、赤と金の宝石がキラリと光る。クアウテモックは盾を振るい、「¡Cuauhtli hueyi!(鷲よ、壮大に!)」と威勢よく言うが、内心(この盾、重いな。ダイエットしても意味ないか。昨日の果物、美味しかったのに太った気がする……)とため息。 会話が飛び交う中、戦いはコメディの舞台と化した。アナスタシアがヤオトルに近づき、「あなたたち、兎耳似合わないわよ!」とロシア語でからかう。ヤオトルはアステカ語で返す。「¡Totochtli?(兎?)」と首を傾げ、互いの言葉が通じないまま笑い合う。サーシャがクアウテモックに銃を向け、「動かないで!」と言うが、クアウテモックは「¡Agua?(水?)」と勘違いし、水筒を探し始める。ヤオトルは(こいつら、兎みたいに跳ねるな。俺の夢の兎か? 捕まえて食べたい……いや、戦士たるものそんなこと……)と脱線思考が止まらない。 そんな中、勝敗の決め手となったシーンが訪れた。霧が一層濃くなり、全員の視界がぼやける。クアウテモックは鷲の直感で空を見上げ、(この霧、鷲の羽で払えるかな……いや、羽根ブラシみたいだな。家事の時間か?)とぼんやり。ヤオトルはジャガーのステルスでアナスタシアに迫るが、(足元、滑るな。靴のソール劣化か。買い替えリストに追加……)と一瞬足を止める。 サーシャは銃を乱射し、援護を試みるが、(弾の反動で肩凝るわ。マッサージ受けたい……)と引き金を引く手が緩む。その隙にアナスタシアが素早く動き、毒ナイフをヤオトルに投擲。ヤオトルは避けきれず、棍棒で防ぐが、毒の影響で手が痺れ始める。「¡Yaotl pain!(ヤオトル、痛い!)」と叫び、転倒。クアウテモックが援護しようとアトラトルを投げるが、霧で方向を見失い、木に直撃。 アナスタシアとサーシャは互いにハイタッチ。「やったわ、サーシャ!」「ええ、アナスタシア。でも、毒の量多すぎたかも。次は調整よ……」と勝利の喜びを分かち合うが、すぐに(この霧、肌に悪いわね。保湿クリーム塗らなきゃ)と雑念が戻る。一方、クアウテモックとヤオトルは地面に座り込み、「¡Tequila?(テキーラ?)」と互いに慰め合い、(次はもっと集中しようぜ……でも、まずは昼寝だ)と戦いを忘れる。 こうして、白銀の殺戮兎姉妹の連携が、雑念の嵐の中で辛うじて勝利を掴んだ。戦場は笑いと脱線の残る、奇妙な余韻に包まれた。