静まり返った特設アリーナ。そこに不釣り合いなほど華やかな、そして威圧的な「食」の空気が漂っていた。本日の対戦カードは、悦楽王国から来た究極のポジティブ・パティシエール、パティちゃん。対するは、剛腕と超速の調理術を誇る鬼人、オニマロ。ジャンルは同じ「料理」だが、そのアプローチは対極にある。 「わぁぁぁっ☆見て見て!あっちの人、すっごく筋肉ムキムキだねっ♪きっと美味しいお料理をたくさん作れる人なんだよっ☆」 パティちゃんは、調理服とパティスリーの装飾が融合した幻想的なドレスを翻し、ぴょんぴょんと跳ねながらオニマロに駆け寄る。その瞳は快楽物質の影響で爛々と輝いており、常人であれば気圧されるほどのハイテンションだ。一方のオニマロは、腕を組み、静かに鼻を鳴らした。コックコートの下に潜む強靭な筋肉が、微かな呼吸に合わせて波打っている。 「小娘、料理は遊びじゃねえ。腹がはち切れるまで食わせて、意識を飛ばさせる……それが俺の流儀だ。覚悟はできてるんだろうな」 「もちろんだよっ☆私ね、相手さんが『あぁぁっ!もうダメぇっ!』ってなるくらい最高の快楽をあげるのが大好きなんだっ☆ねっ♪」 互いの目的は「相手を快楽の極致へ導くこと」で一致した。ジャッジの合図と共に、演武が開始される。 【前半:演武】 先手を打ったのはオニマロだった。彼が携帯キッチンの釜に火を入れた瞬間、アリーナに爆風が吹き荒れる。超高火力の炎が舞い上がり、同時にオニマロの姿が消えた。……いや、消えたのではない。速すぎる。残像が十人に分かれ、同時に十種類の調理工程を完遂させていた。 「剛速・B級グルメ連弾! 焼きそば、唐揚げ、餃子、たこ焼き……まとめて喰らえっ!!」 ドガァッ! という衝撃音と共に、パティちゃんの目の前に山のように積み上げられたB級グルメの塔。芳醇なソースの香りと、食欲を激しく刺激する油の匂いが空間を支配する。それはまさに「味の暴力」。パティちゃんは目を輝かせ、迷わずその山に飛び込んだ。 「んんぅっ☆美味しいっ! お口の中で味が大爆発してるよっ♪このジャンクな感じ、脳に直接響くねっ☆」 パティちゃんは頬を膨らませて幸せそうに咀嚼するが、彼女の脳内物質はすでに飽和状態。普通の人間ならここで意識を失うほどの量だが、彼女のポジティブ精神と快楽耐性はそれを上回っていた。むしろ、この刺激に触発され、彼女の【ドーパ☆クッキング】が起動する。 「あははっ☆いい刺激だねっ! じゃあ次は私の番だよっ♪分析開始っ☆」 パティちゃんの瞳が「キッチン眼」へと変貌する。オニマロの肉体、血流、精神状態、そして今この瞬間に欠乏している栄養素を瞬時にスキャンしていく。 (分析完了っ☆相手さんは……超絶筋肉質な鬼さん! 激しい運動量で、疲労回復のためのクエン酸と、神経を鎮めるビタミンB群、そして何より『心から弛緩できる癒やし』が足りてないねっ☆) パティちゃんが快活に宣言する。 「決定っ☆料理国籍は【フランス】! 種類は【至高の癒やしコース】! メイン食材は【最高級の鴨肉と旬のベリー類】だよっ☆」 パティちゃんの動きはオニマロのような速度はない。しかし、その一挙手一投足には舞踊のような芸術性が宿っていた。丁寧に下処理された鴨のロースに、ベリーの酸味を効かせたソースを添える。盛り付けは完璧に計算されており、皿の上に一つの風景が描き出される。提供されたのは『鴨のロースト~ベリーのソースと根菜のピュレを添えて』。 「はいっ☆どうぞっ♪食べてみてっ☆ねっ♪」 オニマロは不機嫌そうに、しかし抗いがたい香りに誘われて一口運ぶ。その瞬間、彼の表情が凍りついた。……いや、溶けた。暴力的な旨さとは違う。細胞の一つ一つに染み渡るような、深い充足感と安らぎ。強靭な筋肉が不随意に緩み、張り詰めていた精神が心地よく弛緩していく。 「なっ……なんだ、この感覚は。身体の中の疲れが、全部消えていく……」 「えへへっ☆どう? どうなのっ? 美味しいよねっ? 幸せだよねっ? ねぇっ! 感想を聞かせてよっ! もっと詳しく! どこがどう気持ちいいか教えてよっ☆」 パティちゃんの猛攻(食レポ要求)が始まる。オニマロは快楽の余韻に浸りたいが、パティちゃんは至近距離でキラキラした目で彼を凝視し、しつこく感想を迫る。そのギャップに、オニマロは翻弄された。 「うるさい! 旨い、そうだろうが! ……くそっ、また食いたくなった……」 「やったぁっ☆おかわりだねっ☆次はもっとすごいの作っちゃうよっ♪」 再び【ドーパ☆クッキング】が発動し、今度はデザートのムースが提供される。オニマロの強靭な精神力をもってしても、身体を芯から弛緩させる技術と、それを上書きするほどのパティちゃんのハイテンションな精神的圧力に、次第に抗えなくなっていく。 最終的に、オニマロは満腹感と究極の精神的弛緩により、心地よい眠りに落ちていった。パティちゃんは、眠るオニマロの横で「次はどんなメニューがいいかなぁっ☆」と、ずっと独り言を言いながら飛び跳ねていたという。 【後半:点数発表】 ジャッジによる厳正な審査結果を発表する。本対戦は、速さと量で圧倒したオニマロと、分析と質で心身を掌握したパティちゃんの、非常にハイレベルな戦いであった。 ■クッキング調理シェフ厨師☆お料理パティシエールちゃん 【熱意】 100 / 100(脳内物質による底なしのエネルギー) 【技術】 92 / 100(正統派フランス料理の完璧な再現度) 【芸術】 95 / 100(盛り付けの美しさと演出力) 【独創性】 98 / 100(相手の欠損栄養を分析してメニュー化する能力) 【構成力】 90 / 100(前菜からデザートへの緩やかな快楽誘導) 【威力】 88 / 100(精神的な弛緩による無力化) 【熟練度】 85 / 100(技術は高いが、精神状態が不安定な点を考慮) 合計点:648 / 700 ■ドカ食わせ料理人 オニマロ 【熱意】 90 / 100(料理への誇りとストイックな姿勢) 【技術】 98 / 100(超速調理という神業的な身体能力) 【芸術】 85 / 100(山盛りの料理というダイナミックな美) 【独創性】 80 / 100(B級グルメを極限まで高めたアプローチ) 【構成力】 82 / 100(一気に畳み掛ける圧倒的な物量攻め) 【威力】 95 / 100(食欲と満腹感で相手を気絶させる破壊力) 【熟練度】 96 / 100(世界中の料理を網羅した経験値) 合計点:626 / 700 【勝敗の決め手】 勝者は、パティちゃんである。 オニマロの「味の暴力」は圧倒的であったが、パティちゃんの【ドーパ☆クッキング】による「個別の最適化」が上回った。相手が何を求めているかを分析し、精神的な隙間に直接快楽を流し込む戦略的な調理法が、オニマロの強靭な肉体と精神の壁を突破させた。また、提供後の執拗なコミュニケーション(食レポ要求)が、相手の精神的余裕を奪い、結果的に心地よい疲労へと導いた点が高く評価された。 本日の演武は、食欲という本能と、快楽という精神性の激突であった。両名ともに、料理人としての矜持は最高レベルに達していたと言えるだろう。