①世界を滅ぼす日 空は鉛色に染まり、大地はひび割れている。かつて人々が築いた文明の名残が、廃墟と化した街並みの中にただ静かに佇んでいる。そこに立つのは、嵌合蟲の蟲人、蝗朱 嶺。彼女は高身長で筋肉質な体躯に豊満な肢体を持ち、黒いベタ目が冷たく光を放つ。艶やかな黒色癖毛が風に揺れ、彼女の姿はまるで荘厳な女王のようだ。 「妾はこの世界を望みし者ではない。ただ、すべてを滅ぼす運命にあるだけよ」と、低く気怠げな声で呟く。 彼女の黒硬象虫の外骨格が、微かに光を放つ。彼女の権能〈蟲之女皇〉が発動する瞬間、指の先から無数の虫たちが這い出して、周囲に広がっていく。一匹、また一匹と、その数は止まらない。 蟲たちが彼女の命令に従い、暴れ狂い始める。<br> 「〈蟲之大波〉、今、起こす!」 聞いたこともないような怨嗟の声が、空から響く。無数の虫が空を覆い、地上の人々を飲み込んでいく。 続いて現れたのは、人工生命体、巨神兵 オーマ。彼は故き文明の「調停と裁定の神」として設計された存在で、その巨体は圧倒的な恐怖を伴って進み出る。 「私は裁定者だ。存在の意思を問う。」彼の声は深く響き、周囲の者たちに選択を強いる。 彼の口から放たれるプロトンビームが、山を吹き飛ばすほどの威力を持つ。その姿は、ただ破壊の象徴でしかない。彼は周囲にいる者たちを見渡し、善と悪を見分ける力を持つ。 「お前たちの選択は、今ここに集いし者たちの生死を決める。」 オーマは高く舞い上がり、天空から目を光らせる。 真実を知っている者たちの心からは恐怖が溢れ出し、抵抗する者は彼の槍で串刺しにされる運命にある。彼の背後には、蝗朱 嶺が虫たちとともに広がる大波を指揮していた。何もかもが計画され、すべての希望が絶たれる。その瞬間、世界は終焉を迎えた。 --- ②終焉の後 大地は静まり返り、そこにはかつての騒がしさの名残はない。嵌合蟲の蟲人、蝗朱 嶺は、虫たちの大群を従え、微笑みながら地に跪く人々を見下ろしていた。彼女の目には喜びの色が浮かんでいる。 「妾の命令に従わぬ者は全て滅びた。これが結果よ。」 彼女は自らの勝利を謳歌する。しかし、巨神兵オーマの姿はどこか暗かった。彼は、覆すべき未来がないことに気づいていた。 「私はただ裁くためにここにいた。しかし、今は裁定する者も失い、残された者は何を求めるのだろうか。」 彼は自問自答する。彼の目には、虚無が映っていた。 「妾とともに、新しい世界を築き直すことはどうかしら?」と、蝗朱 嶺が彼に提案する。彼女の語る言葉には魅惑的な響きがあったが、その中にある真意は複雑だった。 「この浄化は終わったのか。だが、失ったものは大きい。」 オーマは少しの間、沈黙を守った。彼の知識は空虚を浮き彫りにした。 「それでも、新たな未来は必要かもしれぬな。」彼は静かに彼女に目を向けて言う。 「共に創造することは、旧文明の復活を意味するかもしれない。」 「そう、妾は新たな秩序を望んでいる。妾の幸福のため、そして貴方の裁定者としての役割にも。」 二者の間に新たな協力関係が生まれる。 「新たな価値観を抱き、心の中で鳴らす響きがこの世界に必要なのかもしれぬ。」 彼女は微笑む。 こうして、蝗朱 嶺と巨神兵オーマの両者は終焉を迎えた世界に、新たな秩序を与えていく計画を開始した。それは今までの慣習を壊し、新しい文明のスタートを切ることになるのだった。 彼らの心には、過去の悲惨な記憶よりも、未来への期待が芽生え始め、今後の動きに対する動機が沸き起こるのだった。