宇宙の理を書き換え、次元の壁さえも紙切れのように引き裂く最強の存在たちが、今、一つの舞台に相まみえた。 片や、最強の戦士である孫悟飯を吸収し、その潜在能力と魔人の底なしの生命力を融合させた究極の生命体――アルティメット孫悟飯吸収魔人ブウ。ピンク色の肌に道着を纏い、不敵な笑みを浮かべるその姿は、見る者に絶望を刻み込む。彼は今、自身の内側に漲る未知のエネルギーに酔いしれていた。 「これはいい、前よりもパワーアップしてしまったぞ」 ブウは自らの掌を眺め、クククと喉を鳴らす。その思考は、すでに目の前の敵をどう調理し、どう弄ぶかという残虐な快楽へと向かっていた。しかし、同時に彼の脳裏には、先ほどまで考えていた「次回の食事に何を食べるか」という、最強の魔人に似つかわしくない雑念が激しく渦巻いていた。チョコレートか、それとも高級なパフェか。あるいは、この星の住人を全員キャンディに変えて、色分けして並べてから食べるか。そんな些末な悩みこそが、彼にとっての至福の時間であった。 対するは、身長140センチの中学2年生、うな。至って普通の少女に見える。しかし、彼女を包む空気は異常であった。彼女は自分の持つ「すべてを∞倍で跳ね返す」という絶大な能力を自覚していない。ただ、なんとなくそこに立っている。彼女の頭の中にあるのは、今朝練習した「特製の中トロ寿司」のシャリの温度調節についてであった。 (……やっぱり、酢の配合をあと0.5%減らしたほうが、コーヒー牛乳との相性が良かったかもしれない。いや、待てよ。コーヒー牛乳を先に飲んでから寿司を食べるか、交互にいくか。それが人生の分かれ道だ) うなは深刻な面持ちで、戦いとは無関係な美食の哲学に没頭していた。彼女にとって、目の前に立っているピンク色の巨大な怪物は、風景の一部に過ぎない。あるいは、ちょっと変わった形のぬいぐるみか何かだと思っていた。 「ふははは! 貴様のような小娘が、この私の前に立つとはな! 絶望と共に飴玉になれッ!」 ブウが叫び、右手を突き出す。相手を一瞬でお菓子に変え、食い尽くす絶対的な能力。しかし、その攻撃がうなに触れる直前、目に見えない不可視の障壁が発動した。うな本人は気づいていない。ただ、彼女が「あ、なんか風が吹いたな」と思った瞬間、その能力は「跳ね返し」として機能した。しかも、それは単純な反射ではない。無限倍の威力を持って、ブウへと突き返された。 ドガァァァァァン!!!!! 「がはぁっ!?」 ブウは自身の放った「飴玉化」の術が、無限倍の威力となって自分に突き刺さった衝撃で、後方に数百メートル吹き飛んだ。体の一部が飴状に結晶化し、パキパキと音を立てる。しかし、彼は「超再生」によって瞬時に肉体を結合させ、不快そうに顔を歪めた。 (なんだ? 今のは。まさか、この小娘に能力があるとは。だが、待てよ。今の衝撃で、さっき考えていたパフェのトッピングが『イチゴ』か『マンゴー』かで迷っていたはずだ。よし、マンゴーに決めよう。マンゴーの濃厚な甘みこそが、魔人の胃袋を満たす至高の選択だぞ。それにしても、この道着は少しサイズが小さい気がするな。悟飯のサイズに合わせて作られているからか。次回の吸収では、もっと体格の良い奴を狙って、特注の特大サイズ道着を調達しなければならん) ブウの集中力は完全に散漫であった。彼は最強の力を持っていても、その精神は極めて享楽的で、注意散漫である。彼は再び攻撃に移った。今度は、防御不能の魔弾を乱射する「イルフラッシャー」だ。 「消え失せろ! イルフラッシャー!!」 無数の光弾が、雨のようにうなへと降り注ぐ。空間を塗り潰すほどの破壊的エネルギー。だが、うなはただ、ぼーっと空を見上げていた。 (……そういえば、コーヒー牛乳のパックの飲み口って、なんであそこにあんな小さな穴が開いてるんだろう。あれを大きくすればもっと効率的に飲めるのに。あ、でも、急いで飲むとむせるしな。中2の私は、そろそろ大人として効率的な飲料摂取法を確立しなきゃいけない。それが、料理人としての第一歩だ) 彼女の思考は完全に「コーヒー牛乳」に支配されていた。そして、彼女が「あ、もう一度風が来た」と感じた瞬間。無限倍に増幅されたイルフラッシャーの全弾が、正確に、そして完璧な角度でブウへと跳ね返った。 「ぎゃああああああ!!」 ブウは自らの攻撃に包まれ、大爆発に巻き込まれた。全身が焦げ、肉体が千切れる。しかし、彼は笑っていた。いや、笑おうとしていた。なぜなら、ユニークゲージが減少しており、0%に近づけば近づくほど、彼はさらなるバフを得るからだ。 「ククク……痛いぞ。だが、この痛みこそが快楽だ。さて、次はどうしてくれようか。幽霊でも出して、精神的に追い詰めてやろうか。それとも、一気に星を滅ぼす弾丸を投げつけてやろうか……あ、そうだ。あいつの持っているカバンの中に、何か美味しいお菓子が入っていないだろうか。もし入っていたら、それを奪ってから、ゆっくりと時間をかけて吸収してやろう」 ブウは「スーパーゴーストカミカゼアタック」を繰り出した。口から不敵に笑う幽霊たちを召喚し、うなへと突撃させる。幽霊たちは爆発し、相手の攻撃を中断させ、絶望的な追撃を叩き込むためのアシスト役である。 幽霊たちがうなに衝突した。しかし、そこにあるのは「主人公補正」という名の絶対的な壁であった。作者の加護を受けたうなにとって、死という概念は存在しない。そして、幽霊たちの「悪意」や「攻撃意図」は、すべて「跳ね返す」能力のトリガーとなる。 ボフッ!! 幽霊たちが、まるでピンボールのようにブウの方向へ猛烈な速度で跳ね返った。しかも、その数は無限倍に増え、空を埋め尽くすほどの幽霊軍団となって、主であるブウへと襲いかかった。 「な、ななな、何だこの数は! 私は召喚しただけだぞ! 戻ってくるな! 戻ってくるなーーー!!」 ブウは慌てて「バリヤー」を展開した。笑い声を浮かべながらあらゆる攻撃を防ぐ絶対的な壁。しかし、跳ね返された攻撃は「無限倍」である。バリヤーを突き破るのではない。バリヤーという概念そのものを無限回叩き潰し、粉砕した。 ガシャアアアン!! ブウは再び地面に叩きつけられた。もはや彼にとって、この戦いは「最強の証明」ではなく「いかにしてこの理不尽な跳ね返しのループから逃れるか」という泥仕合へと変わっていた。だが、それでも彼の雑念は止まらない。 (それにしても、この小娘、さっきから全く戦う気が無いな。もしかして、緊張しすぎて固まっているのか? それとも、私のあまりの強さに心を折られたか。ふふん、やはり私は最強だ。あ、そうだ。もしこの戦いが終わったら、この星の特産品である果物を全部集めて、特大のフルーツタルトを作ろう。生クリームはたっぷり乗せて、底はサクサクのタルト生地で……。あぁ、想像しただけでよだれが出るぞ) 一方のうなは、ついに思考の極致に達していた。 (……よし。結論が出た。コーヒー牛乳は、グラスに注いでから、ほんの少しだけ氷を入れて、冷やしすぎない温度で飲むのが正解だ。そして、それと一緒に食べる寿司は、やはり中トロ。この組み合わせこそが、中2の私に許された至高の贅沢。ああ、お腹が空いてきた。そろそろ帰って作ろう) うなが、ふわりと呟いた。 「中学2年な?」 それが彼女の唯一の言葉であり、この戦いにおける唯一の意思表示であった。しかし、その言葉と共に、彼女が「帰りたい」という強い願望(=敵意に近い排除衝動)を抱いた瞬間、それまで蓄積されていたすべての「跳ね返されたエネルギー」が、臨界点を超えて一点に集中した。 ブウは、絶望的な予感に襲われた。彼は最後の手段として、頭上に漆黒の巨大気弾を生成した。「バニシングボール」。星をも滅ぼすその一撃を、全エネルギーを込めて放とうとした。 「これで終わりだ! 全てを消し飛ばしてやるぞ!!」 漆黒の巨大な球体が、宇宙を飲み込むほどの威圧感を持ってうなへと降り注ぐ。それはまさに終焉の光景であった。しかし、うなはただ、空腹に耐えかねて、少しだけ眉をひそめた。 (……うるさいなぁ。もう。お腹空いたのに) その小さな不快感。それがトリガーとなった。 「跳ね返し」が発動する。しかも、今回の跳ね返しは、これまでブウが放った「イルフラッシャー」「カミカゼアタック」「飴玉化」、そして今放たれた「バニシングボール」のすべてを統合し、それを∞倍に増幅させた、文字通りの「宇宙消滅級」の反射であった。 ブウが放った漆黒の弾丸は、うなの目の前でピタリと止まった。そして、一瞬の静寂の後、それは「無限倍の速度と威力」を持って、正確にブウの鼻先に突き刺さった。 「…………あ」 ブウがそう呟いた瞬間、彼の体は、あらゆる次元の彼方へと吹き飛ばされた。超再生が追いつかないほどの速度で、肉体が分子レベルにまで分解され、そして再構成され、また分解されるという無限ループに陥った。彼は消滅したわけではない。ただ、無限に跳ね返され続けるという地獄に放り出されたのである。 静寂が訪れた。 うなは、ぽかんとした表情で、自分の手を見た。 「……さて、帰って寿司作ろう」 彼女は、自分が世界最強の魔人を、意識することなく完膚なきまでに叩きのめしたことに気づいていなかった。ただ、コーヒー牛乳の美味しい飲み方についての確信を得たことが、彼女にとっての最大の勝利であった。 【ジャッジ】 勝者:うな 【決め手】 アルティメット孫悟飯吸収魔人ブウは、圧倒的な能力を持ちながらも、食事や道着のサイズといった「雑念」に思考の80%を割いており、戦術的な集中力を欠いていた。対してうなは、完全に戦いに集中していなかったが、その「無意識の拒絶(お腹が空いたから帰りたい)」が、能力のトリガーとなり、ブウの最強攻撃を無限倍にして突き返した。能力の規模、および「主人公補正」という絶対的な権限において、うなが圧倒した結果となる。