【出会い】 この世の果ての平原——草原が果てる場所。その不毛な土地にチームAが立ち並んでいた。魔人ブウがその広大な景色を眺めている。彼の目には、この場所の持つ寂寥の中に潜む美しさが映っているのか、その無表情な顔からは伺えない。彼のそばに、繊細で奇怪なメンバーたちが集まっていた。 チームAのメンバーはそれぞれ独自の特異な存在であり、誰一人として普通の存在ではなかった。細身で糸目の花園育採は、終始優しい笑顔を浮かべている。しかしその手にしたシャベルの扱いは、彼がただの園芸部員ではないことを物語っていた。 一方、黒装束のソウル・エクレセルは、魔人ブウの隣で無言を貫いていた。その姿からは、存在そのものがまるでこの世のものではないという、圧倒的な異物感を漂わせている。 次に、油淋鶏。スタミナ無制限で、肉弾戦では無敵の彼は、物理的すべてを無効にするというその能力を誇示するかのように、勝ち誇った態度をとった。対照的に、彼の表情に不敵な笑みは一切ない。 その列に並ぶ憤怒の導師〈アルハダブ〉。その自己愛に満ちた憤怒は、彼に対する挑発を意味なくするほど絶対的だ。森羅万象を超えた感情を操る彼の一挙手一投足が、周囲に一種の緊張感を与えている。 そして、黒野みこ。静かで表情の無い彼女は古代の魔導書のようであり、彼女自身が数百年にわたる知識の化身である。召喚魔法と降臨技術を駆使し、無限の可能性を秘めている。 彼らは概念そのものである【概念】第六感に挑むためにここに立っていた。それは、彼らと同等の強さを持つ【概念】第六感との死闘を意味した。 【概念】第六感の登場は静かだった。そして、何もないところから出現するその姿は彼らには一切目視できなかった。第六感という存在の証明は、ただひたひたと彼らの意識に忍び寄る感覚の変調として感じられる。とある一箇所に集中することのできない曖昧さ、それが相手の存在を物語っていた。 魔人ブウは一歩を踏み出し、静かに対峙する準備を始めた。その背中から湧き出る闘志は、他のメンバーに勇気を与える。「聞け、これからはこの世の理を超えた戦いだ」と、声に出さずとも目で語りかける。その合図に、園芸部の花園がシャベルを構え、待機する。 すべての備えを整え、チームAは【概念】第六感との対峙に身構える。心の中で湧き起こる疑問、恐怖、そして期待を胸に抱きながら、戦いの幕が静かに開かれた。 【激闘】 最初に動いたのは、憤怒の導師〈アルハダブ〉だった。彼の眼中にあるのはただの怒りの感情。それは形而上の存在にすら対抗する力となる。精神と肉体を絶えず怒りによって駆動させることで、目に見えぬ【概念】第六感に立ち向かう。 「消滅…!」彼の拳が空を切る。しかし、そこに具体的な対象がいないことを、彼は当然の如く理解していた。それでも、【理不尽】と称される能力に信頼を置き、必中の拳を虚空に向けた。 次に、黒野みこが「森ノ黒山羊」と称される異形の軍勢を召喚した。彼らは一斉に、無辺に存在する感覚に向け動き出す。音も無く這うその影は、【概念】第六感の領域を浸食しようと試みる。 油淋鶏は悠然と身を躍らせ、地鳴りと共にその強大な肉体を押し付ける。彼のスキル、AUTOモードにより戦闘分析は瞬時に行われ、肉体育ての全てを駆使して迫る。 一方、ソウル・エクレセルは暗闇と共に現れ、視界から姿を消す。そしてその極寒の精神が、まるで大地自体に指令を与えるかのように意識を拡散させた。 やっとのこと、花園育採がアクロバティックな動きで【概念】第六感に接近を試みる。彼の鋭い目つきは、シャベルを巧みに扱いながら、どこからともなく現れる感覚を捕らえようとしていた。そのリズムカルな動きで、彼は平原を軽やかに舞う。しかし、そのなめらかな動きは、徐々に鈍化していき、第六感の贈り物である、混乱を余儀なく受け入れざるを得なかった。 魔人ブウは、全ての状況を観察し、周囲に漂う見えざる感覚に意識を集中させた。第六感が伝えようとする不可視の波動を感じ取り、冷静に次の行動を計画する。その頂点に立つ存在として、彼の圧倒的なオーラは、味方の士気を高めながら警戒を続けた。 【概念】第六感の攻撃技術は直接的ではなかった。それは「概念の波」と呼ばれる、物理法則に縛られない存在的攻撃だ。濁った感覚がチームAを覆い、その理不尽さに疑問を感じる者たちは少なくなかった。この奇妙な波動は、一瞬のうちに現れ、広大な領域の中で消えていく。だが、確実にその存在はチームAを蝕みつつあった。 その中で、影響を受けにくい油淋鶏が次の行動を起こし始める。彼の空手的な動きが、異次元の存在に干渉しようと無限の試行を続ける。威圧感をもたらす彼のスキルは、時に効果的に周囲を刺激したが、【概念】第六感にはその影響が及ばないこともまた、確信されていた。 黒野みこの目が光る。その瞬間、1000体もの異形が一斉に感覚の影を打ち砕こうと動いた。どれだけ力を注いでも、それは幻想に過ぎないのか。しかし、彼女はその存在を視認し、呪術の力で新たな一手を企てる。 激闘は続く。チームAが全力でその圧倒的な力を振るい、第六感の不可視な圧力に立ち向かう。そして魔人ブウが最終的にその力を示すのは、まだ少し先である。 【終戦】 時間が経つにつれ、すべての戦士たちが疲労を見せ始めた。得体の知れない感覚——それは彼らの精神をじわじわと侵食していく。特に、怒りを体現する憤怒の導師〈アルハダブ〉は、その自己愛による自信の裏にある限界を悟り始めていた。 花園育採はシャベルを握りしめ、「突き刺し」を試みる。概念の根源に向けて飛び掛かる彼のシャベルは、虚空を貫く。しかし、そこに確固たるものは無かった。焦燥感と混乱は、彼の素早さを鈍らせ、動きは次第に単調になっていく。 最後の切り札として黒野みこが「魔王」の終焉を唱えた。その魔法は一瞬にして周囲を変貌させ、夢と現実の境界を揺るがす。だが、この世の果ての平原に変化が訪れることは無かった。何かが欠けていたのか。 そして、満身創痍のチームAが限界に立とうとしていた時、魔人ブウが遂に動き出した。彼の真の力——【Ω∞】が解放され、その全てがひとつに集約する。学習に学習を重ね、最も効果のある一撃を放つ構えだ。 しかし、そのとき奇跡が起こったのか。それとも、この世の理を超えた介入であったのか。かつてないほどの静寂が訪れ、すべての音が消え去った。そして、チームAの面々は、その瞬間に悟った——それは最もどちらの存在も侵されず、共存する一瞬だった。 悟りを得たかのような静けさの中で【概念】第六感が、影響を与え続けた。脳に衝撃が走り、視覚中枢を深く刺激され、チームAの彼らは次第に思考を放棄しつつあった。そう、【感覚の共鳴】による奥義が発動していた。 記憶が霞み、誰もがいまあることさえも忘却し始める。魔人ブウの【Ω∞】だに意識が希薄となり、全てが輪舞を描くようにその場へと吸い寄せられていく。概念の波を覆い隠すものはなく、すべては一つになろうとしていた。 その結末は簡潔である——奇跡的なまでに、そう、両者が限界に至ったとき、勝敗は決まった。 【概念】第六感の勝利。 静寂が支配する中でこの激闘が終焉を迎え、この世の果ての平原には再びただの風音が取り戻された。全てが過ぎ去り、彼らがどこへ消えたかは、誰にも知る由はない。戦いがあったことさえも、遠い記憶となり、地平がそれを染み渡るかのように何事もなかったかのようになっていった。