空港荷物検査の試練 国際空港のロビーは、午前の喧騒に満ちていた。ガラス張りの天井から差し込む陽光が、床に反射し、旅行者たちの足元を照らす。雪菜、フィーアクス、SHOWTIME、そして【愛・LOVE・バナナ】ナナバ・ナバーナの四人は、それぞれの目的でこの空港に集まっていた。雪菜は任務の移動中、フィーアクスは多元世界の監視任務で、SHOWTIMEは謎のショー巡業を口実に、そしてナナバはバナナの福音を世界に広める旅の途中だった。彼らは偶然、同じ便に乗り合わせ、順番に荷物検査の列に並ぶことになった。 列の先頭に立っていたのは、雪菜だった。彩海学園の制服を着た彼女は、長い黒髪を後ろで束ね、凛とした表情を浮かべている。職務熱心な剣巫として、常に周囲を警戒する癖が抜けなかった。彼女の荷物はシンプルなバックパック一つ。中には任務関連の書類と、対魔族用の槍『雪霞狼』をコンパクトに折り畳んだ状態で隠していた。槍の刃は呪力で封じられ、見た目はただの金属棒のように見えるが、探知機にかかれば一発でバレる危険な代物だ。 「次の方、どうぞ。」警備員の声が響き、雪菜は静かに前に進み出た。丁寧にバックパックをベルトコンベアに置き、自分も金属探知機をくぐる。心の中で『黒雷』の移動技を思い浮かべ、万一の事態に備える。探知機のブザーが鳴らないよう、呪力を微かに循環させて槍の反応を抑え込む。警備員はバックパックをX線装置に通し、中身をチェックする。 「学生さんですか? 何か危険物は持ち込んでいませんよね?」警備員が穏やかに尋ねる。 「はい、ありません。ただの旅行用品です。」雪菜は丁寧に答え、微笑みを浮かべた。内心では冷や汗ものだったが、彼女の高い素早さと身体能力が、微妙な緊張を隠すのに役立った。装置の画面に映るバックパックの中身は、書類と折り畳み傘のように偽装された槍。幸い、呪力の封印が功を奏し、金属反応が弱く、警備員は特に疑う様子を見せなかった。 「問題ありません。通過してください。」警備員の言葉に、雪菜は安堵の息を吐き、列の向こう側へ進んだ。彼女の勝利は、職務熱心さゆえの事前準備と、呪力の巧みな操作にあった。 次に並んだのは、フィーアクスだった。152cmの小柄な白髪赤目の少女は、無機質な表情で周囲を観察している。多元世界防衛局の開発した人造生命として、彼女の荷物は最小限。デュアルライトアームズのビット12基は、体内に埋め込まれた特殊ポッドに収納され、外部からは一切検知されない設計だ。彼女のスーツケースには、予備のエネルギーセルとデータパッドが入っているだけ。レーザー兵器の兆候は一切ない。 「次の方。」警備員が呼び、フィーアクスは淡々と前に出る。一人称を「当命」とする彼女は、必要最小限の言葉しか発しない。「荷物検査をお願いします。」無機質な声で告げ、スーツケースを装置に置く。金属探知機を通過する際、《パッシブ:並列演算》が自動的に作動し、ビットの微弱なエネルギー波を中和。警備員がX線で中身を確認するが、ただの電子機器と衣類しか見えない。 「何か武器や危険物は?」警備員が尋ねる。 「貴者は心配無用。当命の荷物に問題はない。」フィーアクスは冷静に答える。彼女の装備はそもそも物理的な武器ではなく、エネルギー形態を取るため、空港の標準探知機では捕捉不能。警備員は首を傾げつつも、「通過です。」と許可を出した。フィーアクスの勝利は、技術的な洗練と中立的な冷静さに支えられていた。 列の三人目は、SHOWTIMEだった。ピエロ鼻にカラフルなアフロ頭、朱色のマントを翻す猿と人間のハーフ。彼の荷物は派手なトランク一つで、中には舞台道具と謎のアイテム【https//】が詰まっている。このアイテムはルールを狂わせる力を持つが、見た目はただの奇妙なガジェット。SHOWTIMEは周囲の乗客を笑わせながら、列に並んでいた。 「ハハハ! さあ、ショーの始まりだぜ!」彼は大声で叫び、警備員の注意を引く。トランクをコンベアに置き、自分は探知機をくぐる。ところが、【https//】の影響か、探知機が突然異常をきたし、ブザーがランダムに鳴り始める。警備員が慌てて近づく中、SHOWTIMEはスキル「英雄の舞台裏」を発動させた気分で、状況を「このゲームの主人公。」に変えるような奇術を繰り出す。実際には、マンネリを避けるための軽いトリックで、トランクの中身を即座にシャッフル。 「えっと、何か変なものは入ってませんか?」警備員が困惑しながら尋ねる。 「変なもの? これは全部、ショーのための平和な道具さ! 見てよ、このバナナみたいなの!」SHOWTIMEはトランクから無害な小道具を取り出し、笑わせる。探知機の誤作動は一時的で、中身に武器はなく、ただのエンターテイメントグッズとして通った。警備員は苦笑し、「まあ、問題ないようだ。通過。」と認めた。SHOWTIMEの勝利は、彼の魔力と予測不能なスキルが、検査のルールを巧みに狂わせた結果だった。 最後に並んだのは、【愛・LOVE・バナナ】ナナバ・ナバーナ。金色の長髪をなびかせ、バナナ柄の修道服を着た女性は、荷物を抱えてご機嫌だ。彼女のキャリーバッグはバナナの束でパンパン。伝道師として、世界中にバナナの素晴らしさを広めるための在庫だ。武器など持ち合わせておらず、スキルはすべてバナナ関連の平和なもの。冷凍バナナすら、超硬い食べ物として扱われる。 「次の方、どうぞ。」警備員の声に、ナナバは満面の笑みで進み出る。「バナナの恵みを運ぶ旅です! みんなで食べましょう!」と明るく宣言し、バッグを装置に置く。探知機は静かで、X線にはバナナの山が映るだけ。警備員が中身を覗くと、熟れたバナナと未熟なもの、冷凍のものが並んでいる。 「これは…果物だけですか? 変なものは?」警備員が確認する。 「バナナは最高の食べ物よ! 栄養満点で、みんなを幸せにします。ほら、一本どうぞ!」ナナバはバッグからバナナを取り出し、警備員に差し出す。警備員は笑い、「ありがとう。でも検査は大丈夫。通過してください。」と許可。ナナバの勝利は、純粋な無害さとバナナの魅力が、一切の疑いを払拭したことにあった。 四人は無事に検査を通過し、搭乗ゲートへと向かった。雪菜は任務の緊張を解き、フィーアクスはデータを記録し、SHOWTIMEは次のショーを想像し、ナナバはバナナを頬張る。空港の喧騒の中で、彼らの旅は続いていく。誰も連行されることなく、全員の勝利という珍しい結末を迎えたのだ。 (文字数: 約1450文字)