第一章:不釣り合いな潜入組 深夜、月明かりさえも拒絶するように黒い雲に覆われた森の奥。そこに、不気味な静寂を纏った巨大な洋館が鎮座していた。重厚な石造りの壁と、至る所でひび割れた窓ガラス。そこは、価値あるお宝が眠ると噂されると同時に、足を踏み入れた者が二度と戻らないという呪われた屋敷である。 屋敷の正門前には、およそチームワークという言葉からは程遠い四人の男女(?)が集まっていた。 「……排除します」 冷徹な声で呟いたのは、白い日本軍服に身を包んだ美女、ティノである。彼女は超高性能狙撃銃『WIS-00』を肩に担ぎ、感情の消えた蒼い瞳で屋敷を凝視していた。彼女にとってこの作戦は「任務」であり、お宝などどうでもいい。ただ、命令されたからここに来ただけだ。 「いやあ、ボクは女の子が大好きだからね! この屋敷に可愛い女の子の幽霊でもいたらいいなぁ」 対照的に、軽薄な声を上げたのは青髪オカッパのジジである。白い服に身を包み、可憐な少女を装っているが、その本性は底知れない。彼は隣に立つティノをねっとりとした視線で眺めていた。 「……ふぅ。あー、もう帰りたい。こんな埃っぽい場所、事故として処理していいかな」 不満げにため息をついたのは、茶色のコートと帽子を被ったアンドロイド、トクヤである。彼は自慢の安楽椅子に深く腰掛け、杖を弄んでいた。足腰が弱いため、移動はほぼ椅子任せである。彼にとってこの潜入は、人生(稼働期間)最大の苦行であった。 そして最後の一人。ステゴサウルス。彼は言葉を発しない。しかし、その装備は完璧だった。懐中電灯付きのヘルメットに万能ゴーグル、そしてあらゆる道具が詰まった探検チョッキ。彼は静かに頷き、チームのリーダーであることを示すように、屋敷の扉へと歩き出した。 「さて、ルールは簡単だ。最低15,000ゴールド分のお宝を集めて脱出すること。ただし、得体の知れない『何か』にやられたら即終了。いいかい、みんな? 欲を出しすぎて死ぬなよ」 トクヤが面倒そうに言い切った瞬間、重い扉がギィィ……と音を立てて開いた。闇が彼らを飲み込んでいく。 第二章:静寂と狂気の回廊 屋敷の中は、外以上に不気味だった。高い天井からは埃っぽいシャンデリアが吊るされ、壁には不気味に笑う肖像画が並んでいる。 ステゴサウルスは即座に【万能ゴーグル】を起動し、その視覚情報をチームに共有した。視界が青白く染まり、暗闇の中にある「違和感」が強調される。彼は【熟達の探検家】としての直感で、廊下のあちこちに潜む罠を察知していた。 「(右、踏むな)」 ステゴサウルスが身振り手振りで指示を出す。そこには、床の色に完璧に擬態した『セヴ』が口を開けて待っていた。もしトクヤがそのまま突き進んでいれば、椅子ごと床に飲み込まれ、一撃で気絶していただろう。 「おっと、危ないねぇ。さすがステゴさん、頼りになるなあ」 ジジがヘラヘラと笑いながら、壁に飾られた金色の燭台を手に取った。鑑定すると、それは約2,000ゴールドの価値がある代物だった。 「……目標確認。美術品、回収します」 ティノは機械的な動作で、廊下の隅にあった豪華な花瓶(5,000ゴールド相当)を回収する。彼女の動きに迷いはない。しかし、彼女が花瓶を手に取った瞬間、背後の闇から「……クク……」という、人間とは思えない不気味な唸り声が聞こえた。 ルナだ。ナイフを持った人形少女が、音もなく現れた。 ルナの視線は、明確に一人に固定されていた。ターゲットは――ティノである。ルナは感情のない顔でナイフを構え、猛烈な速度でティノへと飛びかかった。 「……排除」 ティノは反射的に『WIS-00』を向けたが、ルナの速度は常軌を逸していた。弾丸が空を切る。ルナは壁を蹴り、天井を走り、執拗にティノを追い詰め始める。 「ひゃはは! 追いかけっこだねぇ!」 ジジが面白そうに眺めているが、ステゴサウルスは焦った。彼は【秘密道具】を使い、チョッキから「超強力粘着剤」を取り出し、ルナの足元に投げつけた。ルナの脚が床に張り付き、一瞬だけ動きが止まる。 「今です!」 トクヤが叫ぶ。もっとも、彼は椅子から一歩も動いていなかったが。 第三章:化かし合いのダイニングホール 一行は、さらに奥にある広大なダイニングホールへと辿り着いた。そこには豪華な食卓が並び、中心には目を引く大きな宝石箱が置かれていた。推定価値は10,000ゴールド。これを手に入れれば、目標額に到達する。 しかし、そこには奇妙な機械が置かれていた。楽しげな装飾が施された、スロットマシンのような機械――『チャンプ』である。 「あ、当たりが出ればお宝だって。やってみようよ」 ジジが興味津々にレバーに手をかけた。ステゴサウルスが制止しようとしたが、遅かった。ガチャン! と音が鳴り、出たのは「×」のマーク。ハズレだ。 「あ、」 ジジが声を出す暇もなかった。チャンプから飛び出した巨大なハンマーが、ジジの頭を真正面から強打した。ドガァァァン! という豪快な音と共に、ジジは白目を剥いてその場に崩れ落ちた。一撃で気絶である。 「あーあ。一人減っちゃった。まあ、賑やかだったからいいか」 トクヤが新聞を読みながら淡々と言った。ジジが持っていた2,000ゴールドの燭台が床に転がった。 その時、後ろからティノに声をかけた者がいた。 「ティノさん、こっちに何かありそうだよ」 振り返ると、そこには気絶しているはずのジジが立っていた。いや、見た目は完全にジジだった。しかし、その声はどこか不自然に高い。 「……ジジ? 復活したのか」 ティノがわずかに眉をひそめた瞬間、その「ジジ」の口が耳まで裂け、鋭い爪がティノの肩を貫こうとした。ブロクによる擬態だった。 だが、ティノの【白秩論戦術】がそれを上回る。彼女はコンマ数秒の判断で、自らの体を後方へ跳躍させた。O.P.-001Rush-Headの強力なバネが彼女を後方へ弾き飛ばす。 「……偽物。排除します」 ティノが至近距離から白閃光手榴弾を投下した。凄まじい閃光がホールを包み込み、ブロクは一時的に視界を奪われ、混乱して後退していった。 第四章:絶望の脱出劇 「もういい、十分集めた! 帰るぞ!」 トクヤが叫んだ。現在、彼らが集めたお宝は、花瓶(5,000)+燭台(2,000)+宝石箱(10,000)=合計17,000ゴールド。目標の15,000を超えている。 しかし、出口への道は簡単ではなかった。ルナが再び現れ、ティノを猛烈な勢いで追撃している。さらに、通路の至る所で『セヴ』が扉や床に化け、彼らの道を塞いでいた。 「(ここだ!)」 ステゴサウルスが【秘密道具】から、光り輝く「青色の羽根」を取り出した。これは屋敷のどこかに隠されているはずの激レアアイテムだが、彼のチョッキは万能だった。 「これを使い、出口へ瞬間移動する!」 ステゴサウルスが羽根を高く掲げた瞬間、屋敷の至る所から唸り声が響いた。ルナ、ブロク、そして正体不明の怪異たちが、彼らを逃がすまいと一斉に襲いかかってくる。 「……遅い」 ティノが最後の一撃として、足元の床に白閃光手榴弾を叩きつけた。視界を奪われた敵たちがもつれ合う中、ステゴサウルスが羽根を起動させる。 眩い光が彼らを包み込んだ。 エピローグ:夜明けの静寂 気がつくと、彼らは屋敷の外、冷たい朝露に濡れた草の上に転がっていた。 「……ふぅ。ようやく終わった。あー、疲れた。誰か僕を家まで運んでくれ」 トクヤが安楽椅子の上で大の字になり、空を仰いでいる。 ティノは静かに銃を整備し、回収したお宝を点検した。彼女の表情は相変わらず無機質だが、その瞳にはわずかな安堵があるのかもしれない。 そしてステゴサウルスは、静かにヘルメットを脱ぎ、朝日に目を細めた。 一方、屋敷の中には、一人だけ取り残された者がいた。 「……痛いなぁ。あのおもちゃ、乱暴すぎない?」 頭に巨大なタンコブを作ったジジが、ぼーっと天井を見上げていた。彼はチャンプにやられて気絶し、そのまま回収されずに置き去りにされたのである。 後日、彼は救助隊によって発見され、泣きながら救出されたという。 * 【判定結果】 ■脱出成功者: ・ステゴサウルス ・安楽椅子探偵アンドロイド『🪑トクヤ』 ・ティノ ■脱出失敗者: ・ジジ(チャンプにより気絶し、取り残されたため) ■集めたお宝総額: 17,000ゴールド(目標達成)