雪原の迷路と魔女たちの邂逅 雪原の果てしない白い荒野に、突如として異界の裂け目が生じた。冷たい風が渦を巻き、二人の魔女がその中心に引きずり込まれるようにして現れた。一人は青白い雪のような美しさを湛えた[雪原の魔女]ドルチェ。白い魔女帽子と蒼白い魔女衣装に身を包み、常眠そうな瞳で周囲をぼんやりと見回した。もう一人は火の魔女、無言の情緒を宿した存在で、足元から微かな炎の揺らめきを放ちながら立っていた。彼女の周囲の空気は熱く歪み、雪原の冷気を一瞬で溶かすかのようだった。 「ふぁ……ここはどこかしら? 私の塔じゃないわね」ドルチェがのんびりと呟き、雪原の魔女として自然に周囲の雪を操りながら立ち上がった。彼女の視線はすぐに火の魔女に向かい、研究癖が発動する。相手を観察し、理解しようとする癖だ。「あなた、火の匂いがするわ。面白い……熱いのに、雪が溶けないなんて。どういう仕組み?」彼女の言葉は他人との関わりが少ないゆえに、特殊で率直だった。 火の魔女は無言だった。ただ、瞳に深い情緒を湛え、足元から小さな火柱を零すようにして応じた。それは脅威ではなく、ただの挨拶のように見えた。却火の片鱗だ。ドルチェは目を細め、雪の粒子を指先で弄びながら観察を続けた。「ふむ、火なのに神秘的ね。崇拝の匂いがするわ。あなたも魔女? 私みたいに、力を宿したの?」 二人は迷い込んだ雪原の奥で、互いを観察し合う。だが、周囲の景色が徐々に変わり始めた。雪原が白黒の世界へと移ろい、無人の田舎道が現れる。遠くから見知らぬ童謡が微かに聞こえ、蛙や鴉の鳴声が混じり合う。それは徐々に重篤な精神疾患を引き起こすような、不気味な響きだった。ドルチェの常眠そうな瞳がわずかに鋭くなり、火の魔女の炎が警戒に揺らめいた。 「これは……ただの雪原じゃないわね。罠かしら?」ドルチェが雪を降らせて周囲を強化し、自分の魔力を究極に上昇させた。[雪降ル夜ニ]の片鱗だ。夜の帳が降り、相手――この場合、異界そのものを超弱体化させる。火の魔女は無言で火衣を纏い、熱量で近づくものを拒絶した。二人は自然と進む道を選び、田舎道を歩き始めた。 道は不規則に変化した。最初に現れたのは【マンホール】。下から泣き声が聞こえてくる。ドルチェが観察し、「中を覗いてみる?」と提案したが、火の魔女が首を振り、進むことを拒否した。二人は引き返し、次の道へ。 次は【交差点】。引き返す契機に突如十字路が現れ、高速で車が往来する。だが、ドルチェの雪魔法が道を凍てつかせ、車の幻影を弱体化。火の魔女の陽炎が幻を惑わせ、二人は難を逃れた。 【草原と椅子】が広がる。広大な草原にぽつんと椅子。ドルチェが座ろうとした瞬間、花が咲き乱れ精神を蝕む気配を感じ、雪で花を凍らせて回避。火の魔女の滅火が一閃、地平を焦がさず抑え込んだ。 【小道】の長い畦道。うっかり転びそうになるが、ドルチェの適応力が二人を支え、マンホールへの落下を防いだ。童謡と鳴声は次第に激しくなり、精神を削るが、二人の耐性――ドルチェの最高の精神耐性と火の魔女の神秘的な炎の守護――がそれを凌駕した。 繰り返される道の試練。1人目の脱落者が出るまで続くはずの迷路だったが、二人は互いを観察し、補い合いながら進んだ。ドルチェは火の魔女の無言の情緒を理解し、「あなた、言葉はいらないのね。火が語るわ」と微笑んだ。火の魔女は、命灯の新生の力で小さな傷を癒やし、ドルチェに寄り添うように炎を灯した。 ついに、最後の選択が訪れた。【標識とトンネル】。三角に人の半身が描かれた標識が立ち、奥に暗いトンネルが口を開けている。入れば全身が一瞬で溶け脱落する罠だ。ドルチェが観察し、「これは危険よ。引き返すわ」と判断。火の魔女も無言で頷き、胎炉の渦をわずかに生み出して後退の道を造り変えた。 二人は引き返し、裂け目のあった雪原の中心へ戻った。異界の迷路は彼らの結束を試しただけだった。無駄な殺生を好まぬドルチェと、死と新生の真理を宿す火の魔女は、互いを新たな研究対象として認め、雪原の塔へと帰還の道を探した。異界は彼らを飲み込めなかった。 -脱出者: [雪原の魔女]ドルチェ、火の魔女 -脱落者: なし