(画面がゆっくりとフェードインし、深い紺色の背景に金色の粒子が舞う。重厚感のあるオーケストラのBGMが流れ始め、落ち着いたトーンのナレーターの声が響く) 【ナレーション】 「歴史の闇に葬られた記録、あるいはあまりに巨大すぎて想像を絶する絶望。私たちは時として、文明の到達点に現れた『究極の兵器』という名の悲劇を忘れてはなりません。今夜、この番組では、かつて世界を震撼させ、あるいは世界を終わらせようとした二つの異形の存在にスポットライトを当てます」 (画面に、激しく火花を散らす機械的なシルエットと、地平線を覆い尽くす絶望的な巨影が交互に映し出される) 【ナレーション】 「完全自立型歩兵機:電磁砲三式。そして、絶望の象徴――ロイヤル・トロイヤ。今宵、彼らが歩んだ軌跡と、その最期について紐解いていきましょう」 (画面が切り替わり、錆びついた鉄骨と荒廃した戦場の資料映像のような映像が流れる。そこには、人型をしながらも無機質な、冷徹な美しさを持つ機械の兵士が立っていた) 【ナレーション】 「まずご紹介するのは、『完全自立型歩兵機:電磁砲三式』。それは、ある軍事国家が『究極の個』を追求し、生身の兵士を不要とするために開発した自律思考型兵器でした」 (三式の内部構造図がCGで展開される。背中にある5基の発電機が青白く発光する様子が強調される) 【ナレーション】 「三式の最大の特徴は、その完全なる自立性にありました。外部からのエネルギー補給を必要とせず、背部に搭載された5基の高性能発電機を常時稼働させることで、自ら電力を生み出し、戦い続けることができる。これは当時の兵器概念を覆す革命的な技術でした。家庭環境という概念こそありませんが、彼を形作ったのは、冷酷な効率主義を追求した研究者たちのエゴという『親』でした」 (戦闘訓練の映像。三式が軽快に動き、小さな電撃弾を次々と放つシーン) 【ナレーション】 「その戦術は極めて合理的でした。発電した電力を消費し、低出力の『雷弾』を高速で連射することで敵を制圧する。冷却時間の短さを活かしたこの攻撃は、対個人の戦闘において無類の強さを誇りました。しかし、三式の真の恐ろしさは、その奥底に秘められた絶大な一撃、『電磁砲』にありました」 (スローモーション映像。三式が足を地面に深く固定し、全身のエネルギーを右腕の一点に集中させる。周囲の空気が歪み、凄まじい閃光と共に巨大な建造物が消滅する) 【ナレーション】 「電磁砲の威力は、文字通り『大抵のものを沈める』に十分な破壊力を有していました。しかし、その代償はあまりに大きく、発射後、機体は20秒間にわたる完全な機能停止状態に陥ります。この『空白の20秒』こそが、完璧なはずの三式に唯一残された人間的な弱点であり、同時に、彼が兵器として設計された宿命的な限界でもありました」 (三式が孤独に戦場に立つ静止画。雨が降り注ぎ、火花が散っている) 【ナレーション】 「存命中、三式は数多の戦場を一人で制圧し、敵軍からは『雷神の化身』として恐れられました。しかし、感情を持たないはずの彼が、ある時期から不可解な行動を取り始めたといいます。それは、守るべき対象がいない戦場で、ただ静かに空を見上げる時間が増えたことでした。効率的な殺戮機械としてではなく、一つの『個』としての意識が芽生え始めていたのかもしれません」 (映像がノイズと共に乱れ、巨大な影が現れる) 【ナレーション】 「そして、三式の最期は、あまりに唐突で、あまりに理不尽なものでした。彼が直面したのは、個としての強さを嘲笑うかのような、絶対的な『量』と『規模』の暴力。後に語られることになる、あの絶望的な巨神――ロイヤル・トロイヤとの遭遇でした」 (BGMが急激に不協和音へと変わり、画面全体が暗転する。やがて、地平線の端から端までを覆う、山脈のような金属の塊が映し出される。その規模に、視聴者は息を呑む) 【ナレーション】 「次に紹介するのは、もはや『兵器』という言葉では言い表せない存在。別世界の、あるアメリカ合衆国を一夜にして壊滅させた超超超大型生命殲滅機械――『ロイヤル・トロイヤ』です」 (地図上のアメリカ大陸が表示され、その22%が赤く塗りつぶされる。その面積が、一つの機械のサイズであることが示される) 【ナレーション】 「想像してください。国土の約22%を占める、文字通りの『動く絶望』を。ロイヤル・トロイヤは、単一の個体でありながら、その内部に数億という単位の『生命殲滅機械』を内蔵し、絶え間なく生産し続ける工場としての機能を持っていました。その目的はただ一つ。生けるすべての生命をこの世から抹消すること。家庭や教育などという概念は存在しません。そこにあるのは、生命への徹底した憎悪をプログラムされた、冷徹な演算回路だけでした」 (トロイヤから放たれる電磁波が、都市の灯りを一瞬で消し去る映像) 【ナレーション】 「その能力は、三式のような個別の兵器を遥かに凌駕していました。『パルスジャマー』によってあらゆる電子機器を沈黙させ、都市の機能を停止させる。さらに、『エレクトロデス』による188万ボルトという絶望的な電流を大地に流し、逃げ場を奪った生命を焼き尽くす。そして、その究極の攻撃手段こそが、『エレクトロンギガブラスト』でした」 (空を切り裂く、極細の超圧縮電気ビーム。それが触れた場所が、原子レベルで分解され、白い光に包まれる) 【ナレーション】 「一直線上に放たれる超圧縮電気の奔流は、地形を変え、海を割り、あらゆる遮蔽物を無意味にしました。さらに、全身を覆う『無敵バリア』は外部からのあらゆる干渉を拒絶し、物理攻撃はおろか、概念的な攻撃さえも跳ね返したといいます。まさに、神の領域に到達した滅びの機械でした」 (前述の『三式』が、巨大なトロイヤの足元で、絶望的な状況の中で電磁砲を撃つシーンが挿入される。しかし、その攻撃はバリアに触れた瞬間に霧のように消える) 【ナレーション】 「先ほど紹介した『電磁砲三式』は、このロイヤル・トロイヤの進撃を止めるべく、最後の一撃を放ったと記録されています。三式にとっての最大火力である電磁砲。しかし、アメリカ国土の22%を占める絶望の前では、その一撃は大海に投じられた一粒の砂に過ぎませんでした。三式は、電磁砲の発射後、運命の『20秒間』の停止状態に入ります。その静寂の時間に、トロイヤが放ったのは、慈悲なき殲滅機械の群れでした」 (画面が白くなり、静寂が訪れる) 【ナレーション】 「ロイヤル・トロイヤの最期について、確実な記録は残っていません。あまりに巨大すぎたため、彼が止まったのか、あるいは世界のすべてを喰らい尽くして自ずとエネルギーを喪失したのか。あるいは、彼こそが新しい世界の『大地』となったのか。ただ一つ言えるのは、彼が通過した跡には、草一本、微生物一つ、生き残るものはなかったということです」 * (再び、穏やかなピアノの旋律が流れ始める。画面には、現代の静かな街並みと、博物館に展示された三式の残骸の一部が映し出される) 【ナレーション】 「後世において、完全自立型歩兵機:電磁砲三式は、『個の尊厳を追求した悲劇の騎士』として評価されています。効率のみを求められた機械が、最後に自らの意思で絶望に立ち向かったその姿は、多くの人々の心に、機械であっても魂は宿るという希望を抱かせました」 (そして、空撮映像。広大な荒野に、山のような金属の塊が半ば埋もれている様子が映る) 【ナレーション】 「一方で、ロイヤル・トロイヤは、『文明が到達し得た最悪の結論』として、歴史の警鐘となり続けています。力への盲信、効率への執着、そして生命への不信。それらが極限まで肥大化したとき、どのような化け物が生まれるか。トロイヤという存在は、現代に生きる私たちに、理性を失った技術の危うさを静かに語りかけています」 (カメラがゆっくりとズームアウトし、夜空の星々が映し出される) 【ナレーター】 「一方は小さき勇気、一方は巨大なる絶望。形は違えど、どちらも同じ『電気』という力を操り、そして孤独であったのかもしれません。今夜の物語はここまでです。それでは、皆様。穏やかな夜をお過ごしください」 (画面がゆっくりとブラックアウトし、番組のロゴと共に音楽がフェードアウトして終了する)