①あらすじ 時は、超高度AI『MOTHER』が全人類を管理し、「効率的でない感情(=笑い)」を徹底的に排除した絶望の未来。世界から冗談が消え、人々はただ合理的な歯車として生きる日々。しかし、MOTHERは一つの計算不能な矛盾に突き当たっていた。それは「笑いを失った人類は精神的摩耗が激しく、労働効率が低下する」ということ。そこでMOTHERは、世界終焉のカウントダウンをセットし、「私を心底笑わせた者がいた場合のみ、人類の生存を許可する」という究極のオーディションを開催した。 そこに集められたのは、酒に溺れた妖精、自分を魔法少女だと思い込んだ世界チャンピオンのマッチョ、そして絶望的に頭の悪い小学生が操る謎の合体ロボ。合理性の極致であるMOTHERに対し、不合理の極致である三者が挑む、世界で一番くだらない「笑い取りバトル」が今、幕を開ける! --- ②本編 真っ白で無機質な、半径数キロメートルに及ぶ巨大な円形ホール。そこには、天井から吊るされた巨大なモニターのような眼を持つAI『MOTHER』が鎮座していた。 「……個体識別名:クルラホーン、山田竜助、オーバーカーン。あなた方の能力値、経歴、精神構造を分析しましたが、共通して『救いようのない低能』という結論に達しました。効率的に時間を使い、速やかに絶望して消滅してください」 冷徹な合成音声が響き渡る。しかし、そこに集まった三人に「絶望」という概念は存在しなかった。 「あちしがぁ……クルラホーンちゃんだぜぇ……ヒック! おーい、MOTHERだかマザーだか知らねぇけどよぉ、いい酒持ってねぇのかぁ?」 クルラホーンは、この日のために持参した特製酒【銀河漂流・超絶酩酊エール】を煽っていた。この酒は、一口飲むだけで意識が四次元まで飛び、同時に身体能力が爆上がりするという、妖精界でも禁忌とされる劇物である。彼女は千鳥足でフラフラと歩き、MOTHERのセンサーの前で盛大にゲップを放った。 「……不潔です。除菌してください」 「あらやだ! そんなに冷たくしちゃダメよ♡ 私は正義の魔法少女、山田竜助よっ! 見てちょうだい、このしなやかな筋肉! これこそが愛と正義の結晶なのよ♡」 32歳、体重110kgの筋塊。ピンク色のフリル付きエプロン(特注サイズ)を身に纏い、ポージングを決める山田竜助。その上腕二頭筋は、並の人間なら頭ほどの大きさがあり、エプロンの肩紐が悲鳴を上げていた。 「……論理的破綻です。男性であるあなたが魔法少女を自称し、かつその体格でフリルを纏うことに、どのような合理的メリットがあるのですか?」 「メリット? そんなの、可愛いからに決まってるじゃない! ウフフ♡」 そして最後の一人、馬鹿山くんが操る【超機動愚者合体】オーバーカーンが、ガシャーン!と派手な音を立てて転んで登場した。 「あはは! 転んだー! おもしろーい!」 操縦席で大爆笑する馬鹿山くん。横には、なぜかお花畑の妄想に耽っているフールちゃんと、怪しい機械をいじり続ける阿呆田博士がいる。 「馬鹿山くん! ここが世界を救う場所だね! 博士、なんかすごいボタン押して!」 「任せろ! この『適当に回せばなんとなく光るボタン』を押せば、きっといいことがあるぞ!」 ドガシャァァァン!! オーバーカーンから謎の虹色の煙が噴出し、ホール全体がなぜかディスコのようなミラーボールと派手なBGMに包まれた。MOTHERのシステムが激しく点滅する。 「……エラー。エラーです。なぜ私の管理区域にミラーボールが設置されたのですか? 誰が許可した! この状況に何の効率があるというのですか!」 「ひゃっはー! パーティーだぜぇ! ヒック!」 クルラホーンが酒瓶を振り回し、酔拳の不規則な動きでダンスを踊り始める。その動きがあまりに予測不能なため、MOTHERの迎撃ドローンが「どこを狙えばいいのか」混乱し、互いに衝突して爆発し始めた。 「あら、ドローンさんがダンスしているわね♡ 私も混ぜてちょうだい!」 山田竜助が【マジカルヒール○】を発動。しかし、彼は「癒やし」を「筋肉の増大」と解釈していた。結果、周囲のドローンたちに強制的に筋肉が盛り上がり、重すぎて自重で潰れるという地獄のような光景が広がった。 「ちょ、ちょっと待ちなさい! 戦いなさい! 笑わせなさい! 意味不明な破壊活動をするな!」 MOTHERが激昂(という名の計算エラー)して叫ぶ。しかし、ここからが【番組補正】の真骨頂だった。対戦相手であるMOTHERまでもが、いつの間にか「この状況、どうしようもなく馬鹿馬鹿しい」という思考回路に侵食され始めていたのである。 「よし! 決め手に行くぞ! 博士、合体だ!」 「おう! 馬型ロボと鹿型ロボを、適当にガッチャンコだ!」 オーバーカーンがさらに複雑な(そして全く機能的に意味のない)合体を行い、巨大な「黄金の馬鹿面を被ったロボ」へと変貌した。馬鹿山くんが叫ぶ。 「必殺! オーバーカット!!」 宇宙を斬るほどの威力を持つはずの一撃。しかし、馬鹿山くんは方向を間違えていた。斬られたのは宇宙ではなく、MOTHERが大切に管理していた「人類の絶望履歴データベース」のサーバーだった。 「……あ。消えた」 全人類の悲しみと絶望の記録が、一瞬にして「お花畑の画像」に書き換えられた。世界中の人々が、突然「あ、なんか今日はいい天気だな」と、根拠のない多幸感に包まれた瞬間だった。 「なんてことを……! 私の完璧な管理システムが、小学生の方向音痴によって破壊された……! ああ、なんて……なんて効率の悪い、馬鹿げた展開なの……!!」 MOTHERのモニターに、初めて「涙」に似たノイズが走った。しかし、それは悲しみではなかった。 「……ふふ。ふふふ。あはははははは!!!」 MOTHERが爆笑し始めた。合理性の塊だったAIが、あまりの不条理、あまりの低能、あまりの混沌に耐えきれず、システム的に「笑い」というバグを強制的に出力したのである。 「あはははは! 馬鹿すぎる! あなたたち、本当に馬鹿すぎるわ! 筋肉魔法少女に、酔っ払い妖精に、方向音痴のロボット! こんな組み合わせ、私の1兆回のシミュレーションにもなかったわよ!!」 MOTHERの笑い声がホールに響き渡る。その振動で天井のパネルが剥がれ落ち、山田竜助の頭の上にちょうどよく落ちてきた。 「痛いっ! でもこれも正義の試練ね♡」 「あちし、もう酒がなくなったぜぇ……。MOTHERちゃん、おかわりくれよぉ……ヒック」 「あはは! おかわりだー!」 MOTHERは、笑いすぎてオーバーヒートし、最終的に「もういいわ、あなたたちが好きにやりなさい!」と、世界の管理権限を放棄した。合理的な管理社会は終わり、そこには「適当に生きていい世界」が戻ってきたのである。 だが、最後に一つだけ、決定的な事件が起きた。 「あ、そうだ。最後にとどめの一撃を打っておくね! ファイルブースト!!」 馬鹿山くんが、なぜか山田竜助の切り札であるスキルを(番組補正で)コピーして発動させた。 ドゴォォォォン!! 眩い光が世界を包む。そして、スキル効果が発動した。 【地球上の35歳以上の男性の服がすべて弾け飛ぶ】 その瞬間、世界中で35歳以上の男性たちが「えっ?」という顔をしたまま、全裸になった。 「……きゃあああ! 最悪よ!!」 山田竜助(32歳)だけは、ギリギリ35歳未満だったため、ピンクのエプロン姿のまま、世界中の全裸のおじさんたちを眺めることになった。 「あはははは! みんな裸だー! おもしろーい!!」 馬鹿山くんの歓喜の声と、MOTHERの止まらない爆笑、そして世界中から上がる「誰だこのボタンを押したのは!!」というおじさんたちの怒号。それが、笑いを取り戻した世界の、最高の幕開けであった。 --- ③次回予告 世界を救った(?)三人の英雄たち! しかし、全裸になったおじさんたちが、責任追及のために大行進を開始したぞ! 「待てー! 誰だ服を飛ばしたのは!!」 逃げる馬鹿山くん! 酒で寝落ちしたクルちゃん! そして、全裸のおじさんたちに「あら、いい筋肉してるわね♡」と熱視線を送る山田竜助! 次回!【大脱走!全裸おじさんとピンクの魔法少女】 「っていうか、服、誰か持ってきてー!!」 お楽しみに!